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旅の「賞味期限」
父が買ってくるお土産たちが、私の「旅」だった。
単身赴任や出張が多く日本各地を飛び回っている父は、いつもたくさんのお土産を手に提げて帰ってくる。64歳になった今だって、そうだ。
リビングの机の上に、大量のお土産を披露する父。
「もう、また肥えるじゃん〜」と文句を言いながらも、父に説明する間も与えず
お土産をチェックする母と私。
東京で育った私にとって、地方のお菓子は最高のおやつだ。
京都といえば、阿闍梨餅。
北海道といえば、六花亭バターサンド。
兄は、三重の赤福が好きだったな。
美味しいお土産たちは、たいてい賞味期限が短い。
「ほれ、好きなんでしょ、すぐ食べちゃいなよ」と言わんばかりの存在感で、机に並ぶお土産たち。その存在感が、なんだか羨ましい。
「早く食べないとだもんねぇ」と自分に言い訳をしながら、夜遅くに食らう。
その美味しさに、笑みが溢れる。
きっとその幸せは「旅」の賞味期限でもある。
あぁ、満腹、万福。
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