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希望名人ゲーテと絶望名人カフカの対話【読書記録】


「若きウェルテルの悩み」の著者・ゲーテと、朝目覚めたら主人公が虫になっていた「変身」の著者・カフカ。

二人とも有名な作家だが、両者には決定的な違いがある。
ゲーテは超ポジティブで、カフカは超ネガティブなのだ。

この本は、明と暗を表すように、ゲーテとカフカの名言が交互に書かれている。

【ゲーテ】
わたしたちが将来こうありたいと願うのは、自分にその素質があると予感しているからこそで、いずれは実現することを、今は夢見ているのである。

p90より

【カフカ】
こうして、またしても誘惑が始まり、またしても絶対不可能という答え。
どれほど悲しくても、けっきょくはそれが本当なんです。

p91より

ゲーテの希望にあふれた言葉を読むと「よし、自分もゲーテのように強く生きるぞ」と前向きになれる。
だが、すぐ隣のページに書かれたカフカの絶望まみれの言葉を読むと「カフカ……私も日陰の人間だから、すんげー気持ちわかるよ……」と肩を抱きたくなってしまう。
まさに、希望と絶望の反復横跳びである。

また、二人の名言だけではなく、編訳を務めた頭木弘樹氏の解説も読み応えがあって面白い。
この解説のおかげで、単なる名言集として終わらず、ゲーテとカフカがどのような人物であったかを深く知ることができた。

希望だけでは眩しすぎる、でも絶望だけでは気が塞ぐ。
そんな方におすすめの一冊だ。

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