テレビ屋気取り #56 意地と責任
改編期を迎え、たくさんの新番組が始まりました。
余談ですが、「オールナイトニッポン」の新しいブランドが立ち上がりました。
その名も「オールナイトニッポンPodcast」
佐久間さんのラジオでもメールが届いていましたが、ニッポン放送はラジオリスナーだけ1日70時間くらいあると思ってるんですか?
番組が多すぎてどれだけ時間があっても足りませんよ。
まあそれを見越してのポッドキャストでの配信ということでしょうが。
テレビも続々と新しい番組が始まって、「これも見たい!」というのが多すぎます。
その代表例がテレビ朝日の「バラバラ大作戦」ですね。
タメになる「もう中のおグッズ!」
そのバラバラ大作戦の月曜日で始まったのが「もう中のおグッズ!」
趣味が「タレントグッズ集め」のもう中学生が、“もう中グッズ”制作を目指して猛研究!
企画概要を聞いただけでも「??」がたくさん浮かびますが、初回放送はもっと訳がわかりません(もちろんいい意味で)
もう中さんの独特のセンスとワードチョイスでロケが進んでいき、それに対してノブコブの吉村さんが絶妙なツッコミを入れる。
あれは吉村さんにしかできないと見ていて思いました。
”生ワイプ”ってなんなんですかね?
恐ろしい世界観です。
ツッコむ人がいて初めて成立する番組だと思いますが、回が進むごとにもう中さんでも収拾がつかないようなゲストが来て、もう中さんがめちゃくちゃ困っている様子が見てみたいです。
とにかくこの番組に関しては、企画書を書いた人も、それを通した編成もすごいなと思いました。
いろいろ勉強になりそうです。
”テレビでコント番組をやる”ということ
日本テレビで「東京03とスタア」という番組が始まりました。
東京03が初冠番組を持つことも話題性がありますが、何よりもテレ東を退社した佐久間さんと日テレの橋本さんがタッグを組むことがいちばんの驚きだった番組です。
ひたむきにコントに向き合う姿勢が評価されて、同世代の芸人からも後輩の芸人からも慕われている東京03が、3人それぞれが得意な分野で活躍することはあっても、3人揃って番組をやるということはなかなかなくて、“3人の”しかも「コント番組」をやるということで、きっとこれは佐久間さんにとってずっと実現したいと思い続けていたことだと思います。そこに盟友である佐久間さんの責任と意地を感じます。そしてそこに手を差し伸べて、難なく企画書を通してしまう橋本さんもさすがです。
劇場で生のコントをほとんど見たことがない身なので、あまり偉そうなことは言えませんが、テレビでコントをやるということについて少し考えてみたいと思います。
初回放送を見ていて思ったのは、空間で見れるなーということです。
この画像を見ていただければわかりますが、四角形のテーブルに4人が向き合って座っています。
それがなんだよっていう話ですが、このレイアウトは劇場では取らないと思います。それは単純に見にくいから。もしかしたら普通のネタ番組でも無理かもしれませんね。コント番組だからこそできることではないでしょうか。
そのおかげで、劇場やネタ番組のように平面ではなく空間で見ることができると思います。もしかしたらその辺りも意識してリハを重ねているのかもしれません。
その上でもう少し期待したいのは、動きです。
演技派の角田さんを中心に、寄りでテンポ良くスイッチングしていく印象でしたが、もう少しクレーンでロングのじわーっとした画があってもいいかなーと思いながら見ていました。
ただ、テンポの良さが東京03の魅力だとしたらなかなか難しい注文かもしれませんが。
豪華ゲストとの共演によって生み出されるコントをこれからも楽しみに見させていただきます。
ようやく本題へ
前置きが長くなりましたがようやくここからが本題です。
今週1番衝撃だったテレビは、「水曜日のダウンタウン おぼんこぼん THE FINAL」です。テレビが好きな方、お笑いが好きな方なら避けては通れなかった今週の話題ではないでしょうか。
「水曜日のダウンタウン」に関しては、語ることができない領域感がありすぎて、これまでここで取り上げてくるのは避けてきました。
ただ、今回ばかりは感情的にもテレビ論的にも揺さぶられるものがあったので、思ったことを率直に書いてみようと思います。
どこで”見れる”と思ったのか
2週分の放送を見ていてたびたび思ったのは、「これ、どこで”見れる”と思ったんだろうな〜」ということです。
もう少しわかりやすく言い換えると、「どのタイミングで企画として成立すると思ったのか」ということです。
今更感はありますが、この番組は見ていて「ねぇーもうやめようよーかわいそうじゃん!」と思うことが度々あると思います。その度合いは人によってさまざまで、その感覚を楽しめる人と本気で心配して胸を痛めている人がいるのではないでしょうか。
この私も今回ばかりはその二つの瀬戸際で感情を揺さぶられながら見ていました。
こんなに冷やしやしながら見なければいけないテレビは、企画として避けられるのがテレビのセオリーだと思います。そんなのを無視して毎週面白い放送をぶち込んでくるのが地獄の軍団だということは皆さんお分かりだと思います。ただ、さすがに今回の企画は途中で「これは無理だな〜」と思う瞬間が何度もあったのではないでしょうか。
じゃあなぜ今回オンエアが実現できたのか。
私の個人的な結論は、「意地と責任があったから」だと思います。
地獄の軍団の意地
この企画の発端となったドッキリ企画をオンエアして、その反響の大きさからおぼん・こぼん企画は続編を出し続けなければならないということになったと思いますが、最終的にどこに着地するかをずっと考えていたのではないでしょうか。
その答えはシンプルで、二人が仲直りをすること。
ただ、答えがシンプルすぎるのと、あれだけ盛大に関係にヒビが入ってしまったから、それを修復するのは並大抵のことではないと見当がついていたのだと思います。
そのタイミングをずっと伺いながら、こぼん師匠の娘さんが結婚式を挙げるということで、そこに全てをかけることにしたのだと思います。
ファイナルに至るまでにあらゆる壁があった分、特に結婚式当日に予期しない展開に二転三転しても、そこで折れることなく完パケとオンエアまで持っていけたのではないでしょうか。
地獄の軍団の意地を感じました。
笑いを提供する者としての責任
そもそもこんな企画をしなければならなくなったのは、ドッキリ企画によって「おぼんこぼん」の積年の想いを爆発させてしまったから。
世代ではないので「おぼんこぼん」のお笑い界での功績というのはよくわかってはいませんが、漫才協会を長年背負ってきたベテラン漫才師を一つのテレビ番組の企画をきっかけに失ってしまうというのは、あまりにも酷すぎるお話です。
だからこそ責任を持って前に進ませたいという執念が伝わってきたような気がします。結婚式当日のあの現場の雰囲気を味わったら、誰だって心折れると思います。それなのに、逃げずに向き合ったからあの感動的な場面が生まれたのではないでしょうか。担当されたディレクターの方には脱帽です。
新しいものもいいけれど…
新番組が始まる時期、時間がどれだけあっても足りません。
新しいものは新鮮味があってワクワクします。
ただ、ずっと続くものも大切にしなければいけません。
何ヶ月か前に放送された「コンテンツ・ラヴァーズ」(NHK)をようやく録画で見ました。
神田伯山さんが「水曜日のダウンタウン」のことを、「あのクオリティを毎週出し続けるのはすごい」と称賛していました。
確かにその通りだと思います。
意地と責任を持って毎週面白いコンテンツを提供し続けるクリエイターたちに敬意を持って見続けることが大切だと思いました。
この苦労とありがたみがわかれば、自分も平均くらいのクリエイターにはなれるのかななんて自分に期待を抱きながら今週は終わりにしたいと思います。
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2021.10.10 作成
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