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貴方があたしを思う時
懐かしい気配がある。
久しぶりだった。
でも、普通に会話している。
『霊界、死後の世界。本やブログあるけど、微妙に違うじゃないの。どれが真実だ』
「あのね。同じ物も、角度が変われば違って見えるでしょ。正解なんてないのよ」
☆☆☆
こんにちは。フジミドリです。今日は、私とミドリの結婚記念日。39年前になります。
不思議です。今ここで結婚式の場所にいる。情景が鮮明に浮かびます。ただ、記憶の中にだけ在るのでしょうか。
ミドリを看取って、今年の夏で15年になります。以前、こちらに書きました☟
作家を夢み、挫折した私。ミドリの声が聴こえて、書けるようになりました。
☆☆☆
『あはは~なんかオレ、スピリチュアルの先生みたいになっちゃってさ。ご質問を頂いたりするんだけど。いいのかな』
「あら、いいんじゃない。塾の先生やってるくらいだしね。あなたって、昔っから理屈っぽくて、 説明が上手だったもの」
『あれ~あれれ~ああ言えばこう言う、口の減らないやつとか仰ってませんでした?』
「まぁ、何を仰るウサギさん。そんなこと言ってませんことよ。おーっほっほっほ」
☆☆☆
ちよっと言葉遊び、想像の産物、私物語としてお読み頂ければ嬉しく思います──
☆☆☆
『死後の世界がどうか。3次元にいると実感わかないわけよ。知らなくていいのかな』
「うーん。そこは微妙ね」
『前世の記憶なら曖昧でもいいよ。細かなことまで覚えていたら、混乱しちゃう』
「そうねぇ。ややこしくなるわ」
『けど、死後の世界があるって解れば、生き方は変わってくる。最重要事項だよ』
「たーしかに確かに」
☆☆☆
前世を知ることで癒される。トラウマは解消できた。そんな方法があっていい。
否定するのではない。ただ道術家は、詳しく知る必要がないと考えるのだ。
前世はあるとだけ、受け入れておけば済む。そのような理解でよいのだろう。
☆☆☆
「生まれる時って、赤ちゃんはみんな、泣くじゃない。わかってるのよ。とんでもない処に来ちゃったなって」
『あ。ホントだ。なんで、笑って生まれないんだろう。わかってんのか。死後の世界』
「でも、大人の常識で、封じられるわ。学校へ行けば、お勉強しなさいだもん」
『そっかぁ。死ぬ時って安らかな顔してる。どんな処へ向かうのか、想像つくよな』
☆☆☆
本来の自分を忘れてしまう。そして、生まれてくる。別の人として生き直すために。
すっかり忘れて、味わう人生もあるだろう。オレのように、思い出す霊止もいる。
色々な物語が混在している。
☆☆☆
『人生は決まってる。そう理解しても、辛いこと苦しいこと、次々と襲いかかって来た。マジ、何でだろうと思ったよ』
「わかるわ。あたしホント辛かった。でも、霊界に来ると、そういう記憶は消してしまえるから、大切なことしか残らないの」
『大切なことって理解だよね。法則がどういう仕組みになっているのか。科学や哲学じゃ説明できない領域を感じとるわけだ』
「あなたって、感じるの苦手だったわよね。デリカシーないし。あたしが霊界へ来て、ちょびっとはマシになったけど』
『スビバセン。お手数お掛け致しました』
☆☆☆
姉さん女房だった。ミドリは3月生まれで、オレが5月。2ヶ月違いで一つ上の学年。
今から思えば、突っ張って粋がった、器の小さい癇癪持ちの若造だった。支えられていたことがよくわかる。
☆☆☆
『あはは~デリカシーがない。何やってんだって恥ずかしいね。薄れてはきたけど』
「だからあたしも言えるのよ」
『俯瞰するというか。今のオレとは違うって感覚あるよ。他人を外から見る感じだね』
「そうなると楽チンでしょ」
☆☆☆
あの頃、こんな風に話せたら、どんなに愉快だったろう。なぜ、できなかったのか。
とはいえ、過去の自分を責める思いはない。その時々で、精一杯だった。
あの経験があって此処まで来た。この境地に立てた。越えなければならない壁だった。
今ならそう言える。このオレだから。渦中にある時は、思いに振り回された。
☆☆☆
『死後の世界って、幽界霊界神界に分かれている。そう理解してるんだけど』
『いいんじゃないかしら」
『その中も、階層というか、霊魂の波動で、明確に分かれていくと感じるんだ』
「全然オッケーよ」
☆☆☆
同じ波動の霊魂が集う世界。言葉など不要。お互い、在るだけで通じ合うのだ。
ただ心地よい。
それに比べて、この世はなんと、入り乱れていることか。軋轢があるのも当然だろう。
☆☆☆
「楽よぉ。楽過ぎちゃって、波動を上げる方法に気づけないの。何でもできるからね」
『食べたいだけ食べても太らない。お腹も壊さない。体ないからね。そんなのもありか』
「あたし、犬や猫と遊んで、美味しく食べて温泉浸かって、好きなだけ本を読んだわ」
『留まる霊魂もあるか。時間も空間もないからね。あっという間に千年経っちゃう』
☆☆☆
好きな趣味だけ、望む時に、気が済むまで。憂いもなく安心して。緩み切った暮らし。
悪くない。そう思う。
永遠に続くのか。
☆☆☆
「もう沢山って悟るまでよ。誰も文句言わないし。諭す人もないの」
『この世にある苦悩が、全て解消されるんだものな。浸り切っちゃいそうだよ』
「多いわね。そういう霊魂」
『でもやっぱ、オレはその先へ進みたい気がするよ。どうなるかわかんないけどさ』
☆☆☆
自然と口は動く。
粋がっているのかもしれない。
すると、穏やかな気配が流れてきた。
悪戯っぽく笑うような──
ミドリは黙っていた。
☆☆☆
『好きなことに浸るのが幽界、卒業すると霊界、さらに進んで神界。そんなとこかな』
「うん。それでいいわ」
『神界って、何もかもがヒトツだよね。そもそもの分離がないっていうかさ』
「そうねぇ。あたしもよくわからないけど、何もないって、詰まらないかしれないわ」
☆☆☆
映像が浮かぶ。螺旋に渦巻きつつ昇っていく右回りの流れ。スッと視点が変わる。
今度は左回りで下降していく。
右回りがいつの間にか左回り。上昇は下降と入れ替わる。立体的なメビウスの輪。
☆☆☆
『うーん。一つと思えば一つ。分かれると思えば分かれる。まさに自由自在か』
「そうよぉ。みーんな繋がってる。なのに、別々になる世界も創れちゃうの」
『3次元にいると、生きてる時と死んだ時の境界って厳格でしょ。死体も見たしさ』
「あぁ、確かに」
☆☆☆
思い出す。抱えるほどの木箱。骨壺の蓋を外す。独り暮らしの部屋。白い骨に見入る。伸ばす手は震えた──
☆☆☆
「そうね。雨が降ってるとするわ。曇り空。でも、雲の上は太陽が光り輝いてるの」
『なるほど。雨雲を見ても、輝く太陽が感じられるかって話か。いやいや、難しいぞ』
「うん。理屈でわかっても、実際は見えないから。聞くこともできないわ」
『感じるといっても、触れるわけはないし。推定するというか。もう信仰だよな』
☆☆☆
この会話は、オレが想像しているのか。それとも、ミドリの霊魂から響いてくる何かを、脳が言葉に変換するのか。
☆☆☆
「そう。感じる目も耳も鼻もないのよね。だって身体がないんだもの。テヘ」
『オレは道術家だからさ。触れずに相手を動かせる。これが中真感覚って体験あるけど』
「うーん。あたしにとっての道術は、動物との一体感や料理だったかしらね」
『あ。犬の躾トレーナーだったよ。飼い主が持て余してるのに、一瞬で言うこと聞かせていたもんな。料理も上手かった』
☆☆☆
好きな趣味や得意な技に熱中する時は、それぞれの道で、本来の自分を取り戻している。
心地よい、このままでよいと感ずれば、オレがオレである時なのだ。
☆☆☆
『ようやく今は少し楽になって。でも、キツかったなぁ。もう勘弁してくれって思った』
「あら、そんなの当たり前じゃない。霊魂は死ぬ前に、できるだけ理解を進めたいもん。心のことなんて考えてないわ」
『やれやれ。お手柔らかに頼むよ。でもさ、決まってるんだから、俎板の上の鯉。諦めてお任せした方がいいね』
「そうよ。決めたことだもの。そして何時だって、雨雲の遥か彼方で太陽は輝いてるわ」
☆☆☆
オレはこれでいい。
地球で、決まっている人生を淡々と済ます。こんな風に、次の世界も感じつつ。
☆☆
『死んだら無になるって思う人がいて、死んだ後も、ぼーっとしてるって聞いたけど』
「そう。そうなの。ちょっと不気味よ」
『それも自分で創るのか』
「無になるって思い込んでるものね」
『あのさ。お墓参りしてないよ』
「ありがと」
『言ったじゃない』
「うん。言った」
『あんな暗くて狭い処にいないわ』
「そうよ。絶対イヤだもん」
『他の人はいいけど、あなた行かないで』
「だって、長い間あそこにいるのよ」
『それも自分で創っちゃうんだ』
☆☆☆
墓を否定するわけもない。
どう捉えるのかは、それぞれの人生で決めた通り。賛同はしないが批判も浮かばない。
そのままでよいのだ。
☆☆☆
『オレたち、波乱万丈だった。刺激が強過ぎるかもなって、控え目に書いたけど』
「それでいいんじゃない。わかる人はわかるわよ。行間から滲み出るっていうか」
『今は、霞が掛かってる感じだね。ホント、前世の自分を観るようだな』
「あたしも同じだわ。あなたが思い出してくれる時、あたしは傍にいるの」
☆☆☆
オレが思い出す時、ミドリはいる。
ハッとした。証拠はない。証明も不要。誰かにわかって貰えなくて構わない。
思い出す時、傍にいる。
いてくれるのか。
それでいい。
☆☆☆
『あの後しばらく、本当に後悔したよ。自分でも驚嘆するくらい泣けた』
「あたしもビックリ」
『もっと優しくしていれば』
「あなたって、いつも遅いの」
『スビバセン』
「でも最期、一人で送ってくれたでしょ。心配いらないよ。安心して逝っていいからね。あなたにしたら上出来だわ」
『どうも。あのまま寝てる間に逝かれたら、オレが動けなくなったり事故ったり──後で想像して震えあがったものだよ』
☆☆☆
看取った夏の朝。
告別式は台風だった。
一瞬だけ、晴れる。
すべて映像。泡沫の夢。消えていく。
もう何処にも残ってないのだ。
あなたがあたしを思ってくれる時──
気配は薄らいできた。
寂しさが漂う。
☆☆☆
『夢で逢えるよね』
「もちろん」
『今夜、死ぬかもしれない』
「あはは~どうかしら」
『じゃあ、また』
「うん。バイビー」
☆☆☆
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☆☆☆
お読み頂き、ありがとうございます。
いかがでしたか。皆さまのお陰で、私は今、とても爽やかな心地でおります。
次回5月1日午後3時。
私の誕生日でございます。
ではまた💚
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