やっほい。還暦カウントダウン/ポレポレな日常第15回
ライターになろうと思ったのは55歳の時だ。コロナで仕事がなくなったこと、愛犬がシニア期に入り在宅時間を増やしたくなっていたことなど、理由は複数ある。その理由のひとつがカウントダウンである。
新年のカウントダウンが好きだ。去りゆく年へのちょっとした切なさと、それを上回る新たな年への高揚感。そしてなにより、過ぎた日々の失敗や後悔をチャラにしてくれる優しさも。
緊急事態宣言によって仕事がまるっと無くなった時期、55歳という自分の年齢に気づいてテンションが爆上がりした。「還暦まで〜、5、4、3、2、1」と指を折り数えるのに、なんともキリの良い年齢ではないか。しかも今なら仕事もなけりゃ、人にも会えない。時間はあまっているからなんでもできる。やばい楽しい。なにをしよう。
還暦カウントダウンのテーマを考える。目標ではなくテーマというのが重要なポイントだ。5年もあると、目標を設定したところでどんどん変わっていくのは経験上わかっている。
私は目標に向けて努力する時、必要のない負荷をかけたり無理をしたりしてしまいがちだ。本当は手放してはいけないものや一番大切にしなければならないものを我慢することで、自分が頑張っているのだと錯覚してしまうのだ。
「目標を達成すれば、この努力が報われる」などと考え出したら、注意信号だ。今日という日は目標のための手段ではない。そもそも目標達成の日まで自分が健康でこの世にいるとも限らない。
だから目標ではなく自分が幸せになれるテーマを決める。そのテーマにそって考えていけば、どんな目標も手段も間違えない。
前回年齢カウントダウンをしたのは41歳の時だった。30歳を半分過ぎたころから、早く41歳になって「バカボンのパパと同い歳なんだ」と言いたかった。どんなハチャメチャな出来事も「これでいいのだ」と全肯定して突き進むバカボンのパパは、私の憧れの大人だった。
「これでいいのだ」と言える人生。いつ、どのタイミングで幕が降りても「これでいいのだ」と言える毎日。もちろん人生はそんな単純なものじゃない。だからこそ、「これでいいのだ」と思える時間を増やす選択をしていこうと思っていた。
還暦といえば、間違いなく人生の後半戦だ。これからは軽やかにいきたいと思い、カウントダウンのテーマは「やっほい」にした。「ひゃっほい」だとお調子者過ぎるし、「どすこい」だと頑張り過ぎだ。
55歳からカウントダウンをはじめて3年目。フリーランスの専業ライターとしてなんとか暮らせるところまできた。同時にできていないこと、できるようになりたいこと、やりたいこと、やりたくないことがクリアになってきている。もっともっと「やっほい」と言えそうな場所はどこだろう。「やっほい」と言いながらできる努力を楽しもう。
カウントダウンでいうと「3、2、1」はクライマックス。どんどん盛り上げていこうと思う。やっほい。