【小説】恋の幻想
奥さんがいたんだ、だからここに連れてきたのね、おじさんが家においでなんて怪しすぎるもん。
「ごめんなさい、奥様には迷惑ですよね。」謝らないと問題になるかも、そう思って直ぐに謝る。
そう言えば誰かが、何もしていないのに謝るのはいけない、って言っていたっけ、でもこの場合は謝るべきだよね、責任持てないし。
「これは奥様じゃないんだよ、昔婚約していた女、勝手に婚約破棄しただから、幻想だと思って良いよ。」とおじさんが説明してくれる。
幻想ってなんだ?一つ目の疑問が湧く。
ここに居る人は何だろう?二つ目の疑問だ。
それよりも奥さんじゃ無いのに家で待ってるの?こうなるともう理解の範疇を超えている。
ちょっと怖いんですけど、私には関係ないので家に入れて貰って、話をしよう。
「止めてよ、幻想なんかじゃないんだから。」奥様と思っていた女性が喚く。
そうですよね、ちゃんと存在してドア開けているのだから。
「まあ、居るとは思っていたから連れてきたんだけどね、独り身の男の所に女の子に入ってって言えないからね。」援助交際か何かしろと言われたら、どうしようと思っていた。
このおじさんは女性が居ると思ってって、私を連れてきたみたい、いい人なんだな。
女性が私を見て濡れてると言って騒ぎ出した、ずぶ濡れにはなっていない、こんなのよく有るから大丈夫、と言ってもお風呂に入って温まりなさいって、結構世話焼きなんだな。
でも服を持って居ない考え込んでいると、服が無いって話になって、服を貸して貰えることになった。
何処かで買えばいいと思っていたから、何も持ってこなかった、こんな事態を想定してなかったしね。
女性のワンピースって気を遣うから嫌だな、たぶん男性のは大きすぎるけど、そう考えながら聞いている。
相談して男性のTシャツとジャージを貸してくれるみたい、優しいなでも人に服を貸すのは嫌だろうな。
「すみません、ご迷惑ですよね。」ここに来て、こればかり口に出しているな。
「今更でしょ、そうだお風呂に入る、おっさんが見ない様に見張っててあげるから。」見るなんて思ってないけど。
「ありがとうございます。」行く当てが無かったから本当にありがたい、久しぶりでゆっくりお風呂に入れるのだ。
おっさんは余計だって言っていて、そんな会話が安心させてくれる、他人の家で寛げるなんてね、皮肉を感じている。
家に居る時には、お風呂に誰かが入って来るのが怖くて、ゆっくりしていられなかった。
ここに来れてよかった、明日の事は解らないけど、それは明日考えよう。