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シノイキスモス短編小説集

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#マラケシュ

短編小説|壁と広場

短編小説|壁と広場

 列車が街に近づくにつれて、車窓から見える風景の中に赤茶色の家々が増えていって、ついにはすべてが赤茶色になった。「これがマラケシュだよ」サミールがいった。ぼくはカサブランカで会ったトシさんが、マラケシュの街が赤茶色なのは、実は赤茶色の家以外建てちゃいけないって条例があるからだ、といっていたのを思い出していた。マラケシュの駅に到着すると、サミールは空腹だったので、ぼくたちは駅舎の2階にあるカフェでク

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