木を感じて森が見える
ぼくは木だよ。
地球を覆ってるの。
知らない人、多いけど。
『なんだって?』
(繋がってるもん)
『誰と誰が?』
(ぼく、他の木と)
教えてあげたらこの人、びっくりしちゃっているよ。やっぱり知らなかったんだね。
『マジか…… スゲえ』
(塾で教えないの?)
『出ねーよ、入試に』
(大切なことでしょ)
『……たーしかに確かに』
☆☆☆
こんにちは!
フジミドリです♡
新緑の候となりました。公園を歩きますと、深緑に囲まれて爽快気分の私です。
『あ。今度さ~木を主人公にしようかな』
「ええんやないの。わたしは写真撮るわ」
『木って地中で繋がるじゃん。他の木と』
「そうやね~このアングルええか。うん」
今日の私物語は木の視点です。木に成り切ると自然へ向かう理解が深まりました。
上手くお伝えできますか。
では、早速──
☆☆☆
(ぼくは地中に張った根から、土を介して交流するのさ。ああ、響いてくるよ)
『そうか。海の底だって地面だもんな。世界は一つに繋がってる。忘れていたぜ』
(地球の裏側で、大きな森に何が起こっているか、ぼくは今ここで感じるんだ)
『今ここでって……おいおい、ちょっと待ってくれよ。半日の時差があるんだぜ』
☆☆☆
地球を感じてごらん
意識は広がっていくよ
自分の体って思うの
時差があるかな
地球にとって
☆☆☆
『ゲッ。もしかして時間は……』
(キミがあると思ってるだけさ)
『うぅ。まてマテ待て、ウェイト』
(いいよ。ぼく、気が長いから)
『やっぱ時間はあるだろよ』
(そう。あると思えばね)
『は。なんだって?』
(ないと思えばないさ)
『うーん。GPTに訊いたら……』
(閉じこもって不自由だよ)
『データを超えられないAIか』
(答えは外にないものね)
☆☆☆
この人、考え込んじゃった。
しょうがないな。これまで、時間があるって信じ込んでいたんだ──
いくら頭を使って考えたって、答えは出てこないのに。残念な人だよなぁ。
頭脳はAIと同じ
データに縛られる
ぼくはデータを超えちゃう。大地を通して入ってくる。データになる前の波動だもん。
☆☆☆
『哲学者の気分だぜ。何がなんだかわかりゃしねえ。やれやれ。時間はあるのか……』
(自分で考えるから迷うんだ。大地が語る。陽は謳う。風も囁く。波音ゆらゆら。任せておけば自然にわかるさ)
『なるほど。悟りは脚下にあり。真理に囲まれて真理を探すバカなオレ……木を見て森が観えず。やれやれ』
(哲学って学ぶに哲すること。学ぶはマネ。大自然を真似ればいいの)
☆☆☆
難しい言葉を並べたり、奇妙な論理が続いたり、それでわかると信じてる。
真理は言葉で表せない。言葉を超えるから。論理で辿れない。飛躍するもん。
自然を真似ればいい
見える風景、聞こえた音
触れた物、感じる心
☆☆☆
『言葉を超える。深いね。なら言葉は無駄……いや、そうでもない。言葉に表さなけりゃ、伝わらないってあるじゃん』
(もちろんさ。けれど、言葉を超えた領域が感じられてからでいいんだ。でないと、中身のない言葉だけ、一人歩きするよ)
『あはは~参ったね、こりゃ。たーしかに確かに。言葉は葉っぱだぜ』
(ぼくを見ればわかる。枝につく葉。幹から生える枝。幹を支える根)
☆☆☆
ぼくは一本の木
大地を通して
すべての木と繋がる
一つはすべて
すべてが一つ
他の木を傷つけるなら
自分が傷つく
自分を傷つければ
他の木も傷つく
☆☆☆
『戦争やるバカに聞かせたいぜ』
(うん。人間は人間と闘ってきた)
『けど、やつらもオレと一つか』
(そうだね。繋がってるんだ)
『古代は仲良く暮らせたらしいな』
(今だって同じだけどね)
『オレらの中に息づいてる?』
(何もかも、今ここにあるんだ)
☆☆☆
ぼくはどこへも動かない
いつもここに立つ
動かないけれど
あそこにも向こうにも
ぼくはいるんだよ
そして何もしない
ただ受け入れるだけ
陽の光を浴びて
人が吐き出すと吸い込む
人の吸うものを吐き出す
切られても折られても
ぼくは大地に還るだけ
☆☆☆
『ついこの間、枯れてたのに』
(えへへ。そうだったね)
『桜はパッと咲き、サッと散る』
(うん。いつものことだよ)
『今やこんもり緑が豊かで』
(人間だって同じでしょ)
『オギャーと生まれ、溌溂と生き』
(いずれみんな、土に還るのさ)
☆☆☆
元の自分に
還るんだよ
☆☆☆
お読み頂き、ありがとうございます!
私物語シーズン3は残り3話となりました。次回5月28日午後3時です。西遊記の創作談話が今週の木曜お昼。
是非、いらして下さい♡