人の思い出を盗むな
引っ越しを控えているため、服や本を整理していると手紙やアルバムが出てきて、思い出に浸っていると結局何も進まない。と良くある失態をしてしまった...
と思いつついい時間だったのでそのことを書こうと思う。
押入れから出てきたのは父や母の思い出たち。
勝手に触れてしまって申し訳ないという気持ちと同時にプレゼントを開ける時みたいにワクワクが抑えられなかった。両親が先に旅立った時、姉達と共有して笑い合いたいと思う。(忘れないように記しておきます。)
①父が母へ書いた手紙。
クリスマスの日だったみたい。内容は、謝罪と愛の言葉。若くして結婚した二人は幾度となく喧嘩をしていて、酒好きな父へ痺れを切らしら母が一度家出をしたことがあるといつの日か聞いたことがあった。きっとその時の手紙なのだろうなぁ。憎めないなぁとクスクスしながら読んだ。
②父と姉の交換日記。
仕事して帰ってきて、一緒に暮らしている娘と交換日記なんて、親って忙しいなぁ。まだひらがなしか書けない姉がプールへ行ったこと、友達のお家へ遊びに行ったことなど父へ報告していて、何とも可愛いらしい。父は1週間おきくらいに返事をしていて、返事が遅い!と怒られていた。あるページには「君に彼氏ができて、デートをする時はパパもついていっていいかい?」って書いてあって笑ってしまった。愛おしい親子の会話にほっこり。
③母のタイムカプセル。
16歳の母が20年後の自分へ手紙を書いていた。「20年後は36歳。すっかりおばさんになってるんだろうなぁ。イケメンと結婚して、子供ができて、穏やかな生活を送っていますように。」と時代遅れな丸文字で綴られていた。
イケメン以外は全て叶えているのではないだろうか。すごいなぁ。と感心した。
④私が母へ書いた手紙。
当時気に入っていたのであろう動物が描かれたレターセットに大きく下手くそな字で「ママへ」と書かれた手紙が沢山出てきて、どんなことを書いてるのかワクワクして空けてみると、紙前面に下手くそな絵だけ。まだまともに字が書けない歳だったのか。そんなのが何枚も出てきて、その中にはきっとこれ開封してないな??と思うものもあった。開けるくらいしてあげて欲しいけど、母らしい。
⑤父が高校卒業の時に書いた卒業文集。
年季の入った紙に達筆な字で綴られていた。これ本当に高校3年生?!と思うような内容だった。一般的な卒業文集というものは、学校の思い出や親や先生、友達への感謝を書くものだと思っていたが、そこには父の歴史が綴られていた。自分の人生について。しかも自分自身のことを"彼"と呼称して。父の両親は離婚しており、私の祖父は禄でもない人物だったそうだ。飲酒や暴力は日常茶飯事で女を作っては祖母を泣かせていた。そんなことまで綴られていた。「校庭でボールを追いかけている最中に何故このボールをこんなに必死になって追いかけているのだろうか。死んでしまえば全て終わり、ゼロになるのに。と思ったことがある。」と書かれていて、壮絶な毎日だったことが想像ついた。あとは、音楽が大好きで、バンドを組んでいること。兄とのエピソード。ビートルズ、中島みゆき、吉田拓郎の音楽を良く聴いていること。など、父を創り出した要素が事細かく綴られていて、そんな作文はどこか生意気で、寂しくて、正直だった。
思い出を漁った不思議な数時間。
"過去"の断片を切り取って再び光に当ててみた時、それは想像以上にキラキラしていて、暖かく懐かしい気持ちにさせた。
引っ越しの片付けはまた明日にでもやろう。
ps.父がバンドをやっていた頃に書かれたノートが出てきて、紙は茶色くシワシワなっていて、懐かしい匂いがした。歌詞とギターのコードが乱雑に書かれたノート。その1ページを盗んだことは絶対に内緒。