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掌蹠膿疱症について考えてみた
20年ほど前に、母が原因不明の皮膚病にかかりました。
手足に水泡ができ、皮がむけ、痛くて足がつけないという状態でした。
当初は湿疹や肌荒れといった診断ではっきりした原因が分からず、何件もの皮膚科を受診して、ようやく「掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)」という疾患であることが分かりました。
しかし、当時は掌蹠膿疱症の原因はアレルギーや扁桃腺であると考えられていて、どのクリニックもステロイドや抗炎症剤といった薬を処方するだけで
「実際原因はよくわかってないから、付き合っていくしかないね」
というばかりでした。
口内の入れ歯や被せものといった金属が原因という情報をみつけ、歯科で治療をしたこともありましたが、全くと言っていいほど良くならない。
あまり痛々しいので他に方法は無いものかと調べていたところ、秋田県に掌蹠膿疱症の名医がいるという記事を見つけました。
その先生は前橋先生といい、掌蹠膿疱症は腸内フローラの乱れによりビオチンというビタミンが欠乏することが原因である、という説を唱えていました。
ビオチンは食事にも含まれておりさらに腸内でも産生されるため通常は不足することは少ないのですが、前橋先生は掌蹠膿疱症患者はこのビオチンが欠乏状態であることに着目し、ビオチン治療を積極的に行っていました。
ただ、当時の医学界ではビオチン欠乏説は異端中の異端で、前橋先生以外にビオチン療法を行っている医師がほとんどいない状態。
私は母を秋田の本荘第1病院に行かせることにしました。
※本荘第1病院免疫内科は平成26年に閉鎖され、前橋先生は退職されています。
帰京後、ビオチン治療を始めました。しかし、近隣の病院で前橋先生の説を知っている医者はおらず、いても否定的で「その先生の診断や処方はうちでは受け付けられない」と受診を断られる始末。さらにビオチンを処方箋として扱っている薬局は皆無で、母は定期的に片道1時間半以上かけて遠くのクリニックにビオチンを処方してもらいにいくという状態でした。
最近では掌蹠膿疱症のビオチン欠乏説も大分認知されてきて、近所のクリニックでも普通に処方箋を出してもらえるようになりました。それ以降、ビオチンを取り続けることで皮膚がぐじゅぐじゅすることもなく暮らしています。
ビオチンはビタミンB群とよばれる8種類のビタミンのひとつで、ビオチンが不足するとコラーゲンの生成や免疫機能に影響し、それらは皮膚症状に現われやすくなるそうです。また、炎症性カイトサイン(炎症反応を促進する働きを持つタンパク質)の増加も報告されています。
https://www.vitamin-society.jp/wp-content/uploads/2024/04/792e3da773bcfa2592b7ae9f26b88c57.pdf
これらから、ビオチンが欠乏すると免疫が弱くなり、サイトカインによって炎症症状が皮膚に現れるのが掌蹠膿疱症の仕組みなのでは、と、素人考えではありますが私はそう理解しています。
ビオチン療法以外の治療を行っていても改善しない方は、一度ビオチン療法について調べてみても良いかもしれません。
ちなみに、活性酸素と掌蹠膿疱症の関係については文献を調べても分かりませんでした。ですが、活性酸素が増えると腸内細菌が減って腸内環境が乱れますし、掌蹠膿疱症以外の疾患でも腸内環境の悪化が影響していると示唆されている疾患はたくさんありますので、やはり活性酸素を増やさないようにすることはとても大切なことなのではないかと思います。