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花火の一枚


バイクの後ろに乗っている。

タンデムしたことはあまりなく
二人乗りと言われて思いだすのは
この時のことだけ。


付き合い始めて間もなかったのか
わたしがバイクを
手元に置いていなかったのか

二人乗りで花火を観に行った
逗子の花火。


海へ近づくにつれ
車はどんどん増えてきて
海沿いの道は大渋滞。

路肩が通れないほど狭い。

なんとかかんとかすり抜けて
ようやく現地に着き
バイクを降りて海辺に向かった。


日のあるうちから
浜辺に座り
日が暮れるのを待つ。

空が藍色に染まる頃
花火が始まった。


一つ一つていねいに上がる花火。
ゆっくりと鑑賞できる嬉しさ。

当時は珍しい
ニコちゃんマークの花火も上がった。


じっと空と海を見つめる。
潮風が、時に髪をなびかせる。

一つ一つの花火を
慈しむように愛でていると

そろそろ終わりそうだな。

そんな気配もわかる。


最後はしだれの連続花火。
重なり合うしだれ花火。

最後の火花が
夜の空から消える。

海に暗闇が戻った。


花火が終わった後の余韻。
打ち寄せる波の音。


静かに立ち上がって
砂をはらったこと。

道路の下にあるトンネルをくぐって
駐車場に戻ったことを
なぜかすごくよく覚えている。


4ストのエンブレは
よく効くなと思ったこと

バイクに乗るなら
運転する方がいいなと思ったこと


タンデムで
甘酸っぱい気持ちにはならなかったけど

逗子の花火は
打ち上げ方がていねいでいいな

と思った。


 🎇   🎇   🎇


時はさらに経ち
わたしは母となる。

元職場の上司から
米軍基地で花火を観ないかと誘われる
横浜の花火。


花火を上げるのは
海沿いなのか海そのものなのか

海沿いの基地から
見える花火は
前方ではなく、真上だった。


爆撃にあっているような
すさまじい爆音に
ベビーカーの息子が
目を丸くして泣き始める。

地鳴りがするほどの花火は
怖さを感じるほどの迫力だった。


息子を必死で抱いて
早く終わるように祈る。

息子の耳をふさいで
少しでも音を防げるよう抱きしめる。


横浜の花火は
何でこんなに一度に上がるんだ?


恨めしいほどの迫力に
逗子の花火を思い出した。


あの一つ一つていねいにあげる理由は
玉数が多くないからだろう。

だからこそ
上がる一つ一つが大切で
愛おしく見えるんだろうなと。


見栄えよく
盛大に上がる花火。

重なって次々見える花火を

もったいないな。

と思った。


 🎆   🎆   🎆


さらに、時が経ち…

コロナでずっと行けなかった
大好きな場所に

車中泊でいいから行こう!

と出かけた
長野の道の駅。


いつもは空いている駐車場が
なぜか今日は満車に近い。


どうした?何があった?


近くの温泉に入り
夕飯をコンビニで買って
戻ってきたのは7:30過ぎ。


そのうち
さらに人が増え
ついに、その理由がわかった。


ドン!!
と上がる花火。

うろたえるピース。


娘がすかさず
ピースの首元に抱きつく。


大丈夫。花火だよ!


真上ではないが
目の前で上がる花火。

サプライズ花火だ。


各地で
場所を明かさずに
連続して上げていく花火。

2年ぶりにたまたま来た今日
その花火が目の前で上がるなんて。


たった5分ほどの花火が
とても懐かしく

ピースは娘に任せて
夢中で写真を・・・


撮った!


ピース。上。ほら!
花火だよ。見て見て!!


娘が一生懸命話しかけても
ピースは空を見ない。

不安で下を向くばかり。

ピースには
花火の良さはわからないかな。


基地で
息子の耳をふさいだ記憶がよみがえる。

そうだよね。
こんな爆音。怖いだけだよね。


わたしもピースの背中をなでる。


赤ちゃんと犬には
花火は遠い方がいい。

花火は一つずつ
ゆっくり上がる方がいい。


そんなことを思った
3つの花火の思い出。




 🎆   🎇   🎆



はるかさん
今月もありがとうございました❣️


なんだか色々思い出しちゃった。

花火がまた見られる日が来るといいですね。




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