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川田祥世
2020年8月22日 21:35
降り注ぐようなセミの声を、湯立つような空気の中で聞いていたからだろう。ふと、自分が何年生きてんだかわからない感覚に陥った。まるで、大阪のおばあちゃんの家に向かう路地で、麦わら帽子をかぶりながら自分の長い影を眺めていた、幼い私のような、まるで、夏休みの中学校の校庭で、自分の流れる汗が乾いた地面に落ちていくのを感じた、多感な私のような、まるで、初めての一人暮らしの古ぼけたアパートで、窓を開