「勝利」と「育成」の両立を目指すには? 書籍の仕事まとめ#12 大久保秀昭さん著『優勝請負人の導く力』
心に残っていた言葉
「いいチームだから、勝てるとは限らない。でも、勝ったチームは、どこもいいチームなんだよね」
大久保監督が慶大の指揮を執っておられたあるとき、神宮球場での雑談のなかでポツリと言った言葉です。
大久保監督とは、慶大の監督に就任した2015年に取材して以来、ご縁が続いています。慶大からENEOSに戻り、初の著書を担当することになったとき、最初にこの言葉を思い出しました。
取材を進めていくうちに、大久保監督は仰いました。
「ただ勝てばいいわけじゃない。人として、チームとして、勝つべくして勝つ。『勝ち』と『価値』を同時に追求しないといけない」
この言葉が、この本の大きなテーマになっています。
大久保監督は、「言葉の力」を持っている方です。
チームを勝ちに導くには?
人を導くには?
チームを導くには?
本書は、この3つについて大久保監督の言葉を紹介し、解説していく形で書かれています。
たとえば、
「胸の名前のためにプレーする。背中の名前のためにスタンドプレーをするものはいらない」
「監督として選手たちの夢先案内人でありながら、自分自身も夢追い人でありたい」
などです。
監督の仕事に正解はない
この本に書かれているのは、勝つための監督の役割、人材育成や組織づくりの方法などです。
ただ、取材中に大久保監督が何度か強調されました。
「特別な理論やセオリー、成功の方程式はない。伝えられるのは、経験だけ」
そこで、この本には大久保監督とENEOS、慶大の選手たちが実際に経験したエピソードが綴られています。
「こんなことを考えて、こんなことをした。そうしたら、こういう結果になった」という、具体例です。
そのため、大久保監督の言葉と、指導法や選手への接し方がリアルに伝わってきます。
大久保監督はこうも仰っています。
「監督の仕事に、正解はない。これが答えだと満足した瞬間に、監督としての成長は止まってしまう」
チームを日本一に何度も導いた名将も、学び続け、成長し続けているんですね。
大久保監督と「ファミリー」の物語
大久保監督は、よくチームを「ファミリー」にたとえます。監督が「親」で、選手たちが「子」です。
だから、この本は大久保監督ファミリーの物語でもあります。
大久保ファミリーの経験が語られているということは、その経験が当てはまるチームもあれば、当てはまらないチームもあると思います。
しかし、この本からは、大久保監督の「家族愛」が伝わってきます。
本書は、スポーツ指導者だけでなく、ビジネスリーダーや、組織の中で人を育てる立場にあるすべての人にとって、多くの学びがある一冊です。
大久保監督の言葉や経験を通して、リーダーシップの本質、そして「勝つべくして勝つ」チームをつくるためのヒントを見つけてください。
そして、ご自身の「理想の父親像」について、考えてみてください!