スウェーデンでジェンダーを学ぶのはオススメか?
ジェンダーを学ぶために留学を考えていて、スウェーデンも候補なのでアドバイスを下さい。とちょこちょこ相談を受けるのでまとめてみました。
まず結論
日本に帰国して就職するならオススメ
スウェーデンでジェンダー分野で就職をめざすなら戦略的にかつ長期的に。忍耐が大切!!
国際機関での就職を目指すならおすすめではないかも。
私が卒業したのはこちらのプログラムです。日本語に訳すとプログラム名は「ジェンダー、移民そして社会正義」
授業は基本的にスウェーデン語、留学生にも開講している授業だと英語。
卒論は英語、スウェーデン語、ノルウェー語、デンマーク語、フィンランド語で執筆可能。
私の大学院進学の背景
大学院進学を志した背景
イラン留学以後ジェンダーをきちんと学びたいと思っていて、当時から付き合っていたパートナー(現夫)にスウェーデンにはイラン系のジェンダー研究者がたくさんいるし、ジェンダー平等先進国だしこっちで修士をしたらどうかと提案されそれもいいなと移住しました。
そしてスウェーデンに引っ越してからは移民の立場から社会不平等を経験し、ジェンダーと移民どちらもを学びたいと強く思いました。
スウェーデン語を学ぶかたわら、色々バイトやパートタイムで働いてみて移民としてスウェーデンで就職をする際、スウェーデンの大学の学歴があるとメリットだと考えました。英語での大学院進学を初めは考えていましたが、スウェーデン語ネイティブと同じ労働市場を目指すことになるのを見据えてスウェーデン語で勉強することに。スウェーデン人学部卒業生と渡り合うために、語学の弱点を修士号の学位でカバーできるかなと考えました。
ルンド大学大学院に進学した理由
大学院進学に当たってジェンダー以外にも人権、紛争、移民なども学部で勉強し、ストックホルム大学、ヨーテボリ大学、ルンド大学、ウプサラ大学のどれかに進学しようと進路を固めます。
応募する時点で単位要件が足りていて、学部卒論の翻訳で受かりそうだったのがヨーテボリ大学とルンド大学でした。
ジェンダーと移民を学びたいという自分の希望によりマッチしていたのでルンド大学へ出願。
実際ルンド大学に進学してどうだったか
ルンド大学進学で良かった点
世界でも最初期のほうにジェンダー学部として発足したため(1999年)、伝統と研究蓄積がしっかりしている。
また、先生がとっても熱心に指導してくれ、授業の充実度だけでなくメールの返信もはやいし、レポートの採点と指導も細やか。
理論と実践どちらも学べる。
ルンド大学のネームバリューはやっぱり高いなとインターン中と就活中に気づきました。
ルンド大学進学で後悔している点
とくになし。
が、スウェーデンでの就職という点においてはジェンダー修士はぜーんぜん有利になりません!!
政治学、国際関係学、社会計画、法学、経済学とかのほうが圧倒的に仕事に繋がります。残念ながら……。
ジェンダーコース「ジェンダー、移民そして社会正義」について
コースの特色とメリット
指導が厳しいので、実力がつきます。
レポート提出ごとに簡単な口頭試問があり、修士論文口頭試問の際うろたえませんでした。
他のクラスメートの課題を読むチャンスが多く、お互いに刺激し合えたし上手な論文の書き方を学べました。
グループワークが多く、様々なバックグラウンドの人とのチームワークやスウェーデン式のコミュニケーション方法を学べました。
また、スウェーデンのジェンダー平等社会形成の道のりや現在の課題をグローバルな視点、ローカルな視点どちらからも学べてほんとうに楽しかったです。
デメリット
留学生にも開講されている授業以外、スウェーデン人女子しかいません!クラスメートから友達にステップアップするのがめっちゃ時間がかかりました。(これは他の大学のジェンダーコースでも同じような傾向がありました。夜間コースや英語でのコースだと男性や外国背景の人が少し増えます。)
また、このコースは東アジアについての焦点がほぼないです。
それがとっても不満でしたね。先生たちもあんまり日本韓国について知らないし、課題図書で東アジアに触れたのは台湾の研究くらいです。なので韓国人留学生、中国人留学生とチームを組んで東アジアのジェンダーについて発表しました。スウェーデンにおいて東アジア出身者の人口が少ないためか、ストックホルム大学、ソーデルトーン大学のジェンダーコースでも東アジアについては触れられませんでした。
インターンが予想より厳しかったです。
インターン先は自分で探します。大学が応募先のリストはくれるけど、インターンに受かるかどうか確約はありません。
インターン中も学校の課題の比重が大きく、インターン先のタスクに集中しづらかったです。技術や知識を学ぶ一般的なインターンとは異なり、インターン先組織をフェミニストの目で批判的に分析し、改善点を提案せよ。という課題だったので、インターン受け入れ先も戸惑っていましたね。
コース提供側が特に重点を置いていたと感じる分野
アカデミアとアクティビズムの接続
アカデミアから外に出て社会に知識を還元し、また社会から学び、社会に足をしっかりつけながら研究することを大切にしているコースです。
誰かの声を盗まず、自分にも研究対象にも誠実であることも求められます。
ジェンダー、移民と社会正義をグローバルにもナショナルにも学ぶと暗澹たる気持ちになりがちですが、それでも希望を持ち続けより良い可能性がある未来に向かっていこう、ポジティブな態度を忘れないようにと先生たちは生徒に繰り返し繰り返し言っていました。Study of Hopeが大切な指針の一つです。
課題の忙しさ、テスト/レポート割合
忙しい。ほとんどレポートで一つのコースだけオンラインテストでした。
最も苦労したこと
スウェーデン語
膨大な課題図書を効率良く読めるようになるまでひたすら時間がかかりました。
スウェーデン語でのディスカッション
これはやっておいた方がいい、注意したほうがいいということ
英語やスウェーデン語でのディスカッション能力を鍛えること!
スウェーデンの教育はディスカッションをするのが盛んで、先生たちはディスカッションで学生が積極的に発言しているかも評価基準にしています。
英語やスウェーデン語での発表の場数をふむのも大切です。私は、スウェーデン語学校でしょっちゅう発表があったのでその経験が役に立ちました。
日本の論文・レポートの書き方とスウェーデン・欧米の論文・レポートの書き方は構成が異なるので、スウェーデン・欧米の書き方をしっかり習得する。
論文や課題図書の要点をさくさく要約する能力を訓練しておく。これはChatGPT のおかげで今は大分楽にできるものの、自分でやれば読書録にもなるのでおすすめ。
インターンと学業の両立、現地就職
難しい。スウェーデン語ネイティブならなんとかなるが…。
非ネイティブのインターン探しで成功する方法(合わせてスウェーデン語が堪能でないとそもそもアプライが難しいのか)
ジェンダー分野はスウェーデン人の文系女子にとても人気がある分野なので、競争が激しくスウェーデン語ができないと難しいです。
また、インターンもコネが大事。
気になるインターン先があるなら積極的にコンタクトするべし!
インターンしたい団体のホームページに載ってる連絡先やLinkedIn で直接メッセージを送り、インターンやボランティアを希望する旨を伝えたりするのもとてもいいですね。
ジェンダー分野の市民団体でのインターンだと、ボランティア経験も重視されます。(一般的にボランティア経験があると就活ではメリット。CVに絶対書いたほうがいい。)ボランティア先がそのままインターン先になるのはよくあります。
インターナショナル系なら英語でもインターン先はありますが限られているし競争が激しいので気になるインターン先があるなら積極的にコンタクトするべし!
現地就職について、その難易度(Job seeking visaの活用方法など)
難しい!
文系は難しい!スウェーデン語ができないと難易度はさらにあがります。
スウェーデン・ルンドでの生活について
コスト
学費
私はパーマネントビザ取得後に大学院へ進学したので学費は無料。
・1ヶ月のおおよその生活費
家賃3000クローナ 食費交際費2000クローナ その他交通費等1000クローナ
家賃は幸い格安なところを見つけたがストックホルムと同じようにルンドも家賃は高め。
スウェーデン人生徒と同じように奨学金3000クローナほどを受給、4000クローナを貸りたのでなんとかなりました。返済頑張ります。
スウェーデン語/英語の使用率
留学生が多い上にスウェーデン人は英語が得意なので生活は英語だけでも大丈夫。
スウェーデンがジェンダー平等だと感じるのはどんな時か
話している相手が男性だから、歳上だから、といって遠慮しなくてもいいのが快適です。
年齢や性別、バックグラウンド関係なく、個人として自分の考えを伝え、コミュニケーションすることが当たり前。
年齢による規範や性別によって求められる社会的なプレッシャーが日本に比べて圧倒的に低いです。
なので女の子がのびのび溌剌としている印象があります。
ジェンダー平等だけでなく人権や市民社会、民主主義について気軽に話せるし、問題意識を持ったら気軽に行動できる。市民社会へのアクセスの手軽さが魅力ですね。
スウェーデンがジェンダー平等だと感じないかのはどんな時か
まぁ住んでそろそろ8年なので不平等についても日々体験するし見聞きもします。
例えば
1 家庭内での性別役割分業
結局女性が家事育児をしています。
女性の方が賃金が低く、そうなると世帯年収を下げないために女性の方が育児休暇を多く取るし時短で働く選択をします。
2 性別職域分離が根強くある。
ケア分野や公務員は女性が多く、
民間企業の役員、IT、金融は男性が多い。これはそのまま女性と男性の賃金格差に反映されます。
スウェーデンでジェンダーを学ぶのをおすすめする?
日本での就職を考えているなら、スウェーデン進学はありだと思います。
スウェーデンでの就職は…、理系なら可能性はあります。文系は茨の道を覚悟しましょう。
一方で、英語がペラペラで将来国際機関をめざしているならスウェーデンでジェンダーを学ぶより、より国際的で多くの生徒が集まるイギリスやアメリカに進学したほうがいいと思います。人口が多い分、関連するインターンやバイトのチャンスも多いでしょう。
コースによっては1学期だけ海外大学へ留学するチャンスが提供されているので、そのときにぜひスウェーデンに来てください。ジェンダー平等ランキング5位、自由民主主義ランキング2位な社会を実際に体験するのは本当に価値があると思います。
ジェンダー先進国が実際どんな社会なのか、スウェーデン人や移民が実際どのようにこの社会を経験しているのか、今後どのような社会にしていきたいと考えているのかを現地の人との交流やアカデミアを通して知るのはとても良い経験かつフィールドワークになりますよ。
一定のジェンダー平等を達成した社会ってどんなものなのか。
こどもの権利や性的マイノリティの権利、女性の権利をきちんと話せる社会ってどんな風に作られてきてまた発展させようとしているのか。
拡大する格差と見えないところで深化する人種差別のある移民社会とは?
などなど、論文や本では拾いきれないスウェーデン社会の複雑性を学べます。
まだまだ課題が多いスウェーデン社会ではありますが、ジェンダー平等や人権、民主主義や社会参画に関しては日本が目標にできる点は多いと思います。
ですが、国際機関を目指すなら英語圏のほうが人口が多い分、就職も選べますし、国連の日本枠であるジュニアプログラムを目指すにも近道だなと感じます。
以上、大分正直にスウェーデン進学をおすすめするか書いてみました。私個人の意見ではありますが役に立てれば幸いです。
画像はすべてここから拝借しました
https://imagebank.sweden.se/
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