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【小説】恋の幻想
「めんどくさいんだよな親って、話始めると聞いてくれないからな。」駄々っ子だ。
私とは真逆の生活をしてきたんだと解る、自分が言えば聞いて貰えるのが習慣に成っているのだ。
話をしている時点で幸せなんだと、この人は思ったりもしないんだ、自分の境遇と違い過ぎて、笑ってしまいそうになる。
「遠くに学校に行くのは良いけど、私と一緒に住むのは駄目でしょ、私もそんなの望んでないし。」この人の気持ちが解らない。
一緒に暮らすって?親のお金で?学校に行きながら?何度も頭に疑問が過っている。
「エ~、俺の事好きに為ってくれたんじゃ無かったの~、好きなら一緒に居たいでしょ。」何処までもお気楽で笑ってしまいそうになる。
「好きとか言っても生活は違うでしょ、親としたら学費出すんだから。」当たり前の事を言ってみる。
私だったら有難く親の進める学校に行くのにな、学費も生活費も出して貰えるのだから。
「親みたいな話し方するのな、若い女の子がそんなんじゃババ臭いよ。」親や兄から離れたいと思って調べていたから、いつの間にか人よりも老成していたのかも知れない。
「好きくらいで直ぐに暮らしたりしないんだよ、若い女の子は特にね。」そう言って於いた。
それでも不服そうにしている、子供で居るのを許してくれる親って良いんだろうな。
親が無関心だと、自分で何もかも判断しなければならない、それをこの人は知らないんだ。
ネグレクトと云うには子供では無かったかも知れないけど、親が興味を持って呉れないと、自分で判断するしかない。
自分で判断して、それが間違っていても誰も教えてはくれない、回り道でも自分で歩くしか無いのだ。
「じゃあ、一緒に何処かに行ってしまおう、それだったら良いでしょ、親とか関係なく。」この人お金持ってるのかな。
「大学に行くんじゃ無かったんですか?」聞き返す。
「駆け落ちって憧れてるんだよね、一緒に行かない?家に居たくないんじゃ無いの。」本当に来るのかは解らない、駆け落ちもしたいとは思っていない。
その時、誰かと一緒に出て行ってしまえば、探さないだろうと思った、親じゃなく兄が探しに来ても、この人が居れば簡単には連れ戻されない。
頭に浮かんだ構想が、私の次の言葉を紡いでいた、そう、この人を利用しよう。
「分かった、私も好きだから一緒に行こう、何処に行くつもり?」はっきりと言ってしまった。
「本当~、駆け落ちしてくれるの?嬉しいな、東京とか行けたら良いよね。」やはり考えていたのでは無かった。
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