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ストレスに負けない心を測る新しい尺度──Connor‐Davidson Resilience Scale(CD‐RISC)の開発/論文レビュー

こんばんは、ゆあさです。

本業で、“レジリエンスを高める”ことを目的とした取り組みをいくつか行っており、8ヶ月間の取り組みの中で対象者がどのように変化するかという視点でデータを取っているのですが・・・
そろそろ、ちゃんとまとめることを見据えて行かねばと思いまして(笑)
今日は「レジリエンス」について学びを深めていきたいと思います。

1発目は「Resilience」というワードで最も引用数が多い論文に着目してみます。こちらの論文です。

Devwlopment of a new resilience scale :The CONNOR-DAVIDSON RESILIENCE SCALE (CD-RISC)/K.Connor and J. Davidson(2003)

DEPRESSION AND ANXIETY,18,76–82

お付き合いいただけますと幸いです!


CD-RISCとは?

レジリエンスとは?

レジリエンスとは、「ストレスや逆境に適応し、成長できる力」のことです。研究では、レジリエンスは固定的なものではなく、状況や治療によって変化することが示されています。

これまでレジリエンスを正確に測る標準的な尺度は確立されていませんでした。そこで、Duke大学のConnor博士とDavidson博士は、新たなレジリエンス測定尺度「Connor‐Davidson Resilience Scale(CD‐RISC)」を開発しました。

CD-RISCは、このレジリエンスを測定するために開発された25項目の質問票で、各項目を0(全く当てはまらない)〜4(ほぼ常に当てはまる)の5段階で評価します。
合計スコアが高いほどレジリエンスが高いことを意味します。


なぜCD-RISCが必要だったのか?

既存の尺度の限界

以前からレジリエンスを測定するための尺度はいくつか存在しましたが、以下のような問題がありました。

  • 十分に普及していない(研究ごとに異なる尺度が使われる)

  • 特定の集団にしか適用できない(例えば軍人向けの尺度が一般人には適さない)

  • 治療によるレジリエンスの変化を測るのに不十分

そこで、誰でも簡単に使え、心理療法や薬物療法によるレジリエンスの変化を正確に測定できる尺度が必要だったのです。


CD-RISCの開発と検証

CD-RISCの設計

CD-RISCの項目は、以下のような研究をもとに作成されました。

  • 「ハーディネス(精神的耐性)」(Kobasa, 1979)

    • ストレスを「挑戦」と捉える力

    • コントロール感・コミットメント

  • 「適応戦略」(Rutter, 1985)

    • 目標設定・行動志向・ユーモアの活用

    • 人間関係の安定・ストレス耐性

  • 「精神的強さと信念」(Lyons, 1991)

    • 我慢強さ・痛みに耐える力

    • 信念やスピリチュアルな価値観

これらの理論をもとに、25項目の尺度が設計されました。

研究対象と方法

本論文では、CD-RISCの信頼性と妥当性を検証するため、以下の集団に対して尺度を適用し、それぞれの結果が出ました。

GPTちゃんが作りました←

結果、精神疾患を抱える人はレジリエンススコアが低いことが示されました。

また、PTSD患者を対象にした臨床試験では、薬物治療を受けたグループでCD-RISCスコアが最大25%以上向上し、レジリエンスが改善されることが確認されました。

因子分析による5つの要素

CD-RISCは因子分析の結果、以下の5つの要素で構成されていることが分かりました。

  1. 自己効力感と粘り強さ(例:「最善を尽くす」「失敗にくじけない」)

  2. ストレス耐性と楽観性(例:「ストレスが成長の糧になる」)

  3. 環境適応力と人間関係(例:「変化を受け入れられる」)

  4. コントロール感(例:「人生を自分でコントロールできる」)

  5. スピリチュアルな側面(例:「運命や神を信じることが助けになる」)

このように、CD-RISCは単に「強いか弱いか」を測るのではなく、どのような要素がレジリエンスを構成するのかを細かく分析できる尺度のようです。


CD-RISCの活用と今後の展望

臨床現場での活用

CD-RISCは、精神疾患の診断・治療評価に役立つと考えられます。

  • 診断補助:「レジリエンスが低い人は、うつ病や不安障害になりやすい」

  • 治療効果の評価:「治療によりレジリエンスが向上しているか?」

特に、レジリエンスの向上が症状の改善と関連しているため、治療の効果を測る指標として有用です。

今後の課題

CD-RISCにはいくつかの課題もあります。

  • 生物学的指標との関連が未検証(神経ペプチドYやセロトニンとの関係など)

  • 状況による変化をどのように解釈するか?(職場では強いが家庭では弱い人など)

  • 因果関係の問題(レジリエンスが高いから回復するのか、回復したからレジリエンスが高くなるのか?)

これらの点を解明するため、さらなる研究が求められています。


まとめ

  • CD-RISCは、レジリエンスを測定するための新しい尺度である。

  • 精神疾患患者は一般住民に比べてレジリエンスが低いことが確認された。

  • 治療によりレジリエンスが向上することが示された。

  • 臨床現場での活用が期待されるが、さらなる研究が必要である。


この論文を読んでの所感

レジリエンスは固定的なものではなく、鍛えることができる力とされています。今回は尺度の妥当性・信頼性を検討する論文だったり、臨床に視点が置かれた内容だと思うので・・・
ビジネス文脈の中で、「どのようにするとレジリエンスが向上するか?」といった観点の論文もレビューしてみたいと思います。

また、心理的資本の因子にある「レジリエンス」とのつながりが気になったので・・・違う方向からも掘り下げていきたいと思います。

もし研究者のみなさまが読んでくださっていたら・・・
レジリエンスに関してはこの論文がおすすめだよ!」というものがあれば教えてください(切実)

今日もお付き合いいただき、ありがとうございました。
Good Night☆彡

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