童謡がうまく思いつかない時【エッセイ】
赤ん坊の娘をあやしている時、よく童謡を歌います。
『森のくまさん』と『線路は続くよどこまでも』が、どうやら娘のお気に入りのようで、ケラケラとよく笑ってくれます。
アメリカ民謡が好みとは、なかなか気が合う娘です。
ぼくもいい年なので、子守のためとはいえ童謡をアカペラで歌うのは、気恥ずかしさがありました。(奥さんが隣りにいると、さらにやりにくかった)
なので、最初は鼻歌にしてごまかしていたのですが、慣れとは恐ろしいもので、いまはお腹から声を出して、元気よく『森のくまさん』を歌っています。
たまに歌詞の順番をちょっと変えて、1番→4番→5番→2番→3番にして、くまさんをストーカーっぽく演出して一人で面白がっています。
そういう問題のある父親です。
もちろん2曲だけでは足りないので、他の曲をメドレーにして続けます。
でも僕だけかもしれませんが、童謡っていざというときに、あまり選曲が頭に浮かんでこないですね。
言われれば、ああ、あったあった!と手を叩くんですが、うまく脳内検索に引っかかってこないんです。
トップクラスにメジャーであろう『おもちゃのチャチャチャ』を思いつくまで、ぼくは3ヶ月かかりました。話を盛っているわけではなく、本当に出てこなかったんです。
自分が子どもの頃、あんなに『ポンキッキ』や『お母さんといっしょ』を見ていたのに。歌のお兄さんとお姉さんに、何だか申し訳ないです。
童謡が思いつかないと、苦し紛れに変わった曲を歌い始めます。
恐らく深層意識のどこかに引っかかっていたものが、慌てたスイッチの切り替えによって、ポンと飛び出してくるのです。
例えばこうったもの。
てんてててん↓ てんてててん てんてててん↑ てんてててん↑↑
文章で書いてもなんのこっちゃ分からないと思いますが、これは初代ファミスタ*1で得点圏にランナーが出たときのBGMです。
分かる世代の人だけに分かってもらえれば、それで大丈夫です。
初代ファミスタを最後にやったのは、おそらく小学2年か3年の時だと思います。しかもぼくはソフトを持っていなかったので、友達の家でやっていただけのはず。
そんなものがよくもまあ出てきたなと、逆に自分を褒めてしまいました。
娘はまったくの無反応でしたが、奥さんには「なんだか野球の応援みたいやな」とインコースすれすれの鋭い指摘を受けました。
今はYouTube Kidsという子ども向けの動画だけをセレクトしてくれるアプリがあるのですね。
そこで童謡を流すこともできるので、便利に使ってはいるのですが、今日、動画を流していない時でも、娘が床に転がっているスマホをじっと見つめていて、ちょっとゾッとしてしまいました。
偶然見ていただけとは思うんです。うん。でも動画はほどほどがいいかもなぁと思った次第です。
これからもアカペラで頑張ろうと思います。
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*1 任天堂ファミリーコンピュータ用の野球ゲーム『ファミリースタジアム』の略称。ウィキペディアによれば累計シリーズは50本以上、シリーズ累計販売本数は1,500万本以上とのこと。
外野から二塁に送球しようとして、十字キーの下を押しながら投げてしまい、本塁に送球してしまうというミスを呆れるほどやった。