尋常ではなく苦手な音
実は今日のタイトルを最初は『苦手な音』としていた。
しかし、それでは単なる苦手な音。私が今日書きたい内容とは少し異なる。
どう書いたら伝わるのか悩み、いい言葉が見つからず、「尋常ではなく」などとぱっとしない前置きをしてしまったのだが、これで伝わるのだろうか。
ミソフォニア、という言葉をご存じだろうか。
音嫌悪症とも呼ばれるこの症状について、日本ミソフォニア協会のHPにはこのように説明されている。
私がこの言葉に出会ったのは何年前だったか…まだ5年も経っていない気がするが、この症状に悩まされ始まったのは30年以上前のことだ。当時周囲に同じような悩みを持っている人はおらず、私が過敏すぎるのだから仕方がない、我慢するしかないと思っていた。
私の場合、最初に気づいたのは、エアコンの室外機やトラックのアイドリング音などの、低めの周波数のモーター音のようなものが極度に苦手だということだった。高校生の頃、駅ビル内の書店で参考書探しをしている時に、その書架の裏側にエアコンか何かの機械のようなものがあったらしく、ずっとモーター音が鳴り続けているのが耳に入っていたのだ。
それまでは自覚がなかったので、気になりながらもそのまま参考書を探し続けていたところ、突然動悸がしてきて叫び出したいような衝動にかられた。
私はその自分の衝動にびっくりしてしまって、慌ててその場から移動することで落ち着いたのだが、現在でもその症状は続いている。
そのほかに、水をゴクゴクと飲むときに喉を鳴らす音や咀嚼音、指先で机をトントンと叩き続ける音など、規則性のある連続音に苦手なものが多い。
体調が悪いとパニックを起こしそうになるので、そういう時はイヤホンをして、環境音を鳴らせるアプリを使って雨音や風の音、焚き木のはぜる音、雷の音など、複数の音を重ねて『音でカーテンを閉める』ような状態にする。これをマスキングと言うのだそうで、音は音に紛れ込ませるのが非常に効果的だと感じている。
聴覚過敏と言う方が伝わるので、普段は聴覚過敏気味なんです、と表現するようにしているが、実は聴覚過敏とミソフォニアは全然違う。
聴覚過敏の人は特定の音というより、音自体が過度に大きく聞こえてしまう感じで、ミソフォニアの人は、特定の音に対する過剰な嫌悪感、というイメージだ。
私の場合、調子が悪いと人ごみのざわめきが襲い掛かってくるような感覚になることがあるのだが、それはどちらかというと聴覚過敏の症状なのだと思う。
また、部屋の外に大きなトラックが止まっているのが見えるだけで、エンジンがかかっていなくてもアイドリング音をイメージしてしまい、胸がぎゅっと締め付けられて胃の中がもやもやして、思わず深呼吸をしてしまうことがある。これはミソフォニア的な反応だ。
この、音でマスキングする、という方法に出会う前は、本当に苦しかった。
今はワイヤレスイヤホンとiPhoneを持っていないことがないので、いつでも対処できるという安心感からか、逆に症状が落ち着いている感じがする。
つまり、私のこの症状は、耳や脳に問題があるのではなく心の問題、もし診断書などを出してもらう必要が出てきたら、心療内科や精神科にかかるのが適切なのだと思う。
似たような症状でお悩みの方がいたら、過剰反応し過ぎなだけ、で自分を納得させようとせず、ミソフォニア(音嫌悪症)や聴覚過敏について調べてみてほしい。そして、私のような自衛をするとともに、できれば専門家に相談するのがよさそうだ。
ただ、実際のところ誰に相談するのかが難しい。ミソフォニアを扱っている医療機関が見つかればいちばんいいのだけれど、私は出会えていない。まだ医療の現場でも認知度が低いのだそうだ。
日本ミソフォニア協会のHPに医療機関リストのページがあるので、参考までに。
※なお、私は当事者であり、専門家ではありません。ご自身の責任での判断をお願い致します。