2023/07/22(土)のゾンビ論文 脈動するゾンビ星
ゾンビについて書かれた論文を収集すべく、Googleスカラーのアラート機能を使っている。アラート設定ごとに、得られた論文を以下にまとめる。
アラートの条件は次の通り。
「zombie -firm -philosophical -bot -xylazine -biolegend -gender」
「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -viability -gender」
「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -biolegend -gender」
「zombie」(取りこぼし確認)
検索条件は次の意図をもって設定してある。
「zombie」:ゾンビ論文を探す
「-firm」:ゾンビ企業を扱う経済学の論文を排除する
「-philosophical」:哲学的ゾンビを扱う哲学の論文を排除する
「-DDoS」/「-bot」:ゾンビPCを扱う情報科学の論文を排除する
「-xylazine」:ゾンビドラッグに関する論文を排除する
「-viability」/「-biolegend」:細胞の生死を確認するゾンビ試薬を使う医学の論文を排除する
「-gender」:ジェンダー学の論文を排除する
また、「zombie」の内容も確認するのは、上記の検索キーワードで不必要にゾンビ論文を排除していないかを確かめる目的である。
それぞれのヒット数は以下の通り。
「zombie -firm -philosophical -bot -xylazine -biolegend -gender」二件
「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -viability -gender」二件
「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -biolegend -gender」二件
「zombie」三件(差分二件)
「zombie -firm -philosophical -bot -xylazine -biolegend -gender」は天文学、スポーツ心理学が一件ずつだった。
検索キーワード「zombie -firm -philosophical -bot -xylazine -biolegend -gender」
我々の銀河系の謎の物体が76秒ごとに脈動する
一件目。
原題:A mysterious object in our Galaxy pulses every 76 seconds
掲載:The Science Breaker(論文の要約を載せるサイト)
著者:Manisha Caleb
ジャンル:天文学
zombieの単語が見られたのは、以下の一文。
ゾンビ星は以下の記事によれば「白色矮星が死からよみがえって爆発を引き起こす過程で周囲の星を食い尽く」しているものらしい。
また、以下の記事では「iPTF14hlsは、一時消えそうになりながらも、再度明るく輝きはじめたのです。研究者たちが観測をつづけると、その超新星はゾンビのように、激しく衰退と回復を2年間の間に5回繰り返していました。」ともある。「iPTF14hls」は星に着けられた名前である。
私なりの解釈を書いておくと、観測上は死んでいるにも関わらず、さも生きているかのように超新星爆発を繰り返す天体のことをゾンビ星と呼ぶ。
まず太陽のような恒星は核融合を起こし続けている。核融合にも燃料が必要であるため、いつか核融合は止まる。すると、恒星は冷え始めて重力も相まって凝縮し始める。あるいは、重力の強い天体が別の天体を飲み込んで凝縮し始める。こういった天体が凝縮が臨界点に達すると爆発を起こす。これが超新星爆発である。
いったん爆発すると星雲上の天体になり、超新星残骸と呼ばれるようになる。残骸と呼ばれるだけあってもう一度超新星爆発を起こすことなどないらしいのだが、超新星爆発を繰り返し起こす天体があるという。
それがゾンビ星だ。超新星爆発という最後の命の輝きを繰り返すという点が意味不明だが、そこは星雲になってなお「周囲の星を食い尽く」して超新星爆発をするのだろう。
本論文では、死んでいる天体(中性子性星らしい)が」電波を放射しているらしく、それをもってゾンビ星と呼んでいるらしい。
なお、The Science Breakerというサイトは論文の要約を載せるサイトであり、元論文は次の論文。こちらにはzombieの単語が含まれないようだ。
ジャンルはもちろん天文学。
エリート漕ぎ手と非エリート漕ぎ手の精神的努力
二件目。
原題:Mental Effort in Elite and Nonelite Rowers
掲載:Journal of Sport and Exercise Psychology
著者:Henrik HerrebrødenとThomas Espeseth、Laura Bishopの三名
ジャンル:スポーツ心理学
アラートのメールによれば、zombieの単語が見られるのは次の一文。
文脈が読み取れないが、おそらく過去に存在したがすでに古ぼけた理論となってしまった仮説をゾンビ仮説と呼んでいるのだろう。
論文の内容はエリートとエリートではない人間の間で、スポーツにおける”精神的努力”に差異があるかを調べるもの。エリートの定義もわからず、「精神的努力」もいまいちわからない。おそらくは、エリート(たとえば、資本主義勝者の子息?)がそうでない者と比べて根性があるかどうか…ということだろうか。
ジャンルはスポーツ心理学。
検索条件の差分
「DDoS/bot」と「viability/biolegend」で検索結果に差異が生じるか調べる。
今回は差異がなかった。ゾンビPCもゾンビ試薬も出てこなかったため、妥当と言える。
検索キーワード「zombie」
このキーワードでは「zombie」ゾンビ論文がアラートに入ってくる。誤ってねらいのゾンビ論文を取りこぼしていないかチェックするために、こちらの検索結果もチェックしておく。
景気循環にわたる融資回収とゾンビ企業への資金調達
原題:Loan Recoveries and the Financing of Zombie Firms over the Business Cycle
掲載:Tilburg University Research output
著者:Asli Demirguc-KuntとL. Balint Horvath、Harry Huizingaの三名
ジャンル:経済学
「-firm」で排除された。ゾンビ企業に関する論文。
パーペチュア、フェリシティ、そしてホラーのパラドックス
原題:Perpetua, Felicity, and the Paradox of Horror
掲載:Journal of Early Christian History
著者:David L. Eastman
ジャンル:宗教学
『聖者パーペトゥアとフェリシティの受難』という書物がある。受難の名前の通り、逮捕・投獄・拷問が描かれているため、熱心なキリスト教徒が追体験したくなることがあるらしい。その動機をホラーのパラドックスという理論を通して探る。
ホラーが関係するからzombieの単語に引っ掛かった。また、パーペトゥアとフェリシティが女性であることから「-gender」で排除されたと思われる。
コルソン・ホワイトヘッドとオマル・エル・アッカドの不安な将来
原題:Anxious Futures in Colson Whitehead and Omar El Akkad
掲載:Writing the Past in Twenty-First-Century American Fiction
著者:Alexandra Lawrie
ジャンル:文学
二人の小説家の作品が描く未来に関する不安を分析?する論文。不安の例にゾンビ・アポカリプスを出しているらしい。どのキーワードで排除されたかはわからない。やはり、文学だから「-gender」?
脳が心になるまでの物語
原題:The Story of the Brain's Becoming-Mind
掲載: Deleuze and Guattari Studies
著者:不明
ジャンル:哲学
タイトルからして哲学ジャンルの論文であるため、「-philosophical」で排除されたと思われる。
文化的民俗、政治的伝承:1915年から1934年までの米国によるハイチ占領下の民俗の政治
原題:Cultural Folk, Political Lore: The Politics of Folklore during the United States Occupation of Haiti from 1915 to 1934
掲載:The University of Southern Mississippiに提出された
著者:Cheyla Gissell Muñoz Ramos
ジャンル:歴史学
「-gender」と「-philosophical」で排除された。ハイチにどうブードゥー教が広まったかを示した論文だろうか。
ブードゥー教の歴史には詳しくないので、ちょっと興味がある。
まとめ
「zombie -firm -philosophical -bot -xylazine -biolegend -gender」は天文学、スポーツ心理学が一件ずつだった。
新たなゾンビ、ゾンビ星との出会いに感謝したい。今までゾンビ論文を調べてきて、その著者が勝手に定義したと思われるようなゾンビが多かったが、今回のゾンビ星は天文学分野では有名なゾンビらしい。
そんなゾンビに出会いたかった。出会うことができた。うれしい。
今日はねらいのゾンビ論文なし。
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