【小説】恋の幻想
良平と入籍するとなったので、それに向けて大急ぎで準備に入った、写真だけは撮って置こうと、休みにドレスで写真を撮って貰ったり、部屋を二人で住むために整えたり、入籍だけでもすべきことは有った。
全てが終わって、明日は入籍で良平と一緒に暮らし始めると考えていた日に、裕子さんが家に来た。
何時も乍ら、いきなり家に来るので、予想はしていても少しは驚きが有って、いらっしゃいとしか言えない。
「前からの約束だから、忍ちゃんと一緒に過ごすからね、良平は出て行ってね。」ニコニコ笑いながら指示を出す。
何だかいつもよりも楽しそう、自分の元婚約者が結婚って本当なら嫌なんじゃ無いのかな。
「虐めたりしないだろうな、忍があんな人が来る家は嫌だと言ったら、俺が大変なんだからな。」良平が返す、来ることは前提なんだな、そう思って顔を見る。
言いながらも良平は嬉しそうだ、裕子さんが来てくれるのが楽しいのかな、こちらは心配になってしまう。
「そんな事私がすると思う?大丈夫に決まってるでしょ、ねえ忍ちゃん。」こちらを見ながら裕子さんが言う。
頭の中では有り得ない想像が渦巻く、カッターを持った裕子さんが衝撃過ぎて離れていかないのだ。
「裕子さんは良い人だから、いじわるはしませんよ。」と私も返しておく。
ここに来てから、裕子さんは私が良くなるように動いてくれて、悪い感じを持った時間は無い、だから頭の中の想像は置いておく。
「そうかな、こいつ底意地が悪い所が在るから。」心配そうにしてくれているが、裕子さんに限ってそれは無い。
それよりも、聞きたいのは何故婚約を破棄したのか、破棄したのにここに来るのは如何してかって話だ。
「今日は好きなだけ良平の悪口を言いましょ、1日位寝なくても良いでしょ、話したいこと一杯あるわ。」と嬉しげだ。
「そうですね、私もいつもは言えない悪口を言っちゃいます、2人で今日は結婚前パーティーですよね。」裕子さんと合わせる様に言葉がスラスラと出てくる。
「勘弁してくれよー、これから結婚するのに悪口かよ、忍はまだしも裕子に言われるのはやだよ。」良平は困った顔をしている。
「女同士で話したいことは満載よ、良平も結婚前のパーティーしたらいいんじゃない。」と裕子さんが嬉し気に返す。
「俺も飲んでくるけどね、羽目を外すとか嫌な方だから、帰ってこようと思ってたんだよな。」と良平。
「二人で話をするんだから、今日は何処かに泊まってきてよ。」そう裕子さんが返した。