体温計☆たまにはこんな話。
どの家でも体温計があるのではないだろうか。
このご時世、きっと一人暮らしの方でも。
普通の体温計もあれば、赤ちゃん用のごく短い時間で測れるもの、
逆に基礎体温を知るために長い時間かけて測る、婦人体温計もある。
私は以前、この婦人体温計を液晶が壊れるまでずっと使っていた。
旅行に行くときはもちろん、出産入院の時も病室のテーブルに、
何冊かの本、ノートとペン、そして体温計の白いスティックを並べた。
やってくる看護士さんみんなに「これは何ですか?」と聞かれ、
教えると「へぇ!スゴイですね!」とみんな口を揃えて驚いていたので
よほど珍しいのだろうか?と思った。
女性には1ヶ月の体のリズムがあることは、男性でも何となくは分かるだろう。
体温を毎朝測っていると、それがよく分かる。
低温期と高温期というのがあって、その切り替わりで一度ガクッと体温が下がるのだ。
これは毎日測っていないと、なかなか分からない。
逆に毎日測っていると、様々なことが分かる。
電子体温計だとすごく便利で、わざわざ自分で記録しなくても、
確か3か月くらいの記録は体温計に残るし、目覚まし代わりにも使える。
毎朝、ピピピと電子音で起き、そこから寝た姿勢のまま5分間測る。
測る時間がこの通り結構長いので、じっとしているとよく寝そうになった(笑)。
健康であれば、だいたい毎月同じ周期でやってくる生理。
だけど、心配事などのストレスや、お願い!この日はイベントがあるからまだ来ないで!と願う時は、少しズレる。いやホント。
なかなかデリケートなのである。
だいたいの周期はあるけれど、毎月突然やってくる感じがあるので
婦人体温計を使っているとそのリズムもわりとはっきり分かる。
私の場合、以前は生理前になるとPMSという症状がひどかったこともあって、
独身の頃は特に、理由もなく悲しくなり、これは男の人には理解できないだろうなぁと思い、
これから先の事を考えると絶対に改善しておかなければと
婦人科を受診して、自分で調べてきた漢方を処方してもらった。
みんな口にはしないけれど、何かしらモヤモヤ。
一週間前から身体的・精神的な不調。
腹痛、眠気、だるさ、何となくやる気が起こらないなど「何となく」の症状が始まる。
そして生理が始まるとその一週間は、本格的な(?)腹痛やら、何だか落ち着かないことが多い。「何だかなぁ」の症状がしばらく続く。
例えばあきらかに長時間トイレに行けない場合(会議や美容院、旅行、冠婚葬祭)の時の対処、どこかのお家へお邪魔する時、お風呂の時間、日常でも考えなければいけないシチュエーションの多いこと。
要するにその2週間、何となく不調な時期と、何だか不安定な時期が続くのだ。
1ヶ月の半分はそんな状態なのに、なるべく誰にも気づかれないように過ごしている。
ただただ毎月の事だと我慢する人、薬を飲んで痛みを乗り越える人・・・
きっとそんな人がほとんどなのではないかと思う。
もちろん、個人差はあるけれど、お腹が痛い時もあれば、腰の辺りが痛い時もある、どこだかわからないけれどずしんと重くてつらかったり、頭痛の時もあれば、情緒不安定で怒りっぽくなったり。
だけどみんなその期間、いつもと変わらず涼しい顔をして過ごしているのだ。
私もそんなにひどい方ではないと思うが、
一度会社のお昼休みにお弁当を食べた後だったか、
あまりの腹痛に耐え切れず、会議室で倒れ込んでしまった。
食当たりではない、生理痛でだ。
倒れるほどの痛みは初めてで、私自身何か他の事では?と思うほど。
会社の人が慌てて来てくれたのだけど、
相手は男の人・・・。でも言わないといけない・・・。
「生理痛だと思うんですけど・・・」と言ったけれど、
とにかく私が苦悶の表情で立ち上がれずにいるので、救急車を呼んでくれた。
付き添いは直属の上司の男性。
私はもう恥ずかしくて、車椅子に乗ったままずっと目をつぶっていた。
なぜって、会社はビルの最上階。
ちょうどお昼休みの時間帯で、
階下の誰かがエレベーターボタンを押すたびに、
何度も止まり、扉が開く・・・(笑)。
もう恥ずかしくて、とても目なんて開けていられない。
救急車も初めてだったけれど、ここでも恥ずかしくて目が開けられず。
そしてもちろん、まだ痛い。
病院についても恥ずかしくて、まだ目をつぶっていたのだけれど、
お医者さんに「目を開けられますか」と言われてやっと、
目をそっと開けました・・・。
目を開けた瞬間に飛び込んできた先生の顔がびっくりするほどイケメンで
自分でも「今、目を開いたどころか、瞳孔が開いたな」と分かるほどで、二度目を開けたような感覚だった話はナイショです(笑)。
検査の結果、特に異常はなし。
やっぱり ”ただの”生理痛 だったのだ。
そのまま自宅に帰ると、家では「会社から電話があったよ!」と全員が心配してくれていて、もちろん結果も報告があったそうだ。
「そう、ただの生理痛だったんだ・・・。」とここでも何だか恥ずかしい思い・・・。
結婚した今も、夫にはあまりはっきりは言わない。
せいぜいトイレにどんっと生理用品を置いてアピールするので精いっぱいだ。
本当は、とても身体がだるいから、早く帰ってきてほしい。
とくに子供たちのお風呂は入れて欲しい。
一日で終わればまだ言えるかもしれないけれど、
二日、三日はまだ量が多いし、辛いことが多い。
何日もそんなこと頼めるわけがない。
それにうちの場合、普段から色んなこと頼んでるから
これ以上頼めない(笑)。
いまの日本の社会では言えないよね。堂々とそういう話は。
だけど、子どもたち世代はそうであって欲しくない。
だから私は子どもたちに聞かれるとき、
「毎月、体の中で赤ちゃんのためにフカフカのベッドを作っているんだよ。だけど、赤ちゃんがいないから体から使われないベッドを出しているんだよ。」
と伝えている。
男の子でも、ごく自然な事として、知っておいてほしい。
ジェンダーレスってなんだろう。
「性差を前提とした社会において・・・」と前置きから始まるのだけれど、
今の日本でそもそも性差を前提としている社会と言えるだろうか。
その前にやることがあるのではないかと。
性差についてもっと私たちは学ぶべきではないのかなと思う。
私たち人間も動物だ。
もっと自然にあった暮らし方をしても良い気がするけれど。
だけれど女性の方も、
「いやいや、私は男性に負けないよう、いや男性以上に努力してきているのに、身体のせいで仕事に支障は出したくない。だから私は我慢する。黙る。そんなことで休んでたまるか。」という人もいると思う。
日本の女性は強くて我慢強い。そして、その姿が美しい。
というように、それが美徳になっている気がする。
日本の会社にあるのはせいぜい生理休暇。
誰も共感していないけれど、制度としてとりあえずあるだけのような感じ。
ずいぶん昔からある制度みたいだけれど、
これを取っている人を見たことがあるだろうか。
私は総務だったから一人だけ見たことがある。
普段から周りに何も言わせない、気の強い女性だった。
私の上司は女性だったけれど、その書類を見て
「すごいね、生理休暇使うんだ」と言った。
私たち世代が作る社会では、どうしてもそう育ってきていないので
無理だろう。考え方がもう変えられない。
「病気じゃないんだから」「男だからちょっと分からない」「男の人の前でそんな話するなんてはしたない」
それで終わりだろう。
だけれど、これからの社会を作っていく子どもたちには
もっと広い視野・視点を持ってほしい。
本当の意味で「性差を前提とした社会」を。
男女関係なく、人を気遣える優しさを持てる、余裕を持てる社会。
余裕のない時代を駆け抜けてきた平成までとは違う生き方を。
これまで日本という社会を立派に作り上げてきた陰で、
追いやられてしまった様々なことに光を当てて、
不寛容な社会から寛容な社会へ。
何者でもない私が、
ここで叫ぶ、のではなく、
ただ穏やかに、話の一つとして
伝えたいと思います。
午後からの仕事中。
ついあくびが出てしまった。
「寝不足?」隣の席の男性が声をかけてくれる。
「ううん、いま生理中なんだ」
「そっか」
あなたが宇宙人でない限り、
みんな女性であるお母さんから産まれてきているのだから。