【和詩】 秋の筆
透ける空に鰯雲
野に揺る薄刈り稲田
傾ぐ案山子に秋茜
金木犀の芳香に
ふわり追憶長き影
萩やしだれて花簾
幽玄なりや秋月夜
酔う名月やぐゆぐゆり
過ぎて十六夜秋の虫
桔梗秋桜竜胆と
愁いて寄り添う秋の情
彼岸に此岸曼珠沙華
紅の黙礼 偲ぶ秋
映ゆる紅葉や水鏡
艶やかみやび 錦の景
瑞の苔や 石畳
斑らの描や花の筆
滲み依りては 秋霖よ
枯れ木の許に朽葉かな
短命なるは秋さだめ
晩秋なりか 寒の菊
凛と佇み冬を待つ
密文綴りて逝く秋よ
告げるは花か蝶なりか
描く水墨冬の筆
椿さざんか 雪の粧