【小説】恋の幻想
「私が結婚するのが良いのかどうかが解らなくなってきた。」忍が頭を抱えている。
「問題は無いんだ、裕子はもう婚約者じゃ無いからな。」俺が言って、納得させようとする。
「私は納得しているわけじゃ無いけど、他の人よりは忍ちゃんが良い、だって今の女の子って嫌な子が多いんだもん。」裕子が自分が正しいと言う様に主張する。
「でも嫌なんですよね裕子さん、良平さんともう一度婚約したいんですか?」忍の声が部屋に響く。
「一度婚約破棄して、もう一度何て考えてないよ、でも良平が居なくなったら、私何処に行けばいいの?」途方に暮れた顔に成っている。
「何処にでも行けばいいじゃないか。」こちらも呆れた顔に成っているだろう。
「冷たーい、付き合い長いんだからそんなこと言わないでよ。」雰囲気を変える声を出している。
その時だ、ドンドンドンと扉を叩く音がする、「おーい開けろ、居るのは解っているんだぞ。」忍が震えている。
きっとその声は子供の頃の家に置いてきた声だったのだろう、さっきよりも蒼い顔に成っている。
「誰なんだろう?開けてみるか。」と言って玄関に向かう、どんな人間でも対応して見ないと解らない。
「ちょっと待って、用意するから。」裕子が部屋から何かを持ちだして居る。
「危険な事はするなよ、何かあったら警察を呼べばいいからな。」忍はその過去からの声に怯えている。
「あっちが危険だったら如何するの、こっちも武器持った方が良い。」裕子はカッターを持って居る。
その間にも「開けろやこら、忍が居るのは解ってるんだぞ、誘拐で警察呼ぶぞ。」と大声が聞こえる。
「2人はなるべくこっちに居て、俺が話してくる、何をするか解らないから、逃げる用意もしておいて。」それだけ囁くと玄関を開けに向かった。
ドアを開けると、男が立っている、自分よりは随分若い、忍と2から3位の年齢差か。
「人の家に何ですか、失礼じゃないですか。」勤めて冷静に声を掛けてやる。
「ここに忍って女が居るだろ、俺はあいつの兄貴なんだよ、家出して探してたらここに居るって言うじゃないか、本人を出せよ。」怒り狂っているらしい。
「居ても会わせませんよ、忍は成人だから家出しても自由だし、問題は無いんです、帰ってください。」こちらは冷静に対処しよう。
「誘拐犯って警察に行っても良いんだぞ、良いのか?」脅しを止めそうにない。
「誘拐じゃ無いって証明できますよ、そちらが誘拐じゃ無いって証明できるんですか。」