私たちはいつも優先順位を誤っているのかもしれない
明日は会議があるのだが、若い同僚が出張の交通費のことで右往左往していた。それはどうしても今やらなければいけないことではないはずだけど、明日の会議に来る人の交通費だから今のうちに疑問を解消したいのかな、それにしても明日に向けての事前確認はいつやるのだろう。そう思っていたら、結局その交通費は支出不要ということがわかった。あぁ、ならば交通費のことは後回しにして明日の準備をしてもよかったのに。
そういうことを、ひとはしばしばやってしまう。
テスト前に部屋の整理をしたくなる。
出勤前の化粧のときに、なぜか眉毛が気になって整え始めてしまい、いつもの電車に乗り遅れる。
テスト前の掃除は現実逃避だ。出勤前の眉カットなど、時間がないときや切羽詰まったときほど、どうしていいのかわからなくなって、とりあえず目についた些末なことをやってしまい後悔する。どうもその癖が治らない。
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それは、オットの病状が悪いという、人生の一大事を前にしても変わらず。
noteが楽しい。(私は「冴子」のほかのアカウントと合わせると、ほぼ毎日投稿している。)
いろいろ勉強したい。
…これはもしかしたら現実逃避かもしれない。
そうではなくて、オットがいるうちにやるべきことは何だろう?
数か月前はオットに体力があったので、「書類を片づけてもらえないか」なんてことを考えていた。今思えばまだ余裕があった。
1か月前は「身内や友達に会わせなければ」と焦っていたが、これはもう会ったり、会う目途がついた。いわゆる終活も最低限は済んだ。
でも、そうではなくて。
そうじゃなくて。
そういう他の人のことや事務的なことではなくて。
私たち家族とか、私とあなたの二人のことで、もっとやらなければいけないことがあるのではないの?
今、一番やるべきことは何だろう? いつも考えているけれど、毎日順位が変わるのだ。いったい一番は何?
山の家へ行きたい。オットが好きな海辺の町にも行きたい。それはオットの体力がもたないから無理だろうか。
一緒に美味しいものが食べたい。
けれど、オットは薬の副作用で味覚障害になってしまい、食事を楽しむこともできない。
さて、どうしたものだか。
いっそここで皆さんにアイディアを募集しようかとさえ思った。
「みなさ~ん、私は今、何をしたらいいですか~?」
が、そういうことではない。
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ただ、静かに語り合えばいい。
そうなのだろうけれど、その時間を持つのには、少しばかり勇気がいる。
思い出話をされるのが悲しいのだ。
馬鹿な話をして笑いあうことがないことに気づくのが怖いのだ。
「ごめん」と謝られてしまうのがつらいのだ。
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今日、オットはパソコンソフトのバージョンアップ作業をしたそうだ。
残りの時間が少ないのに? 他にもっとやるべきことがありそうな気がするのだけど。
こうして私たちはいつも優先順位を誤っているのかもしれない。
目の前のことをとりあえずやって、大切なことは後回しにして。それを後で悔やむのかもしれない。
それが情けない。
けれど、だからこそ、そんな人を愛おしくおもう。
◆
仕事帰りに珍しくオットからワインを買ってきてほしいとリクエストのLINEがきた。
そうか。ワインなら味覚障害でも味が少しはわかるのだ。
とびきりのワインを買って、乾杯しよう。
その瞬間だけ、笑って話せるかもしれない。