【体験談】帝王切開でも男児でもなく早産でもないのに、100分の1の確率を引き当てて新生児一過性多呼吸で入院した我が子の話
3年間の不妊治療を経て、2019年5月26日17時45分。
38w6dの、3524gの女の子を普通分娩で出産した。
妊娠中はつわりもなく、なんとか仕事と妊娠生活を両立させて臨月を迎えた。
その頃は妊娠性掻痒で睡眠不足だった気もするが、まぁ妊婦としての生活は一般的か、楽な方だったろうと思う。
子どもは、7w4dまでエコーで確認できなかったことで、2度目の流産を覚悟したこともあった。
ただしエコー写真で確認できた日以降は順調で、なんて親孝行な娘なんだと思っていた。
そんなこんなで、出産日前日となる2019年5月25日の夜8時頃。
なんか、少しお腹が痛い気がする…。
下痢かな。
うーーーむ、妊娠性掻痒による痒みと痛みで寝れない…
そして5月26日の真夜中2時。
さすがに継続的な腹痛が気になり、「陣痛かも?」アプリを起動。
5分おきの痛みが10回。
さすがにこれは…陣痛と言わざるをえない。
3時頃に旦那さんを叩き起こし、病院へ。
その15時間後、普通分娩にて出産。
(この15時間についてはまたいずれ。)
おぎゃあと赤ちゃんの声が聞こえたと思ったら、私のお腹の上に乗っけられ、先生による写真撮影。
その後、赤ちゃんは体温やら酸素濃度?などを測る台の上に置かれた。
和やかなムードの中で、助産師さんから、
「1時間程休憩したら入院する部屋に移動するよ」と言われた。
(やれやれ…終わった終わった。
あ〜終わって良かった〜〜〜)
と達成感に浸りつつ、旦那さんと喋りながら休憩。
1時間経過するあたりで、なにやら助産師さんが小児科の先生を呼びに行った。
「あのね、普通1時間経つと赤ちゃんの呼吸が安定するの。
ちょっとね、それが安定しないから、別の部屋に移動させるね。
うちの病院、この下の階にNICUがあるからこのまま抱っこして連れて行くね」
確か、おおむねこんなような話をされたと思う。
(あれ?出産は順調だったんじゃないの?)
(赤ちゃん泣いてたし、大丈夫じゃなかったの?)
抱っこも、母乳もあげられないままに赤ちゃんは別の部屋に連れて行かれた。
この時は頭にハテナがありつつも、出産後で楽観的な考えだったので、(また明日には母乳あげたり、オムツ変えたりできるのかな?)と思いつつ、夕飯を食べたと思う。
その後、私と旦那さんは助産師さんに連れられ、下の階のNICUに行った。
命の危険を知らせるけたたましいアラーム。
小さい赤ちゃん達がチューブや呼吸器に繋がれ、保育器の中で寝ている。
そして、さっきお腹の上に乗せられた我が子もそこにいた。
鼻にチューブを入れられ、脈拍を測るために足にテープが貼られている。
ものすごく、痛々しい状態だった。
小児科の先生が来て、赤ちゃんの状態を教えてくれた。
「まだ確定的なことは言えません。
肺に羊水が残ってしまっている、新生児一過性多呼吸の可能性があります。
もしそうなら、肺が水を吸収してくれるのを待って、呼吸数が安定すればオッケーです」
記憶は曖昧だが、この時点ではこのぐらいの説明だったと思う。
正直、この日の説明は、先生の「オッケーです(元気よくサムズアップ)」の印象が大きすぎた。
(なんかよくわからないけど、命に別状はないのかな?
(NICU、なんだかもう一度入るのが怖いな…)
そう思いながら、2019年5月26日を終えた。
次の日、母乳の搾乳をすることになった。
飲んでくれる赤ちゃんはいないので、スポイトのような注射器で取った。
全然出ない。
それでも助産師さんは、
「出るだけすごいですよ」
と褒めてくれた。
特にやることがないので、搾乳の時間以外はベッドで横になり、スマホをいじっていた。
調べるのはもちろん「新生児一過性多呼吸」だ。
原因、命に関わるのか、障害は残らないのか…ひたすら検索し続けた。
調べれば調べるほど、不安になっていった。
おそらく、命に別状はなさそうだ。
障害も、残るケースは少なそう。
でも、新生児一過性多呼吸は帝王切開や男児、早産で多いと書いてある。
100回のお産で1回程度起こるって、それをなぜうちの子どもが引いてしまったの?
もしかして、何か別の病気があって、呼吸が安定していない…?
それとも、私のお産の仕方が良くなかった…?
そうこうしている間に、NICUの面会時間になった。
NICUは面会時間が決められているので、気軽に子どもを見に行けないのだ。
自分の子どもに会うのに時間が決められていることに、なんとも言えない気持ちになる。
相変わらず、命の危険を知らせるアラームが常に鳴り続けるNICU。
看護師さんに声をかけ、赤ちゃんの前に座る。
赤ちゃんは寝ているようだったので、ぼんやり見ていた。
すると看護師さんに、
「保育器の中に手を入れて、『ママ来たよ』って、撫でてあげてください」と言われた。
寝ているのに起こしたら申し訳ないな、と思いつつ、そっと触れてみた。
温度が高めに設定されている保育器の空気より、さらに暖かい体温があった。
赤ちゃん、生きてるなぁ。
抱っこもできず、母乳もミルクもあげられない上に写真撮影もできない。
当然、他の人がやっているお風呂の練習もできない。
その日は「状態は昨日より悪くなっていないので、他にどこか悪いところがあって、呼吸が安定しないということはなさそうです。
ただ、もうちょっと様子見ですね」という先生の話を聞いて自分の部屋に戻った。
そして、3時間に一回の搾乳をこなした。
当然のようにほとんど出ない。
母乳は、ホルモンの関係で、赤ちゃんの顔を見ながらあげると出やすい、スマホを見ながらあげると出にくいと助産師さんが言っていた。
でも赤ちゃんは今ここにいないんだから…。
スマホで、出産したときの写真を見ながら搾乳した。
助産師さんは、「今の赤ちゃんの胃はビー玉くらいの大きさですから。そんなに出なくても大丈夫ですよ」と言ってくれた。
搾乳した初乳は冷凍して、NICUの看護師さんが赤ちゃんにあげてくれるらしい。
出産前は、ある程度は母乳育児で、プラスしてミルクをあげられたらなと思っていた。
でもこの時点で、なんとなく母乳の量は増えない気がしていた。
出産からすぐに母乳をあげられないことが、母乳の量の減少に繋がりそうだと思ったからだ。
(実際、その後頻回授乳をしたがミルクとの混合になった。
少し落ち込んだが、卒乳が楽だったので結果オーライ。)
夜に旦那さんが面会に来てくれて、「現状は悪くなってないって。でもまだ様子見なんだってさ。」と伝えた。
旦那さんは、NICUの面会時間には間に合わないし、出産日にも赤ちゃんを抱っこできていない。
私もあまり赤ちゃんと触れ合っていないが、旦那さんは私以上に赤ちゃんを触っていないのだ。
なんだか、旦那さんに対して申し訳なさがあった。
(恐らく)出生時一過性多呼吸は私のせいではないものの、普通の人と同じ体験をさせてあげられないことに罪悪感を持った。
内心に葛藤があろうと、3時間に1回の搾乳やらねばならない。
夜、真夜中、朝方に搾乳して、出産から3日目を迎えた。
何度搾乳しても母乳は増えないし、
赤ちゃんの容体は変わらない。
母乳もミルクもあげられないし、抱っこもできない。
搾乳して、ご飯食べて、ネットサーフィンで新生児一過性多呼吸を調べる。
NICU行って、赤ちゃんを見るだけ見て、搾乳して、ご飯食べる。
また搾乳。
搾乳のとき、助産師さんがスポイトではなく、牛乳瓶くらいの大きさのビンを持ってきた。
底がギリギリ見えなくなるくらいの量しか出なくて、惨めな気分になった。
真夜中に1人で搾乳して。
全然母乳も取れなくて。
なんのためにいるんだろう。
そう思いながら、ほぼ空の牛乳瓶の蓋に名前を書いて助産師さんに渡した。
次の日。
産婦人科の先生の回診が予定されていた。
その前に看護師さんがやってきて、体温を測ったり、どこか痛いところはないか聞きに来てくれた。
そして看護師さんは、最後にこう言った。
「赤ちゃん見て、どうでした?」
それを聞いたとき、私はめちゃくちゃに感情が落ち込むのを感じた。
普通の精神状態なら絶対ありえないことだ。
看護師さんだって、「赤ちゃん見てどうでした?」がまさかそこまで地雷ワードだとは思わないだろう。
普通なら、「可愛かったです〜」なんて返事をして、「そうでしょうそうでしょう。みんなそう言うんですよアッハッハ」みたいな会話が繰り広げられるはずだ。
だが、その時の私の精神状態は最悪であった。
(「どうでした」だって?
うちの赤ちゃんがNICUにいるのを知らないのか?
いやさっき、「赤ちゃんはNICUにいるのでなかなか会えないです」って話したよな?
鼻からチューブ出てて、母乳もミルクもあげられず、なんなら抱っこも一回もしていない状態で『どうでした?』だと?
「可哀想だと思いました」って言ってもいいのか?!)
一気に今までの感情が溢れ出て、看護師さんの前で泣いてしまった。
子どもがNICUにいて、ろくに触れ合っていないこと。
本当に出生時一過性多呼吸は障害が残らないのか、呼吸の不安定さは他の要因によるものでないのかわからないこと。
自分は明後日退院なのに、一度もミルクや風呂に入れたこともなく退院して、いきなり赤ちゃんの世話ができるか不安なこと。
実家の両親や旦那側の両親も近くにいないので、一人で世話ができるのか心配であること。
看護師さんに心情を説明したところ、産婦人科の先生が飛んできて、カウンセリングを勧められた。
カウンセリングしても、上記のことは結局解決しないと思ったため、その場は断った。(今思えばしても良かったような気もするが)
先生との会話の後、静岡市の助産師サポートのことを思い出した。
急いで近所の助産院に、子どもが退院したら予約させてもらう旨を伝えて、ひとまず感情が落ち着いた。
(静岡市のサポートに感謝。)
NICUの面会時間になったので行ったところ、小児科の先生がいた。
赤ちゃんは、保育器の中でかなり激しく泣いている。
「呼吸が多少安定してきました。やはり肺に羊水が入っていたことによる出生時一過性多呼吸でしょう。
まだ退院の日付は確定しませんが、今のところオッケーな感じです(大きくサムズアップ)
今まではミルクの量を少なめにしていましたが、ぼちぼち量を多くしても良さそうです。
今、お腹が空いて泣いているんですよ」
私はそれを聞いて、ちょっとビックリした。
「こんなに小さくて、産まれたばっかりの赤ちゃんなのに、空腹というものがわかるんですね。
それで、空腹を伝えるために泣くことが出来るんですね」
小児科の先生はうなづいて、「ミルクをあげてみますか」と言ってくれた。
看護師さんに教わりつつ、ミルクを飲ませてみる。
(おお、飲んでる…。
ていうか、めちゃ一瞬で飲み終わった…!!
生命力強いな!!!
こりゃ、そう簡単に死にそうにないわ!)
結局のところ。
うちの赤ちゃんは、出生時一過性多呼吸(とその後出た黄疸)により退院が普通より10日が伸びた。
その後、マススクリーニングで60分の1の確率という再検査になりめちゃくちゃ心配したが、結局それも問題なしとなった。
その赤ちゃんは現在1歳8ヶ月となり、元気に過ごしている。
食欲は保育園の同じクラスの中でトップクラスだそうだ。
運動神経も言語の発達も、まったく問題なしだと保育園の先生から言ってもらえた。
保育園に入ったばかりの半年はたくさん風邪をひいていたが、最近はあまり体調を崩さなくなった。
産まれたばかりの3ヶ月間はとにかく心配ばかりしていたが、今となっては懐かしささえ感じる。
これからも元気で、食欲モリモリの女の子に育って欲しいと母は願うばかりだ。