起業家精神を育む教育:武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(EMC)の挑戦
アントレプレナーシップ教育の現場から学ぶ:「気づき」と「内省」の大切さ
教育の現場に携わる皆様にとって、「アントレプレナーシップ教育」という言葉は、ここ数年でますます重要性を増しているテーマではないでしょうか。
先日、ソフトバンクアカデミアさんから貴重な機会をいただき、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 学部長である伊藤羊一さんを訪問しました。その先進的な取り組みを間近で見学させていただく機会がありました。私自身が教育に携わる立場としても大きな刺激となりました。
このブログでは、その経験を共有するとともに、アントレプレナーシップ教育が持つ可能性や課題について考察したいと思います。
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(EMC)とは?
2021年4月に開設された武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(Entrepreneurship and Management Course:EMC)は、日本初の「アントレプレナーシップ」を冠した学部として注目されています。この学部は、「起業家精神」を育むことを目的とし、単なるビジネススキルの習得ではなく、学生一人ひとりが社会と自分を見つめ直し、新しい価値を生み出す力を身につける場です。
2024年時点で約240名の学生が在籍し、すでに17社の起業実績を持つなど、成果を挙げています。また、現役実業家が講師を務める実践的な授業や、学生の主体性を尊重したカリキュラムが特徴的です。
学びの核心は「気づき」と「内省」
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部で印象的だったのは、講師が一方的に教え込むのではなく、学生自身が「気づき」を得るプロセスを大切にしている点です。
アントレプレナーシップとは単なる「起業のスキル」を学ぶものではなく、社会を見つめ、自らの可能性を磨き、行動に移す力。
それを実現するためには、外から教えられるだけでは不十分であり、学生が主体的に考え、内省し、自分自身で課題を見出すことが不可欠です。
起業という手段を一つの選択肢として捉え、学生たちは自分の価値観やビジョンを掘り下げながら青春時代を過ごしています。これにより、彼らは「社会を見る目」が変わり、同時に自分自身の可能性を見つめ直す貴重な時間を得ているのです。このプロセスは、単なる学問や技能の習得を超えた、生涯にわたるかけがえのない学びとなるでしょう。
EMCアントレプレナーシップ教育の特徴
ここに記載している以外も沢山のEMCの魅力がありますが、特に私の心に残ったポイントをご紹介します。
1. 現役実業家が教える授業
学部では、現役の実業家が教師・講師として教壇に立っています。そのため、学生たちはリアルなビジネス経験に基づいた話を聞きながら、自らの将来像を描くことができます。教員の殆どが、自身の失敗談や成功体験を共有することで、学生に「リアルな起業の世界」を伝えています。
また、教員は授業だけでなく、ゼミや合宿などでも学生たちと積極的に交流しています。例えば、ある講師は自身の別荘に学生を招き、手作りのカレーを振る舞いながら人生相談を行っているそう。
このような距離感の近い関係性が、学生の自己成長を促しているのでしょうね。
2. 「誰から学ぶか」を重視する学生たち
「何を学ぶか」ではなく、「誰から学ぶか」を重視して学部を選ぶ学生が多いのも特徴です。これは、教育現場にとって非常に示唆に富むポイントではないでしょうか。
学生が教師や講師の人間性や実績に触れることで、単なる知識の伝達ではない深い学びが生まれるのです。
3. 抽象化・分析・言語化のトレーニング
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部では、抽象化・分析・言語化のスキルを徹底的に鍛える授業が行われています。このトレーニングにより、学生たちは自分の考えを明確にし、それを他者に効果的に伝える力を身につけています。このスキルは、起業家としてだけでなく、どのようなキャリアを選んでも大きな武器となるでしょう。
今回の訪問を通じて、教育にも関わっている者として大きな学びを得ました。それは
学生に「答え」を与えるのではなく、彼ら自身が「問い」を見つけられるようにすることの重要性
です。
アントレプレナーシップ教育の現場では、
「正解はない」という前提で学生たちが議論を重ねています。
この姿勢が、学生一人ひとりの主体性を引き出し、彼らが社会に出たときに直面する課題に対処する力を育てているのです。
また、起業という手段を学ぶことは、単に企業家を育てるだけでなく、学生たちが自分の人生に責任を持ち、主体的に歩む姿勢を醸成します。この点は、教育全般に共通する大切な視点ではないでしょうか。
教育の未来をともに創る
私自身も、これまでAIやデータ活用に特化した人材育成に携わり、テクノロジーを活用した未来の可能性を探求してきました。しかし、今回の訪問を通じて、教育の本質は「人を育てること」であり、そこに不可欠なのは「気づき」と「内省」を促すことだと再確認しました。
学生一人ひとりが自分自身を見つめ直し、社会との接点を見出せるような機会を提供することが大切ですね。そのためには、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部のような実践的で主体性を引き出す教育スタイルが、一つのモデルケースになると感じました。
これからも、教育を通じて未来を創る仲間とともに、よりよい学びの形を模索していきたいと思います。教育が未来の社会をつくる力を持っていることを信じて、共に前進しましょう!
お知らせ
このような貴重な視察機会もプログラムの1つとして提供してくださる、私も所属する、「ソフトバンクアカデミア」が現在第16期生を募集しています!
孫正義自身が校長となり、2010年に開校した「ソフトバンクアカデミア」。
ソフトバンクグループの後継者およびAI群戦略を担う事業家を発掘・育成することを目的に、さまざまなプログラムを通じ、約300名のソフトバンクアカデミア生が切磋琢磨し、共に学び合っています。
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