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マッチングアプリで会った恋愛経験ゼロの看護師と、惜しくも縁を切った話【まったり体験談】

こんにちは、さちおです。

今回は、僕がマッチングアプリでお会いした看護師(以下アカリさんとします)とのお話をしたいと思います。

まったり体験談は、マッチングアプリに疲れてしまった人の酒の肴にしてもらったり、僕自身が自分の頑張りを供養する場です。

どうか1つのエンタメとしてお楽しみください。

それでは本編へ、どうぞ。



マッチングアプリで知り合ったアカリさんは、24歳の看護師。
僕は当時26歳。恋愛経験がないわけではないが、かといって恋愛上級者でもない。
そして年下との恋愛経験は皆無。

そんな僕にとって、アカリさんとの会話は新鮮で、
メッセージのやり取りを重ねるうちに、「あ、この人、素直でいい子だな」と素直に感じた。
「今日は夜勤明けで、仮眠取ったらすっきりしました!」
「最近、仕事で失敗しちゃって……でも先輩が励ましてくれて、また頑張ろうって思えました!」
そんな日常の報告が、なんだか心地よかったです。

ただ、アカリさんには一つ気になる点がありました。

──顔がはっきり分かる写真を載せていない。

アプリのプロフィールには、横顔や後ろ姿の写真ばかり。
俗に言う「雰囲気美人」というやつだ。

身バレ防止や体型隠しなどの理由から、マッチングアプリの女性ユーザーの間では決して珍しいことじゃない。

だがしかし、アカリさんは「いいね」をたくさんもらっている人気ユーザーだった。

正直、僕はちょっとだけ優越感を覚えた。
──あの人気ユーザーと、こうしてやり取りできている僕。

素顔がわからないのはこちらとしても少し不安はあるけれど、
やり取りをしていても感じが良かったので、僕はあまり気にせず会うことにしました。


けれど、そんな淡い期待は、初対面で見事に崩れることになります。



待ち合わせ場所に現れたアカリさんは、メッセージの印象通り、素直で穏やかそうな女性だった。

けれど……正直に言うと、僕のタイプではなかった。

思ってたのと違う。

いや、別にめちゃくちゃ悪いわけじゃない。
でも、正直、雰囲気美人の罠にハマった感はあった。
期待値を上げすぎたのかもしれない。
「優しそうで癒し系」なのだけど、僕が惹かれるタイプとは微妙に違っていた。

さらに、僕の目はある一点に釘付けになった。
──前髪の七三分けのところで、アホ毛の毛束がクロスしている。

とても美しく綺麗な「X字」を描いているのが、どうしても気になってしまう。
これ、言った方がいいのか?
いや、さすがに初対面で「アホ毛出てるよ」は失礼すぎる。

でも、目の前でXのアホ毛がぴょこぴょこと動くたび、僕の意識は話に集中できなくなっていった。

…それでも、せっかく会ったのだからランチを楽しもうと思い、カフェへと向かいました。


アカリさんは変わらず、素直で穏やかな雰囲気だった。
「マッチングアプリで会うの、初めてなんです」
そう言ったときのアカリさんは、少し緊張しながらも、どこか期待に満ちた表情をしていた。

ここではじめて聞かされたが、恋愛経験はゼロらしい。
コミュニケーションも普通に取れるから、てっきり経験があるものだとばかり思っていましたが、
なるほど、たしかにこれまで変な駆け引きはなく、やりとりも純粋だった。

「そっか、でも看護師さんって忙しいし、出会いの機会も少なそうだよね」
「そうなんです!だからアプリやってみたんですけど……最初に会うのがさちおさんでよかったです!」

そんな風に言われると、悪い気はしない。
でも、それ以上に僕の脳内では、アホ毛のX字を直してあげるべきか否か問題が支配していた。

僕は少し焦りながらも、会話を弾ませることに集中した。
アカリさんは看護師らしく、患者さんとのエピソードをたくさん話してくれた。
新人時代にミスして落ち込んだ話、
初めて担当した患者さんが退院するときに泣きそうになった話……

どれもアカリさんの誠実な人柄が伝わってくる。
「さちおさんって、話すの上手ですね!」と、僕の話にいちいち感心したり、笑顔を浮かべてくれたり。

ただ、そのたびに、僕の中の申し訳なさも少しずつ膨らんでいった。
──この人、多分僕のこと、ちょっといいなって思ってるよな。

僕の心に、「この人にとって僕は“特別な存在”になってしまうのでは?」という警鐘が鳴り響く。

アカリさんは本当に素直でいい人だ。
緊張しながらも、僕との時間を楽しんでくれているのが伝わってくる。

でも、僕は──
「タイプじゃない」と思ってしまっている。二度目はない。

どうしたものか……。



結局、ランチの後、僕は「また会おう」とは言わなかった。
アカリさんは素直でいい人だったし、話していても楽しかった。
でも、やっぱり決定的に「タイプではない」という事実は変わらない。

それでも、僕たちはしばらく気まぐれにメッセージのやり取りを続けた。
「今日は夜勤明けでヘトヘト〜。でもさちおさんと話したの、楽しかったな」
「またお話できたら嬉しいです!」
そんな素直な言葉が送られてくるたび、僕の中にはほんの少しの申し訳なさが募った。
だけど僕はもう「また会おう」とは言えなかった。
適当に「おつかれ! 夜勤大変だよね」とか、「そう言ってもらえて嬉しい!」と返しつつ、だんだん返信の間隔を空けるようになった。

ある日、アカリさんからこんなメッセージが届いた。
「さちおさんって、私にとって初めて会った人だから、なんだか特別な感じがします」

それを読んだ瞬間、僕はスマホを持つ手が止まった。
──ああ、やっぱり僕のこと、ちょっといいなって思ってるよな。

でも、僕はその気持ちには応えられない。
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、たぶん僕たちは合わない気がする」
そんな冷たい言葉を送ることはできなくて、僕はただ「そうなんだ、なんか嬉しいな」とだけ返した。

その後、僕の返信はさらに遅くなり、自然とフェードアウトした。


もし、アカリさんの見た目が僕のタイプだったら、僕はもっと積極的にアカリに向き合っていただろうか?
それとも、アカリさんの「素直すぎる性格」に、結局どこかで疲れてしまっただろうか?

どちらにせよ、アカリさんはきっと、次に出会う誰かにもっと愛されるはずだ。
僕はただ、アカリさんの最初の恋愛体験の「通過点」に過ぎなかったのかもしれない。


でも、アホ毛のX字だけは、一度くらい指摘してもよかったのかもしれない。


それでは、次の記事をお楽しみに。


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