一人称単数と、回転木馬のデッド・ヒートとデレク・ハートフィールド
村上春樹の一人称単数を読み終えた。
8編の短編が収録されていて、なんだか初期の短編集のような趣があって、面白くてすぐに読み終えた。
なんとなくすべての短編の主人公が村上春樹本人のような書き方がされていてるので自伝的な感じがするけど、たぶん普通にフィクションだと思う。後半の作品ではしゃべる猿がでてきたりするし。
「品川猿の告白」に出てくる猿はめずらしくよい感じの猿だった。村上春樹の作品ではメタファーだったり、ちょっとした登場人物のような感じで猿がでてくるけど、疲れた猿だったり、ハンマーで頭を殴る灰色猿だったりと、あまりよく書かれている記憶がない。よい感じの猿の話が読めてよかった。
この作品を読んで、回転木馬のデッド・ヒートを思い出した。
この作品では、人から聞いた話をベースに文章にしている、と書いてある。これもそういう設定なだけかもしれないけど、こんな感じのことが文頭にある。
しかしここに収められた文章は原則的に事実に即している。僕は多くの人から様々な話を聞き、それを文章にした。もちろん僕は当人に迷惑が及ばないように細部をいろいろといじったから、まったくの事実とはいかないけど、それでも話の大筋は事実である。
一人称単数のウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatlesと、回転木馬のデッド・ヒートの今は亡き王女のためのとかは、特に構成が似ている。
風の歌を聴けの最後に、「ハートフィールド再び、……(あとがきにかえて)」という章でデレク・ハートフィールドについて書いている。細かいことは書かないけど、フィクションの使い方がとても面白い。
短編をさらっと読むのは楽しい。あまり読み返していない短編集もあるので、開いてみようと思う。
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