【小説】告白から描いた絵
「皆いなくなったのですか?」思わず聞き返してみる、亡くなったという言葉が不穏で使えなかった。
「ええ、亡くなったか、病院に入ったのですよ、全員ね。」冷たい言葉が温かい声で聞こえてくる。
「味を濃くしただけで亡くなったんですか?」驚きの余り自分の声が上ずっているのが解る。
「それだけだと思いますか?それだけだと直ぐには変わらないんですよ。」歌うような嬉し気な声が響く。
「それだけでは無いと云う事なのですか?」危険な場所に居る感覚が押し寄せてきて、ごくりと唾を飲み込む。
ここで何を出されても、食べてはいけない、そう心に誓っていた。
「警戒しなくても大丈夫ですよ、私は恨みが無い人間には何もしません、夫も優しかったから何もしなかったし、お手伝いさんにも何もしなかった。」そう言ってまた続けた。
「親や姉弟に虐げられてきた私が復讐するのが理にかなっているでしょ。」茶目っ気の有る声が広がる。
「味を濃くして、少しづつ濃い味の物を与えて行って、外で食べるのは危険だと、彼らが考える様に仕向けたのです。」
「考える様に仕向けるって、そんなの出来ないんじゃないですか?」簡単に人間は人の言葉に従ったりしない筈だ。
「マインドコントロールって知っていますか?私は彼らの思想をコントロールしたんです、テレビもラジオもネットにも触れさせず、携帯もお金が無いと言って取り上げて、彼らが私の情報のみを頼る様にしたんです。」歌のような声が続く。
「面白くないですか、ずっとコントロールされる側だった人間が、今度はコントロールするんですよ。」嬉しそうに話をしている、顔は般若かそれとも菩薩か。
「でも外に出たら情報は手に入りますよね、如何したんですか、外に出て仕事や遊びをするって誰も言わなかったんですか?」マインドコントロールなんて今の時代したいと思っても出来ない筈だ。
「彼らには借金が有って、外に出ると借金取りに捕まると言っていたんですよ、最初はね、その後家が居心地が良いとなると、何にも云わなく位なりました。」本当にそうだろうか、楽しみが無くても人は狂う。
「情報は入れなかったんですが、私が見せても良いと思った映画や本は見せるようにしたんです、楽しみのための部屋を作ってね。」
「それで納得する物なんですか?外に行きたいって言いそうだ、だってそれまで自由に外に居たんでしょ。」
「外は怖いと最初に植え付けていましたからね、出ていきたがらなくなりましたよ、そこで楽しみが有ればいいのですから。」
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