心置きなく愛して
『愛ってなんだろね』
(いややわぁ、旦那はん)
『気恥ずかしい言葉でさ』
(ははぁ。慣れてへん)
『たーしかに確かに』
(試されたらよろしおす)
『え。いや。試すって……』
(論より証拠言いますやろ)
☆☆☆
こんにちは!
フジミドリです♡
今日の私物語は、愛って何だろう、素朴な疑問を探って参ります。
幽界で学びました。
私は毎晩、守護の神霊が呼んで下さる指導霊と対話致します。今回は妙齢のご婦人です。
これまでの人生で、私が知り得た情報とは、少しばかり違っておりました。
幽界見聞録、もしくは幻想小説としてお読み頂けましたなら、とても嬉しく思います。
では早速──
☆☆☆
『高校生の頃、源氏物語を読んだの。
テストに備えて注釈書を買ったら面白くて、現代語訳だけ読み飛ばしたわけ。
テストの点は悲惨だったなぁ。
でも不思議だよ。
千年を経た男と女の恋愛模様が、心震わせるばかりに迫ってくるんだもん』
☆☆☆
(そらもう、旦那はんかて同じように、心通わせていらしたからどすわ。
長い長い過去世で、何度も何度も生まれ変わらはって、くっついたり離れたり。
物語を読むうちに、そないな記憶がふいっと蘇ったんちゃいますか)
☆☆☆
『へえ、そうなんだ。
過去世の記憶だったのか──
言われてみればそうかもしれない。
そもそも、男と女が出逢うのって、過去世が関わっているんだろうね』
☆☆☆
(うふふ。
出逢いは必然。過去世の契りどす。初めて逢うた相手とちゃいますねん。
生まれて初めて逢うたはずやのに、なぜか懐かしい、そないなことあれへんどした?)
☆☆☆
『あるある。なるほど……ミドリとの出逢い。確かにそんな思いが浮かんだよ。
あるいはそう──
見知らぬ人とすれ違う。一瞬で目が合って、なぜか懐かしく感じられたりとか』
☆☆☆
(うふふ。袖すり合うも多生の縁。
旦那はんは、その一瞬で交おうてはる。
体がすれ違うても、心は深いところで絡まり合うて……ああ。じんわり来ますや)
☆☆☆
『マジか。参ったね。
だとしたら、迂闊に妄想もできねえ。いや。ここは妄想こそが現実だったな。
あ。素朴な疑問だけど。
現実で何人かの女性と付き合いがあったら、幽界へ来た時はどうなるんだろ』
☆☆☆
(そらもう修羅場どすわ。
時間も空間もないんやから、みなはん一度に顕われよって、旦那はんの奪い合い──
うふふ。ウソですわ。
ご安心なさってよろしおす。同時にお付き合いできますよって。
男冥利に尽きるどす。嬉しおすやろ』
☆☆☆
『いや、オレは別にその……
やれやれ。隠したってしょうがないね。ここじゃみんなバレテーラだもんな。
誰とでも同時に付き合えるか。
時間と空間がないから?
分身の術だね』
☆☆☆
(こっちで分体いいますな。
振り返れば皆はん、生きとる間に沢山な数の異性と出逢うてはりますのや。
男と女の交わりだけやおまへん。
親子の情愛も……男はんやったら、嫁姑問題はなかなかに難問でっしゃろ)
☆☆☆
『たーしかに確かに。
起きてる間は無意識の中へ隠していたかも。浮上させないようにって抑えていたな。
ミドリへ偏ったら母さんに悪い。逆もある。どちらも幻想と言えば、それまでだけど』
☆☆☆
(ここなら心置きなく愛せます。
両立せえへん愛かて、何も制約あれへん。
解決でけへんことばかり、わざわざ創り出して味わう。それがお仕組みですよって。
すべて幻想。元を辿ればひとつ──
そない無粋なこと言わはるなら、すぐにでもこっちへ戻らなあかんなりますえ)
☆☆☆
『悩み苦しむために生まれてきたか。
自分など居ない。幻想に過ぎない。全ては愛という一つの心だから安らかに生きろ。
そんな言説に縋って逃げたくなる。
これって宗教だよ。誘惑だな。
でもそれじゃあ、この世に生まれてきた意味がないんだね。なるほど』
☆☆☆
(そうどすわ。
安らかに生きたいんやったら、ずっとここにおったらええんどす。
わざわざ肉体を魂に纏うて、現実界に生まれて行く必要なんてありまへん。
もしも悟り済ませたお方やったら、生まれた瞬間に即死どすわ)
☆☆☆
『ここへ帰る日を楽しみに待てそうだ』
(いややわ旦那はん。毎晩、戻っとるて)
『ああそうなのか。眠りは救いだね』
(よりよく眠るために、起きてるんどすわ)
☆☆☆
お読み頂きありがとうございます!
次回の私物語は、11月5日の午後3時公開予定です。
西遊記で木曜朝8時、イラストの朔川揺さんと創作談話お届け致します。
是非いらして下さい。
ではまた💚
ありがとうございます🎊