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クーラー壊れる。

クーラーが壊れた。

本当の名前はエアコンいやエアーコンディショナーだった筈である。

クーラーってやつは今では優しい彼女の様に寄り添ってくれているが、昔は無かった筈である。

だから我慢しようとすれば我慢できるとは思うのだが、人間長年寄り添った彼女と別れるとなると、とんでもない苦役を強いられる。

今は家に猫がいるので尚更である。

つらつら考えてみるに、去年も同じ頃この彼女は壊れた。

その時に直してくれたメーカーの修繕作業のお兄さんがこう言った。

「良かったですね、保証期間が切れる前でもう直ぐ保証期間が切れる筈ですから。」

その言葉はしかと頭に刻まれていたので、こわれた冷房が効かなくなったことが判明した時、『これは買い時』私はそう思った。

猫の為にも必要だと皆で話し合った結果、新しい彼女を買いに行くことにした。

長女は選択は任せると言って、私と次女に丸投げ、三女はたまたま美容院に行って居たので、後で合流の運びとなった。

買うと言っても色々ある、今の彼女はとんでもなく多彩で空気清浄機やら、湿度の調整やら、果てはお掃除の機能までついている。

私はルンルンで(基本家電は新し物好き)あれやこれや物色して店員のお兄さんにこれが欲しいとか、こんなのがいいとか話してついでに値段交渉もして随分と安くしてくれることも確認、次女とも話をしながら考えていた。

何故考えるかと言うと、お金である。

我が家には皆が集めたお金があったのだがそれ程残っていない。

六畳二間とキッチンと言う広大なサハラ砂漠のような空間を冷やすにはそれ相応の大きさのがっしりした彼女がいる。

其処に三女が合流した。

美容院で可愛くなった三女に説明するが、私は気持ちが先走っていて、どうにも上手く説明が出来ない。

次女は生まれてこの方説明上手なので、任せることにした。

「急にこの値段のもの買うと言っても僕はすぐには納得できないよ。」と三女

「今買わんと、遅くなったらリモートの自分も大変やし、家には猫がいる。」と私。

猫がいるで殆どの事は解決すると思っていたが、話し合いは解決の糸口も見付らないままいったん保留にして昼ごはんに行った。

私としては、自分の借金になってもいいからすぐ買いたかったのだが、娘がネットでリサーチを掛けて(三女はSEである。)物は良いお金をどうするかとなった。

「エアコン代くらい僕のお金で払ったるよ。」三女。

おおー太っ腹である、神様、仏様、三女様と言う訳で、いざ出陣、ではなくいざ家電を買いに。


先程のお兄さんを見つけ、買う事になった旨伝えると、破顔になり、ではコチラでと案内される。

お金を払うのは三女一人なのに我々3人の椅子を用意して「お座り下さい。」勧めてくれる。

優しさ溢れる対応にコチラが恐縮してしまった。

クーラーといえば忘れられない思い出がある。

丁度三女が生まれて一ヶ月位たった頃である。

家族6人で暮らしていた家のクーラーが壊れた。

三女はそれまで羊水の中でぬくぬくと暮らし、生まれ出てからは病院で空調の良い環境で居たので、家に帰って直ぐ地獄を感じたのだろう。

泣くは泣くは、オッパイを飲む以外はこの世は地獄とばかり泣き続けた。

抱いておっぱいを吸わす、下ろすとすぐ泣く、その繰り返し、大きい蛭が吸う如く、吸っては下ろす、吸っては下ろすの繰り返し、娘も人間としての最初の試練に泣いても泣ききれなかったのではないかと思う。

時はお盆、何処でも休み!

親戚にお願いして高いエアコンとざっぱな工事を受け入れヤット着けてもらった記憶がある。

その三女がクーラーを買ってくれるのだ。

多分赤ちゃんの時の地獄を覚えていたのだ。

そんな訳で現在我が家はエヤコン待ち中である。

早く来い来い。

暑いの嫌い。

ちょっとの辛抱。

大きな期待。

楽しみな毎日である。





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