2024年 最新インバウンドの展望・食に関する動向
2023年のインバウンド大幅回復を受け、2024年も訪日外国人数は増加傾向にあります。特にアジア圏からのリピーターが増加し、よりコアな日本食体験を求める傾向が強まっています。
本記事では、総合商社のインバウンド勉強会を基に、2024年9月時点の最新動向を解説。コンビニ需要の伸びや、外国人観光客の飲食店選びの特徴、大阪の飲食現場のリアルを紹介します。
消費動向の変化に対応し、インバウンド客を取り込むためにも、ぜひご覧ください。
1. インバウンド動向|訪日外国人の飲食ニーズ
インバウンドの最新動向、訪日外国人の飲食ニーズについて。
訪日外国人の飲食ニーズを、以下の切り口から分析します。
訪日外国人の飲食
食事場所の決め方
大阪のリアルな飲食現場
コンビニ需要の伸び
飲食店側の課題
順を追って押さえていくと、インバウンドの現状が見えてくるはずです。
訪日外国人の飲食|明確な目的意識
日本食への高い関心: 訪日外国人の旅行目的・動機として、「日本食」への関心は非常に高いものがあります。
人気の料理:
肉: 特にブランド牛(神戸ビーフ、宮崎牛など)に高いニーズがある。
寿司: アメリカでは「くら寿司」が一皿500~500円と割高な設定です。高級な割に、質は日本に劣ると認識されており、本場の日本でリーズナブルに楽しみたいというニーズがあります。
ラーメン: 専用のツアーが組まれるほど人気があり、一度に複数のラーメン店を巡る「ミニラーメンツアー」なども人気。ミニラーメン(椀子ソバサイズ)のラーメンを6軒めぐって12,000円あたりの価格でも受け入れられている。
地域性: 大阪では「粉もの」(お好み焼き、たこ焼き)が人気。道頓堀のお好み焼き店「千房」では、実に90%近くがインバウンド客という話も伝わってきている。
食事場所の決め方|深まる日本への理解
アジア系: 訪日前に入念にリサーチし、行きたい店を決めてくる傾向があります。中でも、インフルエンサーやSNSの情報が大きな影響力を持っている様子です。
欧米系: 比較的、当日の気分で食事場所を決める傾向が強く、日本人からの直接的な情報や紹介を重視しています。
レストラン以外の選択肢: 欧米系を中心に、コンビニやスーパーを利用して食費を抑える旅行者も35%程度存在します。特に、スーパーやデパートの「遅い時間の割引」など、コアな情報も押さえている点が特徴です。
大阪のリアルな飲食現場|多様かつコアなニーズへシフト
黒門市場: 魚介類の高価格化が問題視されている。焼きガニの足1つが3000円。ウニは1つ3000円超の高価格。欧米人は受け入れているものの、中国人観光客は価格の安い木津市場に流出している現状があります。
立ち飲み: 外国人からの需要があるものの、店側の受け入れ態勢が不十分で、入店しづらい雰囲気がある点が機会損失に繋がっています。
多様なニーズ: ミシュラン掲載店から立ち飲み屋まで、同じ旅行者が様々な飲食店を楽しむ傾向があります。
リピーターの増加: アジア系を中心にリピーターが増加しており、日本への理解の深まりは進んでいく。今後は、よりローカルでコアな日本食体験を求めるようになるでしょう。
コンビニ需要の伸び|クオリティの高さで集まる注目
「夜の空白」を埋めるコンビニ: 日本では、夜遅くまで営業している飲食店・ナイトクラブが少ないため、訪日外国人はコンビニを積極的に利用しています。特に、お酒や軽食を購入し、ホテルで「部屋飲み」を楽しむケースが増えています。
多様なニーズに応える品揃え: コンビニは、弁当、おにぎり、パン、スイーツ、飲料など、取扱商品の多様性が強み。様々なニーズに対応できます。また、24時間営業である点も、訪日外国人の利便性を高めています。
インバウンド対応の強化: 一部のコンビニでは、免税対応や多言語対応、外国人観光客向けの商品開発など、インバウンド対応を強化しています。
飲食店側の課題|おもてなしの姿勢とこころ
多言語対応: メニューの多言語化や、写真付きメニューの導入が求められています。
情報提供: ハラール対応やアレルゲン情報など、食事に関する情報を事前に提供することが重要です。
接客態度: 言葉の壁よりも、温かく迎え入れる姿勢が大切です。訪日旅行者は、言葉が通じない点は織り込んでいます。「言葉に苦労したけど、食べることができてよかったよね。」といった体験も、楽しい経験となっています。
2. インバウンド関連情報|チャンスの足掛かり
百貨店のレストランフロア: 高島屋など、百貨店のレストランフロアは、昼夜問わず外国人客で賑わっています。中には、うなぎを4人で1つをシェアするなど、日本とは異なる食習慣も見られます。
調味料への戸惑い: 多様な日本の調味料に戸惑う外国人観光客が多く、シンプルな調味料セットや説明書きがあると喜ばれます。
円安基調: 2022年3月以降の円安傾向は、台湾、香港、アメリカからの越境EC利用を増加させています。途上国の経済発展も、さらなるインバウンド需要増加に繋がる可能性があります。
大手旅行代理店の視点: 円高へ振れた場合も、インバウンドへの影響は限定的であろう。海外での物価高の方が、インパクトは強いと考えられています。
言葉の壁: 翻訳ツール「POCKETALK」の導入実績が増加していますが、言葉の壁よりも、温かく迎え入れる姿勢が訪日外国人の満足度向上に繋がります。
まとめ
2024年のインバウンド市場は、リピーターを中心に形成されつつあります。今後の展開として、よりコアな日本体験を求められるでしょう。特にアジアからの旅行者のリピーター化は、欧米に比べて顕著であり見逃せません。
飲食店は情報提供に加え、「おもてなし」の心を大切にする必要がありそうです。今まで敬遠していた諸々を見直し、新たなインバウンド需要の掘り起こしに目を向けたい。意外なところがチャンスロスになっていないか、見直しをかけるべきです。