犬なんか飼わなきゃよかった【犬との暮らしvol.1】
昨日は愛犬の11歳の誕生日だった。
スヤスヤと無防備に眠る愛犬をみて、しみじみと思う。
あぁ、もう、本当に犬なんか飼わなきゃよかった。
犬を飼う前の我が家は、長期休みには海外旅行に出かけるのが定番だった。当時、仕事の関係で休みが合わなかった我々夫婦は、知らない国でゆっくりと一緒に過ごす時間をなによりも大切にしていた。
けれども愛犬が来て以来、一度も海外へは行っていない。
だって、こんなにも可愛く愛おしい生き物を家に残してまで行きたい国なんか、一体どこにあるというのだろう。
その代わり、今は愛犬と一緒に国内を旅する。長期休みはもちろん、週末やちょっとした連休にも。
愛犬は知らない場所が大好きだから、わずかな隙があればいろんな場所へ連れて行ってあげたいのだ。
休日にゆっくりと休むどころか、忙しいったらありゃしない。
犬を飼う前の私は、とても大好きな仕事をしていた。体調を崩して、一生続けたいと熱望するその仕事から泣く泣く離れた頃、愛犬は我が家へやってきた。
体調が復活した時、仕事仲間から連絡をもらった。
「どうしても、今回の仕事をあなたにやってほしい」
ずっと大切に取り組んできた仕事の復刻版で、愛する仕事に復帰できる夢のようなオファーだった。他にも多くのメンバーがいる中、声をかけてもらえたことに感動した。
けれども、その仕事はエンタメ業界の端っこにいるようなもので、朝も夜もないハードスケジュールが待っている。
仕事を受けたら、愛犬とはしばらく一緒にはいられない。
あぁ、もう、本当に犬なんか飼わなきゃよかった。
こんなにキラキラした目で見上げる愛おしい生き物と離れてまで、やりたい仕事なんてなにがあるというのだろう。
丁寧にお礼を言って断った。とても驚かれたけれど。
仕事だけじゃない。
犬が家にいるだけで不便なことばっかりだ。
家で待っていると思うと飲みにもいけないし、
たまに出かけても、なんとなくソワソワして急いで帰宅してしまう。
散歩に行くために朝4時に起きなきゃいけないし、
夜更かしだってできないし、
大好きだったフリース素材の服は抜け毛だらけになるから着られない。
あぁ、もう、本当に犬なんか飼わなきゃよかった。
大好きだった仕事の代わりに、自宅でできる仕事を探した。
せっかくだからワクワクするような仕事がいいな、自分になにができるかな。
こうして私は、想像もしていなかったライターの仕事をはじめた。
愛犬のために学んだ知識が、仕事に繋がることもあった。
同じ業界に長くいた私は、なんだか突然に世界が広がった気がしている。
愛犬がいなければ、見えなかった景色。
愛犬がいなければ、出会えなかった人たち。
愛犬がいなければ、経験できなかった出来事。
愛犬がいなければ、味わうことのなかった素晴らしい毎日。
順番通りにいくならば、愛犬はいつか先に旅立ってしまう。
覚悟して迎え入れたのに、想像するだけで胃のあたりがギュッとなる。
あぁ、もう、本当に犬なんか飼わなきゃよかった。
健康に気をつけて、愛犬を最後まで見取らなければ。
安心して旅立てるように元気でいなければ。
晩酌のビールの量も、食事の内容も気を遣って、私まで健康になったじゃないか。
ありがたい。
あぁ、もう、本当に犬なんか飼わなきゃよかった。
ずっとずっと、1日でも長く、こうやって文句を言わせてね。
長生きしてギネスに認定されようね。
そのために、できることならなんでもするよ。
あぁ、もう、本当に犬なんか飼わなきゃよかった。
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