最近よく耳にするWellbeing(=ウェルビーイング)、知っていますか?
はじめに
Wellbeing(ウェルビーイング)という言葉を、職場の中でも耳にするようになってきました。一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
「具体的にWellbeingってどういう意味?」と問われると、答えるのが難しいですね。私自身も、「よりよい(=well)あり方(=being)?」と、ちょっと中途半端な回答しかできませんでした。
「どうすれば、Wellbeingが実現できますか?」と聞かれると、どうでしょう?ちょっと答えに苦しんでしまいます。
2022年の話にはなりますが、職場環境やリーダーシップについての市場調査を世界規模で行っているGallupが、年に一度開催しているGallup at work summitで、Wellbeingについてとても興味深く、かつすぐに始められるヒントについて紹介していました。というわけで、今回はWellbeingについて詳しくまとめてみました。みなさんのより良いWellbeing実現のヒントになればと思います。
Wellbeingとは?
サイト「IDEA FOR GOOD」によると、Wellbeingという言葉が初めて言及されたのは、1946年のWHO設立時の憲章の中の一節「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(well-being)」と言われています。
瞬発的な幸せのことではなく、持続的に幸せに満たされた状態のことをWellbeingと言います。そして、なにかひとつの要素だけが満たされればよいというものではないということもわかるでしょう。では、具体的にWellbeingにはどのような要素があるのでしょうか。Gallupでは、これまでの調査でWellbeingには5つの要素があると説明しています(下図参照)。
そして、5つの要素の中で、最も重要な要素がCareerになるのです。これが、Wellbeingという言葉が、職場の中でも耳にすることが増えてきた理由の一つかもしれません。Wellbeingを高めるために、友人や家族との時間、資産運用、体力作りや地域活動に力を注ぐことももちろん大切ではありますが、仕事の部分が解決しない限り、理想とするWellbeingを手にすることは難しいということがすでに世界規模の調査で分かっています。では、仕事のWellbeingの壁となっている部分と高めるために必要なアクションを次で紹介していきたいと思います。
仕事のWellbeingの壁
1日のうちの大半の時間を過ごす場所が職場であるということからも、CareerがWellbeing向上の最も大きな要素であることは明らかかと思います。2023年の調査結果によると、仕事にエンゲージしている(=意欲的に仕事に取り組む)割合が、世界平均では23%に対し日本ではたったの5%しかいないという結果があります(ちなみに2022年の調査では6%、減っている…)。つまり、日本では95%の人が、仕事に対して意欲的ではない、または嫌っているということになるのです。
これでは、多くの人のWellbeingの実現が程遠いだけではなく、組織としても会社としても、ビジネスを進めていく上で大きな障壁にとなるのは自明です。では、エンゲージしている社員のWellbeingは高いのでしょうか。実はエンゲージした社員であってもWellbeingが低い人がいるというデータがあります。Career Wellbeingにおいて、エンゲージメントは必要条件ではあるものの、十分条件ではないのです。では、十分条件はいったい何になるのでしょうか。
Thrive or Survive?
十分条件となる要素、それが「Thrive」です。Thriveはあまり耳なじみのない英語かもしれませんが「自信がある」「やる気があふれる」状態のことを表しています。一方、Surviveはご存じの通りで「疲弊している」「ストレスを感じる」なか、何とか乗り越えようとする状態です。つまり、自信をもって意欲的に仕事をしている人はWellbeingが高く、疲弊しながらも意欲的に仕事をしている人はWellbeingが低いだけでなく、前者と比べてバーンアウト(=燃え尽き症候群)してしまう人が61%、不安を抱えている人が66%、そして日々怒りや悲しみを感じる割合が2倍高いというデータもあるのです(以下のサイト参照)。では、どうすればCareer Wellbeingを上げていくことができるのでしょうか。
仕事のWellbeingを上げるために始めてほしい3つのステップ
一瞬にして劇的に改善できる方法は残念ながらありませんが、改善していくための一歩として、すぐに始められる方法はあります。
ここでは、3つのステップを紹介したいと思います。
ステップ1:自分の強みの可能性を知り、それらを活かす方法を理解する
人にはそれぞれ、自分が成果を出すときに自然と使っている思考や行動が必ずあります。ストレングスファインダー診断を用いることで、この成果につながる無意識の思考・行動のパターンを知ることができます。まずは、診断を受け自分の強みの可能性を客観的に知り、その活用法を理解することから始めてみてください。また、このステップは個人でやるよりも、普段から一緒に働いているチームやグループのメンバーとすることで、自己理解だけでなく、他者理解や相互理解を深める効果もあります。自分の強みを知りそれを活かそうとすることで、仕事へのエンゲージメント(=意欲度)が6倍向上するというデータもあります。
ステップ2:「~すべき・~しなくては」を「~したい・~を選ぼう」にチェンジ
エンゲージメントやWellbeingを改善していくためには、潜在意識に働きかけていくことが不可欠になります。ついつい、自分との対話の中で「この状況だったら、~すべき」であったり、「こういう場合は~しなくては」と潜在的に捉えがちになっていませんか。このような思考になった場合は、意識的に「この状況だから、私は~をやりたい」「こういう場合は、私は~を選ぼう」に置き換えて捉え直してみるようにしましょう。もしくは、「誰が私に~すべきと言ったのか」と自問してみるのも効果的です。
ステップ3:自分に・チームに「こうなります」宣言(=affirmation)
自分やメンバーの強みを知り、自分との対話の中の「~すべき」を「~したい」にシフトした後は、自分やチーム・組織の「こうなります」宣言を考えてみましょう。特にエンゲージしているけれどThriveしていない人にはこのステップは効果的です。この宣言をする際には、1)主語は自分・私たちなど明確に、2)宣言文は「~したい」ではなく「~します」、3)感情や何をするかも明確に、4)ステップ1で学んだ自分の強みキーワードを活用、の4つを押さえて宣言文を作ってみることをお勧めします。
最後に
Gallup at Work summitでのセッションの最後で、コンサルタントの方がとても興味深い一言を教えてくれました。それが、「あなた自身が自分との対話をコントロールすることで、その対話があなたの思考や行動を動かすことができる。つまり、ありたい姿があるのであれば、それは自分次第ということだ」でした。当り前ですが、人や状況を変えることは難しく、変えることができるのは自分自身です。どうせ自分が変わらないといけないのであれば、意欲的にわくわくと取り組めるアプローチでチェンジすることでWellbeingを高める選択をしてみてはいかがでしょうか。