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月と海☆
まだ十五夜の満月から一日しかたっていないこの日の月も
誰が見たって丸くて、明るかった。
正確に言えば昨日の15時に満月を迎えたのだから
まだ丸いのは当然なんだけれど。
テトラポットが並ぶ海沿いの堤防に腰をかけると
対岸に無数の灯りが見える。
それは数年前にできたばかりの空港で、
飛行機に乗らない人でも楽しめるちょっとしたデートスポットになっていて
ライトアップされたデッキ上やレストランのガラス越しから
飛び立つ飛行機が見られる。
あの場所にいるような高揚感はないかもしれないけれど
この場所では静かでひそやかな楽しみ方がある。
無数の明かりの中から、光がどんどん飛び立っていくのが
小さく見えて、その光が右へ行くのか、旋回して左へいくのか
それとも地平線側に消えていくのかで
だいたいどの地域に行くのかが分かるんだという。
私にはもちろん分からないけれど。
あの小さな光の中には500人ほどのいろんな人が
乗っていて、みんなどこへ行くんだろうと
想像してみる。
聴こえてくるのは、波音だけ。
そうするといつの間にか想像していたことも忘れ、
ただ音もなく小さな光が飛び立ったり戻ってきたりする
様子をまたじっと眺めている。
いつもは暗く波音だけが聴こえる海も
この日は月夜に照らされて白く穏やかに波立っている様子が見えた。
時間がゆったりと流れ、
まるで夢の中にいるような。