逆接のブランディング思考
今回はこの間の自己紹介で少し触れた、木製パドル製作について触れていこうかと思います
エスキモーが狩猟に使用し、800年かけて独自の進化を遂げたグリーンランドパドル。
それを国産材、みどり市で再現しようと取り掛かって早一年。かれこれ20本。
元々パドルにはアリュート系とグリーンランド系の2種類がジャンルとしてあって、明確な分類は諸説あり一年生の自分が安易に書くと火傷しそうな位深い歴史がある。
只、本を読んだり人に聞いたりで勉強をした所だと、
アリュート系が大海原などの長距離移動を前提に作られた、形としてはパドルのブレードとグリップ部が明らかにオフセットしていて皆が思い浮かべるthe パドル🚣って形状。
広いブレード面は前に進むイメージがし易く、実際グイグイと進む。グッと水を掴む為、浴を出して突っ込みすぎるとたまにひっくり返りそうになる。笑
対してグリーンランド系は、エスキモーが使用していた狩猟道具の一つ。
形はブレードからグリップ部までなだらかなカーブ。
風が強く寒冷な地域の為、空中のパドル部に風が当たった時の影響を受けづらくしたり、氷を割ったり獲物を叩いたり出来るように
”武器”として、このような進化を遂げていったらしい。
パドル全体がグリップでありブレードって感じで、漕いでる時に竹のようなしなやかな靱性を感じる。
800年以上かけて何故この形になっていったのか。行った事もない会った事もないエスキモー先輩を想像しながら、
どういう道のりを歩んできたのか、これからどっちに行きたいんだいと
歴史を紐解きながら一人夜な夜な作業するのがたまらなく楽しい
で、これについてたまに聞かれる事がある。それは
"どこから計算して作っていたの?"
という点。
ここみどり市で作ったら名前もそうだし(みどり市=ジャパニーズグリーンランド)
しかもここは林業のまち、木工は自分の専門分野、工房は草木湖の湖畔。
こんなにグリーンランドパドルを作るのに適した地域って他にあるんだろうか?って位ブランディングのロードマップが整っている。
でも、カヌーツアーと木工を生業にしている自分が
そんなに都合よくグリーンランドパドルに出会う事ってあるの?
狙って移住してきたの?と思われる至極自然な事。
でも言える。
最初から偶然です。
木工を始めたのはルアー作りが好きでパドルのパの字も無かったし
カヌーツアーをしたのも去年からで草木ダムが無かったら多分していなかった。
それらがある日、関連付いただけ。
逆接のブランディング思考。
それは、今置かれている状況を如何に正解にしてやるか。
と言う胆力だと思う。
多分、草木ダムって名前で無く例えば
"青木ダム"って名前だったとしても、自分はまるで運命だったかの様に青木=グリーンと関連付けてグリーンランドパドルを作っていたと思うし
それすら無くても、緑がいっぱいある町、そう言って売っていたんだろうと思う。
でも考えても見て下さい、人生なんてその繰り返しだ。
自分の持ってるスペック、置かれた環境、今ある逆境。
そんなの望んで選べる訳ない。
それらを如何にプラスに持っていってやろうかが人生を豊かにする方法だと思うんですよね。
今いる環境から逃げず、どんなに辛くても軸足に体重を乗せて闘うか。
それが大事なんだと思っています。
今後は資源の町という事を土台に、これらを現代のAIやNC技術で生産技術やデザインのバリエーションを可能な限り引き上げようと思う。
パドルという、人と自然の接点となる道具は
図らずも新たな解釈と価値を纏って、遠い日本へと繋がって参りました。
まだまだ自分のパドルの製作は始まったばかり。
今後の活動に是非是非ご期待下さい。