【小説】SNSの悪夢
朝が早い生活を続けていたので、当然夜は早くなる、向かいのマンションを夜中まで見るのは止めて、朝の早い時間に起きて見張った方が良い。
そう考えて寝てしまった、あの家族は何時まで起きていて、何時に寝るんだ、他人事ながら眠れないなと考えながら。
明日の朝も早いんなら寝るべきだ、子供は学校があるだろうし、仕事も有るだろう。
自分だったら、先ずは自分の為に時間を取る、寝不足じゃ頭が働かないじゃ無いか。
そう考えながら、その日は寝てしまった、思った以上に疲れていたようだった。
人間は普段と違う生活をすると疲れが大きい、それも少しすると慣れるのだから不思議なものだ、寝ながら考えていた。
朝は得意だ、早い時間に起きるのは嫌いじゃない、いつ何が有っても早起きだ。
外がまだ朝を始めていない位の時間は、ゆっくりと自分の考えを見つめ直す時間だった。
その時間に起きて、外の空気を吸い込んで、ゆったりとした感覚を取り戻す。
問題が起きる前は、朝にランニングしてから彼女と一緒に朝食を食べた、そんな風に体と心を整えれば、これからはもっと仕事で認められる、好きな仕事が出来ると思っていた。
自分が好きで選んだ仕事でも、納得がいかない事も多かった、それでもこれをこなせば次には思ったような仕事が来る、そう思って仕事をしていた。
そんな物は理想であって、現実では無かった、ほんの一寸した問題で人間は全てを失ってしまうんだ。
それでも、食べなければならない、コンビニまで走って帰って来るか、こんな時にも運動を考えている自分に嫌気がさしている。
何故走るんだろう、別に走った所で良い事が有る訳では無い、苛ついた気持ちが落ち着くわけでは無い。
人は自分でも理解できないで行動している、自分を認識するのは本当の意味では出来やしないんだ。
ハアハア、帰って来て直ぐに窓を見ながら弁当を食べる、弁当もバランスよく栄養素が入って居るだろうと買ってくる。
『もう、考えなくても良い、自分の好きにすればいいんだ。』心が呟く、それがある種の敗北感を感じさせた。
目の前のマンションでは人が動くのが見える、普通に会社員をしていれば動き出す時間なのだ。
『あの女の家から娘が出てきた。』食べる手を止める事無く見つめ続ける。
その後見続けていると、男が出てきた、これが夫なのかも知れない、慌ててカメラをそちらに向ける。
何枚か写真は撮れた、今度はあの男を見張ってみよう、夫の方に何か問題が有るかも知れない。