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厚生労働省「労働基準関係法制研究会」と規制改革実施計画

2024年(令和6年)6月21日に『規制改革実施計画』(2024年版)が閣議決定されましたが、『規制改革実施計画』には厚生労働省「労働基準関係法制研究会」の議論に関係する事項が記載されています。


フリーランス・ギグワーカーの労働者性

6月21日に閣議決定された『規制改革実施計画』(2024年版)に「フリーランス・ギグワー カーの労働者性及び保護の在り方」という事項があります。

その規制改革の内容には(長い引用になりますが)「労働者性がある働き方をしているにもかかわらず、名目上は自営業者として扱われ、最低賃金を始めとす る労働基準法等に基づく保護を受けられていない、いわゆる偽装フリーランス問題の解決に資するよう、国民にとって労働者性の有無の予見可能性を高める観点から、例えば、 配達業務を行う就業者に対して発注者が具体的な配達経路を連絡し、当該連絡に従わない場合には制裁を科す等の措置により当該連絡に従うことを強制するなど、就業時間中に発注者が就業者の業務遂行方法について業務の性質上当然に必要な範囲を超えた連絡を行い、就業者に対して当該連絡に従うよ う強制するような場合には、人間による直接の指示ではなく、AIやアルゴリズムによる連絡であっても、業務遂行上の指揮監督関係を肯定する方向に働くことを明確にするなど、研究会報告による現行の判断基準を引き続き基礎としつつ、デジタル技術の活用を踏まえた判断基準の明確化を検討」と記載されています。

この判断基準(労働基準法等における労働者性の判断基準)の明確化の検討が、厚生労働省「労働基準関係法制研究会」で議論されて報告書の中に記載されるであろうと予想されます。

昭和60年(1985年)の「労働基準法研究会報告」(以 下「研究会報告」という。)に基づく労働基準 法上の労働者性(以下「労働者性」という。) の判断基準(以下「判断基準」という。)にお いては、「業務の内容及び遂行方法に対する 指揮命令の有無」は「指揮命令の程度が問題 であり、通常注文者が行う程度の指示等に止 まる場合には、指揮監督を受けているとは言えない」とされているが、現実には、就業者及び事業者による個別具体的な判断に当た っ解釈が容易ではなく、特に、事業者側の 人間による就業者に対する直接・対面の指示 ではなく、アプリやAI、アルゴリズムを用いた連絡やGPSを用いた就業状況の把握 など、研究会報告が取りまとめられた当時には想定されていなかったデジタル技術の扱いが不明確であり、労働者性の有無の予見可能性が低い状況にあるとの指摘がある。これらを踏まえ、厚生労働省は、労働者性がある働き方をしているにもかかわらず、名目上は 自営業者として扱われ、最低賃金を始めとす る労働基準法等に基づく保護を受けられていない、いわゆる偽装フリーランス問題の解決に資するよう、国民にとって労働者性の有無の予見可能性を高める観点から、例えば、 配達業務を行う就業者に対して発注者が具体的な配達経路を連絡し、当該連絡に従わな い場合には制裁を科す等の措置により当該連絡に従うことを強制するなど、就業時間中に発注者が就業者の業務遂行方法について業務の性質上当然に必要な範囲を超えた連 絡を行い、就業者に対して当該連絡に従うよう強制するような場合には、人間による直接の指示ではなく、AIやアルゴリズムによる連絡であっても、業務遂行上の指揮監督関係を肯定する方向に働くことを明確にするなど、研究会報告による現行の判断基準を引き 続き基礎としつつ、デジタル技術の活用等を 踏まえた判断基準の明確化を検討し、その結果を踏まえ、就業者・事業者双方にとって分かりやすく解説するなどの周知を行う。

規制改革実施計画(2024年6月21日閣議決定)

副業・兼業の円滑化

6月21日に閣議決定された『規制改革実施計画』(2024年版)に「副業・兼業の円滑化」という事項があります。

その規制改革の内容には「働き方改革関連法の見直しに係る検討会において、割増賃金の支払に係る(副業・兼業)労働時間の通算管理の在り方について、労働基準法等の関係法令における行政解釈の変更も含めて検討し、結論を得る」と記載されています。

この割増賃金の支払に係る(副業・兼業)労働時間の通算管理の在り方について(労働基準法等の関係法令における行政解釈の変更も含め)働き方改革関連法(労働基準法など)の見直し検討が、厚生労働省「労働基準関係法制研究会」で議論されて報告書の中に記載されるであろうと予想されます。

厚生労働省は、①副業・兼業を行う労働者 の健康管理のため、その所属する送り出し企業及び受入れ企業の双方における労働時間の通算管理が必要である一方、割増賃金の支 払に係る労働時間の通算管理については、制度が複雑で企業側に重い負担となるために雇用型の副業・兼業の認可や受入れが難しいとの指摘があること、②米国、フランス、ド イツ、イギリスでは割増賃金の支払において 労働時間の通算管理を行っていないことに鑑み、働き方改革関連法の見直しに係る検討会において、割増賃金の支払に係る労働時間の通算管理の在り方について、労働基準法等の関係法令における行政解釈の変更も含めて検討し、結論を得る。

規制改革実施計画(2024年6月21日閣議決定)

規制改革実施計画の本文(全文)と概要

6月21日に閣議決定された『規制改革実施計画』(2024年版)は、次の内閣府サイトに掲載されています。

規制改革実施計画(内閣府サイト)

規制改革実施計画(本文)(PDF)

規制改革実施計画(概要)(PDF)

厚生労働省 労働基準関係法制研究会とは

「労働基準関係法制研究会」は「新しい時代の働き方に関する研究会」につづいて開設された厚生労働省(労働基準局)有識者会議になります。

「労働基準関係法制研究会」の目的は「今後の労働基準関係法制について包括的かつ中長期的な検討を行うとともに、働き方改革関連法附則第12条に基づく労働基準法等の見直しについて、具体的な検討を行うこと」とされています。

また「労働基準関係法制研究会」の検討事項は「『新しい時代の働き方に関する研究会』報告書を踏まえた、今後の労働基準関係法制の法的論点の整理」と「働き方改革関連法の施行状況を踏まえた、労働基準法等」とされています。

厚生労働省 労働基準関係法制研究会 メンバー

労働基準関係法制研究会のメンバー(構成員)は、荒木尚志・東京大学大学院法学政治学研究科教授(座長)、安藤至大・日本大学経済学部教授、石﨑由希子・横浜国立大学大学院国際社会科学研究院教授、神吉知郁子・東京大学大学院法学政治学研究科教授、黒田玲子・東京大学環境安全本部准教授、島田裕子・京都大学大学院法学研究科教授、首藤若菜・立教大学経済学部教授、水島郁子、大阪大学理事(兼)副学長、水町勇一郎・早稲田大学法学学術院教授(元 東京大学社会科学研究所比較現代法部門教授)、山川隆一・明治大学法学部教授 (50音順)。

厚生労働省 労働基準関係法制研究会の経過

・議題は毎回「労働基準関係法制」とありますが、2024年1月23日に開催された第1回研究会ではメンバー(構成員)全員が労働基準関係法制全般について個人としての意見を述べています。

・2月21日に開催された第2回研究会では「労働時間制度」について議論されました。

・2月28日に開催された第3回研究会では「労働基準法における『事業』及び『労働者』」について議論されました。

・3月18日に開催された第4回研究会は「労使コミュニケーション」について議論されました。

・3月26日に開催された第5回研究会では、これまで議論された「労働時間制度」「労働基準法における『事業』及び『労働者』」「労使コミュニケーション」についての論点を整理しながら、さらに掘り下げて議論を一巡したようです。

・4月23日に開催された第6回研究会では第5回研究会でのメンバー(構成員)意見を踏まえて議論を深めて論点を再整理したようです。

・5月10日に開催されて第7回研究会は「労使団体ヒアリング」として経団連と連合からヒアリングが実施されましたが、経団連と連合はそれぞれ労働基準関係法制に関する提言をしています。

・6月27日に開催された第8回研究会では議題は「ヒアリング」「労働基準関係法制について」となっていましたが、「ヒアリング」では全国社会保険労務士連合会と一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会からヒアリングが実施されました。そして「労働基準関係法制について」では労働基準法における「労働者」について事務局(厚生労働省)が資料として提出した「案」が議論されたようです。

労働基準関係法制研究会(厚生労働省サイト)

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