幽界で神を知る物語
『迷ってるんだよね、今のオレ』
ベッドの上で目を閉じたまま私は呟く。
(ふむ。幽界に遊ぶがよかろう)
守護の神霊が答えてくれる。今夜から私は、そのような時を過ごすことにしたのだ。
『ありがたいねえ。泣けるぜ』
(ならば、案内役を用意しよう)
目は閉じたまま心の目を凝らす。闇の先で、ぼんやり少女の姿が浮かんだ。
(そうね。妹みたいに見えるかしら)
『あはは~オレからすれば孫だぜ』
少女の姿がはっきりと見えてくる。黒髪は、くりっとした目の上で揃う。白のブラウスにピンクのスカート。悪戯っぽく笑い指さす。
(あら、お兄さんに見えるけど)
そう言われて私は、彼女が指さす自分の幽体へ意識を向ける。ヒヤッとした。
『なんだ、こりゃあ!』
若返っているではないか。そんなバカな。
オレは高齢者のはずだ──
☆☆☆
こんにちは!
フジミドリです♡
三か月のご無沙汰でございます。お達者で、いらっしゃいましたか。
今日から12月3日まで毎週日曜午後3時に私物語シーズン4を連載いたします。
シーズン4の主題は幽界見聞録です。
毎晩、眠りの中で守護の神霊に導かれ、私は幽界に遊びます。そこで得た理解をお伝えしようという試みです。
本当にあったのか空想の産物なのか。どちらでもありどちらでもない。で、私物語。
精神世界はスルーなら、幻想小説としてお読み頂ければ嬉しいご縁です。
では早速──
☆☆☆
『なんだ、こりゃあ!』
私はもう一度叫ぶ。もしかしたら、肉体の声に出てしまったかもしれない。
今は、現実界と幽界の間である次現界という領域にいるのだ。
(やあねえ、そんな驚かないでよ)
『いや、だって、これって、その……』
(幽界に来れば誰だって若返るわ)
『え~マジ、そうなの?』
☆☆☆
日焼けした筋肉質の腕。白いTシャツの下で腹は引き締まり、青いブルージーンを履いた足腰もしゃんとしている。
思い出す。
高校の水泳部で、毎日何千メートルも泳いでいた頃のオレ──間違いない。
(幽界へ来るとね、人生の中で一番元気だった頃に戻るのよ、お兄さん)
『ひゃっほ~力が満ち溢れてくるぜ』
(老いるって現象は、脳が映し出す幻想に過ぎないの。どこも痛くないでしょ)
『おお~おお~おお~』
☆☆☆
すっかり忘れていた感覚だ。
もちろん私にも元気だった頃はある。
ただ──
途切れない日々の暮らし、ゆるやかに老いていく中、思い出すことすらなかった。
17歳に戻ったら、このところ鬱屈として抱えていた悩みや迷いは消え去ってしまう。
全て健やかさの欠如だったか。
☆☆☆
『ワクワクしてくるぜ。足取り軽く弾けそうだよ。こんな風に戻れるんなら、さっさと死んじまっていいかもしれない』
(やあねえ、何言ってるの。毎晩、眠って戻ってるじゃない。覚えてないだけよ)
『うへえ。そいつは知らなかったぞ』
(起きてる間は仮の姿なんだわ)
『うーん。明日から生き方、変わりそう』
(どんなに体が痛んでも、どれほど心がツラくたって、本当のあなたはいつも元気よ)
☆☆☆
ああそうか、そうだったのか。
こっちのオレが本当なんだ。いつだって元気で若い。何でもできる。自由自在だ。
神といっていいかもしれない──
おいおい、待てよ。
そもそも神ってなんだ?
☆☆☆
(申し示す存在よ。漢字の通りだわ)
『GODじゃないってのはわかるぜ』
(あれは人格神。幽界の存在ね)
『逆さにすればDOGだもんな』
(言う通りになさい。そうすれば守ってあげる。でないと罰を与えるから……GODなら言いそうでしょ)
『横暴教師。毒親かよ。腐れ上司だな』
(神は申し示すだけ。自由にどうぞ)
『あ。わかるぞ。元気の素だ!』
(えぇそうよ。神は健やかさだわ。あたしらだって神が創り出したの。分け御霊ね)
『分け御霊かあ。現代人は知らねえ言葉だよな。オレだってすっかり忘れていたぜ』
☆☆☆
神とは宇宙を司る大自然の法則。
自然──自ずからそうであること。
本来のあり方。
忘れていた。私は神なる法則の分け御霊なのだ。大自然の一部だった。
説明は不要。証明もいらない。ただそうである。生まれる前から、初めからそうなのだ。
今ようやく思い出せた。
☆☆☆
『生きる気力が湧いてきたぜ』
(ふふふ。それならよかったわ)
『本当のオレは神だ。自由自在さ』
(もう忘れちゃダメよ。思い出してね)
『起きてる間は映画でも観るように、のんびり構えていられそうだぜ。ラクだよな』
(知らない人が多いけれど。仕方ないわね。まだ時期が来てないんだから)
『あはは~こっそりだな』
(そうよ。密かにうふふね)
☆☆☆
☆☆☆
お読み頂き、ありがとうございます!
次回の私物語が9月24日午後3時です。
別アカ西遊記では、イラストの朔川揺さんと創作談話お届け致します。今回は大変だったのです、色々と……
21日木曜朝8時公開予定です。
是非いらして下さい♡
ではまた💚
この記事が参加している募集
ありがとうございます🎊