【雪の罪】━序の記━
【前記】
雪月花、季の美しさ雅びさも罪なるものか。極端な事を申すならば、春夏秋冬すべての四季にて罪は生まれるもの、繋ぎ継ぐものとなりはしまいか。
いやはや、いくら何でも極端すぎる思考なりか、うむ……。などと自問自答を繰り返しては、四季の折々に生まれては喪われ逝くものに思考を巡らせ、其の意を追求する。
そもや季節の始まりは果たして本当に春なりしか。
雪の罪を咎めるならば、冬から罪は始まりはしまいか。
山間なれど、此の地では大雪吹雪は滅多に見られぬ。ましてや、大雪積もりし圧巻なる景など珍奇極まれり。真冬と云えども此の地で望み眺めるは、雪に纏われし山の木々や、庭の松や石などの雪化粧の景と知る。
ちらちらと山を纏いて雪化粧
遠き山の木々を纏う雪白粉の美しさに感嘆しては、雅びなる景に風情を感じる。寒よりも感が身に沁み入るが、我が喜びとなる真冬の朝のひととき。寒波は続けど、雪は刹那。淡雪泡沫。
そうして寒波も風花とともに過ぎゆくが、常ならば然るべきことなれど……いやはや如何にしてにか。今年はそうとも行かぬ模様。またまた季の狂いが所以かと、白息とともに溜め息を吐く。
睦月に如月、真冬の侯よ。鬼退治には節分豆。ならば冬将軍は何で去るとな。居座る寒波に身を震わせて、暦の妙に傾げる頸よ。立春過ぎて真の大寒とは、可笑しきこと極まれり。荒れ狂う寒風よりも余程に狂事なり。景は雪化粧と雅びに語れぬ吹雪大雪。珍しき事この上なきに、明暗混ざりて細雪の如き心情を、記して綴るは此の地での雪語りよ。切々なる刹那ごとを、現と夢まぼろしに斑らはだらに織り交ぜては、詠みてうたいて綴りて雪の文。文にて戯れ雪遊びとな。刹那を徒然に、描きて候う。