見出し画像

【凪良ゆう】『流浪の月』読書ノート

図書館の1番端の席で、人目もはばからず泣きながら読んだ本。

「流浪の月」という世界観に、まんまと喰われてしまった。

2020年本屋大賞受賞
第41回吉川英治文学新人賞候補作


あらすじ・ストーリー

夕食にアイスクリームを食べるような自由奔放な少女・更紗と、母の読んでいた育児書通りに品行方正に生きてきた文。

物語は、小学生の更紗と大学生の文が公園で出会う場面から進んでいく。

そのことが、後に世間を騒がす事件となる――。


15年後、2人は再会する。

今度は、「被害者」と「加害者」という立場になって。

2人が共にいることは世間の誰もが嫌悪し、反対する。

それでも、

「彼が本当に悪だったのかどうかは、彼と彼女にしかわからない」

事実と真実は違う。

だけど、どんなにそれを叫んだところで世間は解ってくれやしないのだ。

「ただ一緒にいる。それだけのことを、なぜ責められるんだろう」

更紗と文が向かう先は――。

傑作と呼ぶにふさわしい小説。

この物語の「真実」をぜひ、あなたの目で確かめていただきたい。


感想

主人公更紗の母と、私の実の母は似ている。

この物語の第一印象は、それだった。

——重いことはそれだけで有罪だわね。
——だって手をぶらぶらできないじゃない

そう言って、お母さんは見事に私を手放した。きっと今も手をぶらぶらさせながら歩いているのだろう。わたしにはそれができない。お母さんが羨ましくてたまらない。

彼女たちは、きっと悪い人ではない。

自分の欲求に、正直に生きているだけだ。

ただそれだけのことなのに、どうしてこうも寂しいのだろう。

更紗の孤独が、かつての私と重なり続ける描写に泣きながら読み進めた。

更紗の中に、幼い私を見ていた。

「家内さん、お母さんのこと恨んでる?」
「恨みはしなかった。でもすごく寂しかったし会いたかったよ」

そう、私も母を恨んでいない。
ただ、寂しくて寂しくてたまらなかった。

わたしはひとりになったけれど、それがなにほどのことだ。誰かと一緒にいても、わたしはずっとひとりだったじゃないか

両親
友達
恋人

誰かと共にいるのに、いつも孤独で愛に飢えている。

遠い昔の私が、この物語の中にひっそりと寝転がっていた。

更紗と文が共に生きることは、世の中のほぼ全員が反対する。

それでも二人にとっては、お互いだけが心を通わせられる唯一なのだ。

それは幸福なことなのだろうか。
それとも不幸?

そんなことは誰にもわからない。

わかるのは、更紗と文だけだ。

「でも、やっぱり、ひとりは怖いから」


酷く素直な告白だった。ひとりのほうがずっと楽に生きられる。それでも、やっぱりひとりは怖い。神様はどうしてわたしたちをこんなふうに作ったんだろう。

私も、一人の方が楽だ。
でも独りは寂しくて、怖い。

どんなに楽でも、ひとりではいたくない。

だから、友達や恋人といった関係を他人に望んでしまう。

――誰かと共に生きてゆきたい、と。

人が、ひとりきりで生きていくことは不可能だ。

更紗。
文。

私は願う。

どうか、もう二度と独りきりにならないでほしいと。

たとえその関係が世界中全ての人に反対され、嫌悪されようとも。

あなたたちは、お互いにとっての唯一を見つけたのだ。

どうかどうか、幸せになって。

私は切に、祈る。


こんな人にオススメ!

「世間体」を取り繕うのに疲れた人。

学校や社会で、「これが当たり前」という多数派の意見に疲れ果てたあなた!
事実とは何か。
真実とは。
その違いを楽しんでみてください。


「生きててもいいことない」と思っている人。

そんな方は号泣必至!
切なく温かい涙を流すことは間違いなし。
ハンカチを用意してから読み始めましょう。

「愛」とは何かを知りたい人。

人を愛するとはどういうことかを知りたい方必見!
あなたは真実の愛を目撃するはず。


おわりに

ちがう。そうじゃない。わたしは、あなたたちから自由になりたい。中途半端な理解と優しさで、わたしをがんじがらめにする、あなたたちから自由になりたいのだ。

誰かを理解することは難しい。

でも愛するあの人だけは、理解したいと願う。

泣きじゃくっていたあの日の私に届けたい物語。


「流浪の月」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?