【小説】夢叶えます
久しぶりに、恋をしている高校生のような気持ちになって、彼女の姿を思い浮かべてみる。
それが朝の日課になっていった、ベットの中で彼女を考えるのは、彼女には不本意か解らないが、性的な気持ちも高揚させた。
休みがなかなか取れない中、自身でも彼女に近づこうとはした、それが尽く失敗に終わって、これはあの店に行くしかない、気持ちが決まった。
休日の朝はゆっくり寝ていたいと思うものだが、あの店に行く日は違う、気が急いて4時になると目が覚める、もう少し寝ていようとベットに張り付いても、5時にはベットの中に潜ってはいられない。
家犬みたいに家の中をぐるぐると回って、今日の予定を立ててみる。
先ず、朝ご飯だ、副社長になってからちょっとした余裕が出来た、時間じゃ無くお金の方だ、この頃では時間はお金で買えるを、満喫していた。
朝は毎日好きな喫茶店に行って、モーニングを楽しむ余裕がある、今日は久しぶりの休日だから、ホテルのモーニングもいいな、考えると口の中に唾液が湧き出して、食欲の魔人が頭を支配していた。
ホテルに行って朝ご飯を食べて、それからあの店にゆく、頭の中で自分の今日の予定を立てる習慣が出来て、休みもそれに囚われていた。
それにしても、あの店は何時から始まるんだろう?
開店の時間が解らないので、ホテルの朝食を終えたら、新聞でも読んでゆっくりしようと心に決めた。
ホテルのカフェに入ると「いらっしゃいませ」エプロンをした女性が席に案内してくれる。
モーニングを頼みと「畏まりました。」と頭を下げる。
前にあの店に行った時のことを考えると、まるで違ったってしまったんだな、と感じながらのんびりと食事を楽しんだ。
10時なら開店しているだろう、その時間には見せに着く様に、調整しながら席を立つ。
「ありがとう。」と声を掛けると、「ありがとうございます、またおいで下さい。」声が投げ返された。
”夢叶えます”はまだあった。
前に来たときよりも胸をドキドキさせている、歯医者を知らない子供が、初めて行った時は泣かないけど、二回目は泣き叫ぶのが良く分かる、二回目は緊張するものだ。
自分では何もしなくても。
「こんにちは。」ドアを開けながら、声を出して中を覗く。
「いらっしゃいませ。」あの鈴の音が鳴った、正確には声が響いた、店の中の至る所に。
「自分の事は覚えていますか?」馬鹿みたいな音が店に浮かぶ。
「はい、存じております、今日は何の夢をご所望ですか。」ちょっと低い音で鈴の音が答えた。