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裁量労働制対象(適用)拡大と経団連

経団連(一般社団法人 日本経済団体連合会)「当面の課題に関する考え方」の6月版(2021年6月7日)には「裁量労働制の対象拡大」と記載されていたが、7月版(2021年7月5日)には「健康・福祉確保措置の徹底を前提とした裁量労働制の対象拡大」とある。つまり「健康・福祉確保措置の徹底を前提とした」というフレーズが追記されてあった。

厚生労働省の裁量労働制実態調査結果が(2021年)6月25日に公表され、そのことが何らかの影響を与えたのだろうと推測し得る。言い換えると、「健康・福祉確保措置の徹底を前提とした裁量労働制の対象拡大」と書かざるを得ないほど、裁量労働制は健康を損なう危惧があるということだろう。にもかかわらず、経団連は裁量労働制対象(適用)拡大を求めつづけるのだろうか、理解できない。

当面の課題に関する考え方(6月版)

〇経団連「当面の課題に関する考え方(2021年6月版)」「5.働き方改革と人材育成」

(略)働き手のエンゲージメント向上に着目し、働き方改革の深化を促すとともに、イノベーションの源泉となるダイバーシティ&インクルージョンへの取り組みを加速する。その一環として、場所と時間にとらわれない働き方を推進すべく、テレワークを巡る人事評価・労務管理上の課題について検討するとともに、裁量労働制の対象拡大等、自律的・主体的な働き方に適した新しい労働時間制度の実現を目指す。

当面の課題に関する考え方(2021年6月、経団連)

当面の課題に関する考え方(7月版)

〇経団連「当面の課題に関する考え方(2021年7月版)」「5.働き方改革と人材育成」

(略)働き手のエンゲージメント向上に着目し、働き方改革の深化を促すとともに、イノベーションの源泉となるダイバーシティ&インクルージョンへの取り組みを加速する。その一環として、場所と時間にとらわれない働き方を推進すべく、テレワークを巡る人事評価・労務管理上の課題について検討するとともに、健康・福祉確保措置の徹底を前提とした裁量労働制の対象拡大等、自律的・主体的な働き方に適した新しい労働時間制度の実現を目指す。

当面の課題に関する考え方(2021年7月、経団連)

経団連2021年度事業方針

〇経団連『「。新成長戦略」でサステイナブルな資本主義を目指す-2021年度事業方針-』(2021年6月1日)「3.働き方の変革」

日本型雇用システムの見直しを視野に入れつつ、働き手のエンゲージメントと労働生産性の向上を図る観点から、働き手の自律性を重視した多様で柔軟な働き方の実現を目指す。具体的には、女性をはじめ若者、高齢者、障がい者、外国人、LGBTなど多様な人々のさらなる活躍につながる、場所と時間に捉われない働き方を推進し、多様性を経営の力に変える。企画業務型裁量労働制の対象業務拡大の早期実現やその他労働時間法制の見直しに向けた機運を醸成するとともに、副業・兼業の一層の促進を図る。また、ポスト(略)を見据えて、成長産業への円滑な労働移動を推進するための方策を検討する。加えて、大学等が実施するリカレント・プログラムの策定支援等を通じて、リカレント教育の拡充を後押しする。(略)禍への対応に伴い雇用安定資金が枯渇していることから、一般財源の投入による雇用保険財政の早期再建を働きかける。

経団連『「新成長戦略」でサステイナブルな資本主義を目指す-2021年度事業方針-』

追記:経団連2022年度事業方針

〇経団連『サステイナブルな資本主義を実践する-2022年度事業方針-』(2022年6月1日)「3.働き方の変革」

働き方の変革と人への投資、教育改革の推進
裁量労働制の対象拡大の早期実現等、労働時間と成果が比例しない働き手の能力発揮を可能とする労働時間法制の見直しを目指す。
・成長分野・産業等への円滑な労働移動に資する環境整備を働きかける。
・「学びと仕事の好循環」の確立を目指し、産学官連携によるリカレント教育・リスキリング、インターンシップを含む学生のキャリア形成支援活動等を推進する。また、新しい時代に対応した教育改革を働きかける。
・働き方改革の深化とともに、多様な人材の活躍を力にするダイバーシティ&インクルージョンの推進や各企業の実情に適した「自社型雇用システム」の検討を呼びかける。
・「人への投資」と「働き手への適切な分配」の観点から、「賃金決定の大原則」に則りつつ、賃金引上げと総合的な処遇改善に取り組むよう、引き続き働きかける。
・「パートナーシップ構築宣言」への参加を通じ、取引適正化を推進する。(経団連「サステイナブルな資本主義を実践する-2022年度事業方針」-」抜粋)

経団連「サステイナブルな資本主義を実践する-2022年度事業方針-」

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