「労働基準関係法制研究会 報告書」労働政策審議会 労働条件分科会で報告
2025年1月8日に厚生労働省が公表した「労働基準関係法制研究会 報告書」が労働政策審議会(厚生労働大臣諮問機関)労働条件分科会(1月21日開催)で報告されます。
労働政策審議会(労政審)労働条件分科会
労働政策審議会(労政審=厚生労働大臣の諮問機関)労働条件分科会が2025年1月21日に開催されますが、議題は「労働政策審議会(労政審)労働条件分科会運用規定の改正について」と「労働基準関係法制研究会報告書について(報告事項)」となっています。
「労働基準関係法制研究会」報告書
「労働基準関係法制研究会」報告書は2025年1月8日に厚生労働省が公表していますが、「労働基準関係法制研究会」は今後の労働基準関係法制について包括的かつ中長期的な検討を行うとともに、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(平成30年法律第71号)附則第12条に基づく労働基準法等の見直しについて、具体的な検討を行うことを目的として、2024年1月23日から2024年12月24日までの間、全16回開催されました。
「労働基準関係法制研究会」のメンバー(構成員)は、荒木尚志・東京大学大学院法学政治学研究科教授(座長)、安藤至大・日本大学経済学部教授、石﨑由希子・横浜国立大学大学院国際社会科学研究院教授、神吉知郁子・東京大学大学院法学政治学研究科教授、黒田玲子・東京大学環境安全本部准教授、島田裕子・京都大学大学院法学研究科教授、首藤若菜・立教大学経済学部教授、水島郁子・大阪大学理事(兼)副学長、水町勇一郎・早稲田大学法学学術院教授(元 東京大学社会科学研究所比較現代法部門教授)、山川隆一・明治大学法学部教授。
「労働基準関係法制研究会」報告書には、「本研究会としては、本報告書において早期に取り組むべきとした事項を中心として、今後、公労使三者構成の労働政策審議会において、労働基準関係法制に係る諸課題についての議論が更に深められることを期待するものである。一方で、中長期的に検討を進めるべきとした事項については、国内外の実態把握や国際的な動向の把握を進めつつ、引き続き学術的な検討を進めることが必要と考えられる」と記載されています。
労働基準関係法制研究会 報告書(PDF形式)
労働基準関係法制研究会(厚生労働省サイト)
労働政策審議会(労政審)労働条件分科会委員
労働政策審議会(労政審)労働条件分科会メンバー(委員)は(2024年12月17日現在)(公益代表)荒木尚志・東京大学大学院法学政治学研究科教授(分科会長)、安藤至大・日本大学経済学部教授、川田琢之・筑波大学ビジネスサイエンス系教授、神吉知郁子・東京大学大学院法学政治学研究科教授、黒田祥子・早稲田大学教育・総合科学学術院教授、佐藤厚・法政大学キャリアデザイン学部教授、藤村博之・独立行政法人労働政策研究・研修機構理事長、水島郁子・大阪大学理事・副学長、(労働者代表)川野英樹・JAM副書記長、櫻田あすか・サービス・ツーリズム産業労働組合連合会会長、冨髙裕子・日本労働組合総連合会(連合)総合政策推進局総合政策推進局長、藤川大輔・全日本自動車産業労働組合総連合会副事務局長、古川大・UAゼンセン 会長代行、松田惣佑・全国生命保険労働組合連合会中央書記長、水野和人・情報産業労働組合連合会書記長、世永正伸・全日本運輸産業労働組合連合会中央副執行委員長、(使用者代表)鬼村洋平・トヨタ自動車(株)人事部労政室長、佐久間一浩・全国中小企業団体中央会事務局次長、佐藤晴子・東日本旅客鉄道(株)千葉支社企画総務部部長、鈴木重也・(一社)日本経済団体連合会(経団連)労働法制本部長、田中輝器・日本通運(株)人財戦略部専任部長、鳥澤加津志・(株)泰斗工研代表取締役、兵藤美希子・(株)大丸松坂屋百貨店人財開発部部長(松坂屋名古屋店担当)、松永恭興・(株)日立製作所人財統括本部人事勤労本部長(兼)エンプロイーリレーション部長。
つまり「労働基準関係法制研究会」メンバー(構成員)の荒木尚志・東京大学大学院法学政治学研究科教授と安藤至大・日本大学経済学部教授は労働政策審議会(労政審)労働条件分科会メンバー(委員)を兼ね、特に荒木教授は「労働基準関係法制研究会」の座長と労働政策審議会(労政審)労働条件分科会の分科会長を兼務しています。
労働政策審議会(労政審)労働条件分科会メンバー(委員)名簿(2024年12月17日現在)(PDF形式)
労働政策審議会(労政審)労働条件分科会(厚生労働省サイト)
追記:アドバンスニュースと共同通信が報道
労働政策審議会・労働条件分科会で厚生労働省が「労働基準関係法制研究会」報告書を説明
アドバンスニュースが昨日(2025年1月21日)配信した記事によると労働政策審議会(労政審)労働条件分科会で昨年(2024年1月~12月)に開催された「労働基準関係法制研究会」の報告書(2025年1月8日に厚生労働省が公表)について厚生労働省が説明しています。
そのアドバンスニュースの記事には「早期に着手すべき課題と中長期的に検討を進める事項に分けた報告書で、早期の見直し課題のなかには副業・兼業の労働時間通算における割増賃金規定の撤廃などが盛り込まれている。来年の通常国会に改正法案を提出する場合は、年内をメドとした議論が必要で、次回(労働条件分科会)以降、進行方法や審議日程について厚労省が提示する」と記載されています。
また、記事の中には厚生労働省の報告書説明後の使用者側委員(使用者代表委員)と労働者側委員(労働者代表委員)の意見が書かれていますが、まず使用者側委員は「働く場所や時間などにとらわれない自律的な働き方を実現する仕組みづくりと、自発的なキャリア形成を支援する仕組みが重要であり、それをサポートする政策が求められている」「例えば、自発的なキャリア形成に資する副業・兼業は割増賃金規制があるために普及、促進が大いに阻害されている。健康確保のための時間通算規制は残すことを前提に見直しを図ることが必要」と、報告書の方向性を評価しています。
しかし、労働者側委員は「専門的な見地から労働基準法全体の論点を整理してあり、連続勤務日数の制限導入など労働からの解放に関する強化や過半数代表者の適正化などが記されている」との認識を示したうえで、「テレワークのみなし労働時間制創設(テレワーク時の『みなし労働時間制』創設)や副業・兼業時の割増賃金の通算撤廃といった働き過ぎを助長しかねない内容もあるが、分科会(労働条件分科会)では必ずしも報告書を前提に議論するものではない」と、アドバンスニュースの記事によると厚生労働省の報告書説明を牽制する意見を述べています。
なお、共同通信は「労働者側の委員から連続勤務禁止に賛同する意見が出た。副業の割増賃金算定方法の見直しについては、使用者側の委員が副業促進の立場から賛同を表明したが、労働者側は『働き過ぎを助長しかねない』と、けん制していた」と報じていますが、テレワーク時の「みなし労働時間制」創設については(残念ながら)ふれられていませんでした。
「労働基準関係法制研究会」報告書(PDF形式)
労基法改正を視野に労使が本格議論へ、有識者研究会の報告書を厚労省が説明 労政審労働条件分科会(アドバンスニュース)
労基法改正へ議論開始、厚労省 14日連続勤務禁止案の報告書(共同通信)
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