意外と知らない、若手社員の伸ばし方! 【論文レビュー】
人材開発・組織開発に関わっていると、人事と思われがちですが、正真正銘の保健師です。
おはようございます、ゆあさです。
会社で働く保健師として、健診事後措置やメンタル事例、休復職・両立支援や特定保健指導など、年間300件以上の保健師面談をしています。
「1on1で従業員の方々と話す時間が社内の誰よりも多い!」と自負しています(笑)
「こんな機会を逃すことはもったいない・・・」という思いから、面談の時に工夫していることがあります。
それは、体調のほかに、職場の雰囲気や経営に関連した業務状況なども併せて聞くことです。
これが、高ストレス職場への対応を含めた組織開発に役立つのですよね!
情報の点と点がつながる瞬間がたまらなく好きです。
そんな中、職場の先輩・上司たちの「若手が伸びないんだよね」なんて言葉を耳にします。
特に、年度が変わる前のこの時期!
「若手を伸ばす」と言っても、いろんなタイプの方がいる中で、経験則で対応することに困っている方も多いように思います。
この時期、そんな悩みを持たれる方々に知ってほしいのが、今回ご紹介するこちらの論文です!
意外と知らない、若手の伸ばし方。
よろしければ、ご一読ください!
結論のポイントから見る
若手が職場での能力向上は、プロアクティブ行動によって促される
プロアクティブ行動とは、個人が自分自身や環境に能動的・主体的に働きかけて組織適応を図ること
プロアクティブ行動の要素のうち、自身の職務に対する目標や行動に対して上司や同僚など他者からの意見や指摘を求める行動である「フィードバック探索行動」と、組織における部門間の関係や権限関係について学ぼうとする「組織情報探索行動」は、【リフレクション(内省)】することを通して業務能力向上を促す
心の声:「若手が伸びない」と言いながら、フィードバックめんどくさがっちゃダメよ
研究背景
みなさんもご存知かと思いますが、少子高齢化に伴う労働人口が減少しています。それゆえ、若手の早期戦力化を求める社会的ニーズが高まっています。
しかし、若手の育成を含めた企業内での人材育成は課題が山積み!
特に、労働力不足によって、多くの指導者は通常業務に、若手の指導が加わって、十分な指導時間が割けない&負担大!
それゆえ、若手の指導の場であるOJTは機能不全に陥っていると指摘されています。(厚生労働省 2020, 中原 2012)
こういった背景から、効果的に若手を育成することが大切だよね、ということでいろんな研究がありまして・・・
前述の「プロアクティブ行動」は業務能力など職場における能力向上に効果的だという研究があるものの、具体的なプロセスは明らかになっていないという状況でした。
そんなこんなで(雑)、本研究が行われたとのことです。
研究内容のご紹介
調査対象者について
従業員10名以上の国内民間企業に勤務する、20〜29歳の正社員および契約社員942名
平均年齢は26.6 歳(SD =2.0)
性別は男性54.0%、女性46.0%
インターネット調査会社 A 社に登録するモニター会員を無作為で抽出たのち、年齢や雇用形態、所属企業の従業員数、職位などでスクリーニングを行った結果を用いて、要件を満たす対象者を抽出したとのこと。
(よくよく考えると、スケールがすごい)
調査方法について
Webモニター調査
抽出した対象者に対し、オンラインで調査票のリンクを送信し,任意かつ匿名の形式で回答を収集
回答時間が極端に短かったり、連続で同じ選択肢を回答している場合は除外
ライスケールを用いて、極端な心理傾向のある回答は不良回答として除外
調査項目について
以下の構成因子を用いた質問紙調査(5段階評価)を実施
プロアクティブ行動:ASHFORD and BLACK(1996)によるプロアクティブ 社会化戦術(Proactive socialization tactics)尺度の日本語訳を用いた星(2016)から21項目を使用 (ポジティブフレーミングを構成する3項目を除外)
リフレクション:木村(2012)の経験学習行動尺度のうち内省的観察 を構成する質問から4項目を使用
職場における能力向上:中原(2010)の職場における能力向上尺度から17項目を使用
分析の方法
これらの質問項目は、各々の質問項目ごとに、共通する因子を特定する因子分析が行われ、以下の因子に分けられました。
プロアクティブ行動:「フィードバック探索行動」、「組織情報探索行動」「ネットワーキング行動」の3つの因子
リフレクション:「リフレクション」の1つの因子
職場における能力向上:「職場における能力向上」の1つの因子
※ちなみに、職場における能力向上は6つの因子に分けられるのですが(業務能力向上、他部門理解向上、他部門調整能力向上、視野拡大、自己理解促進、タフネス向上)、今回の研究では、プロアクティブ効果やリフレクションがどのように「職場における能力向上」に影響を与えるかを確認するため、大括りの1つの因子で見ていくことに。
研究の結果
これまでの若手社員のプロアクティブ行動に関する先行研究では、プロアクティブ行動が直接的に職場における能力向上にポジティブな影響をもたらすという研究知見が蓄積されていました。
それに対して、この研究では新たに2つ分かったことがありました。
<分かったこと①>
プロアクティブ行動の全てが、職場における能力向上にポジティブな影響を及ぼしているわけではないということです。
具体的には、プロアクティブ行動のうち、職場における能力向上に直接的にポジティブな影響を与えるのは「フィードバック探索行動」のみでした。
<分かったこと②>
プロアクティブ行動が若手社員の能力向上に与える影響は、リフレクション(内省)が行われることによって生じるということです。
プロアクティブ行動によって、自然発生的に能力が向上するわけではないのですね。
リフレクションで、プロアクティブ行動で得られた経験を振り返ることによって、職場での能力向上につながる学びを得られるということでした。
(これは経験学習理論そのもの!!)
こちらの図は、パス解析の結果です。
まとめ
この研究で分かったことは、以下2点
若手社員が上司や先輩にフィードバックを求めるといった行動は、能力向上に直結するということ
フィードバックを求める行動に加え、組織間の関係性など組織の情報を探していく行動が、どのように自身業務につながったか振り返ることができると、これも能力向上につながるということ
若手社員にとっては、最初から自分でフィードバックを求めていくことってハードルが高いのかな?と思いつつ・・・
フィードバックをする習慣を職場で作ると効果的なのでは?と思いました。
そして、別の文献にはなりますが、職場学習論(中原,2021)では、上司からの支援によってリフレクション(内省)が効果的に行われ、能力向上につながるという結果もあります。
上司もプレイングマネジャーの方が多く、忙しいかもしれませんが
「若手が伸びない」と嘆かれる要因の一つにご自身もなっているやもしれません・・・泣
余談
この論文を読んだ後、この研究結果について、オットと話をしてみました。
私の会社では、評価面談のタイミングで強制的にフィードバックする/される機会があるのですが、業績に対してのフィードバックなので、リフレクションを想起するような面談ではないように感じます。
しかし、オットの会社では業績評価とは関係なく、一緒にプロジェクトを行なっている人に対して、いつでもフィードバックをお願いするシステムがあるとのこと。(業績評価のフィードバック面談も別である)
面と向かっての依頼はハードルが高いかもしれないし、上司側も時間割くのが大変かもしれないですが、システム上ならお互いのタイミングで対応出来るので、ハードルが下がりそうですね!
The内資(私)とThe外資(オット)の会社のシステムの違いは、いろんな意味で面白いなぁと思いつつ、いつも羨ましくなる私がいます(笑)
最初からかなーーりの長文となりましたが、お読みいただきありがとうございました!