劣勢こそ問われる言葉のチカラ スポーツライター的・暴言のポジティブ変換術#10
😡「あと3イニングしかないんだぞ! なんとかしろ!」
6回を終わって、2対5と3点のビハインド。
7回表の攻撃に入るとき、ベンチで監督が怒鳴っています。
選手たちを鼓舞したい気持ちはわかりますが、監督自身のイラ立ちをぶつけているようにも見受けられます。
この暴言は、こんなふうにポジティブに変換しましょう。
😀「あと3イニングあるよ。1点ずつ返そう。焦らず、まず塁に出ることを考えよう」
【言葉を扱うライターとしての視点】
6回を終わって、3点ビハインド。現状を打開したいという監督の気持ちは、わかります。
しかし、「なんとかしろ!」という抽象的な指示では、焦りを煽るだけです。
野球は9回が終わるまでに相手より1点でも多く取ったほうが勝つゲームです。
冷静に考えると、7回で一気に3点差を追いついたり、ひっくり返したりする必要はありません。
ENEOSを率いる名将・大久保秀昭監督は、こう言っています。
劣勢のときこそ、指揮官の手腕が問われるのです。
野球はミラクルが起こるスポーツ
「野球は9回二死から」という言葉もありますね。
9回に二死満塁からホームランが出たら、たとえ3点差でもひっくり返る。
野球は、そんなミラクルが起こるスポーツでもあります。
しかし、指揮官の仕事はミラクルを期待することではありません。
1点ずつ返していけば、9回に相手は「ヤバいかも」と思い始める。
相手の心理を揺さぶることが、逆転劇を引き起こすきっかけになるのです。
その状況をつくるのが、指揮官の仕事です。
そのためには、選手たちが落ち着いてプレーできるようにするのが大事です。
そこで、「あと3イニングしかない」ではなく、「あと3イニングもある」と捉え直す。
3点差を追いつこうと焦ると、長打を狙ってスイングが大きくなりすぎて、いつもどおりのバッティングができなくなります。
「1点ずつ返そう」と声を掛ければ目標を細分化できるので、選手たちは目の前の1イニング、1球に集中できます。
塁に出るには、ヒットを打つだけではなく、四球でも失策でもいい。
そう考えればやるべきことを整理して、冷静さを保ってプレーすることができます。
追う試合展開で、どんな言葉をかけて逆転の可能性を高められるか? 指揮官の言葉のチカラが問われます。