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日記│追憶のたにやんラーメン

昔に、大阪は東淀川区下新庄に住んでいた時があった。
その頃、バイト三昧の日々で学費を稼いでいた。
ご飯代を一食でも浮かせるために飲食店でバイトをするようにしていて、賄いが私の生命を繋いでいたと言っても過言ではなかった。

その割には酒ばっかり飲んで、煙草をバカスカ吸っていたので、どの口がゆうとるんじゃと言われそうだが、学費の為だけには働けぬのだ。

そんな堕落した毎日の中で唯一無二のラーメン屋さんがあった。

上新庄駅の駅に向かう道すがらにある”たにやんラーメン”にバイトが終わると毎日行っていた。

毎日って週に4日とか5日ぐらいでしょ?と思うかもしれないが、本当に週7日は夜ご飯にラーメンを食べていたのだ。

かなりの偏食で、毎日同じものを食べても苦にはならないタイプなのだ。
一時、カップラーメンのもやしを3か月ぐらい毎日夜ご飯に食べていたら、友達に気持ち悪がられたことがある。ただ学費貧乏で88円のラーメンを食べ続けただけなのに。

その私のたにやんラーメンは、何の変哲もないただの豚骨ラーメンだった気がするが、毎日食べても飽きない素晴らしいラーメンなのだ。そして、いつも深夜0時頃に行くと替え玉が2杯までおかわり自由だった。

合計3杯のラーメンが1杯のお金で食べれるのだ。
当時、今にも増してめちゃくちゃ大食いだった私には、丁度よくお腹いっぱいになれたのだ。

そして、昼に起きるとやっぱりたにやんラーメンが食べたくなるのだ。無性に食べたくなる。

そんなある日、当時付き合っていた彼氏と車で旅行することになり、ペーパードライバーの彼が運転することもあり「もしかしたら死ぬかもしれないが、最後に食いたいものはないか?」と聞かれた。

私は迷わず「そんなんたにやんラーメンに決まってるやろ」と昨日も一緒に食べた、たにやんラーメンを食べて旅行に出かけたこともあった。

明日地球が滅亡するなら、たにやんラーメンを食べたいと豪語していた。




実家にもどり、上新庄にも縁がなくなり、いつのまにか静岡へ移住してしまった。

食道楽に洗脳した夫から「最後の晩餐は何食べたい?」としょうもない話になった時に、毎度私は「たにやんラーメンやな」と言ってたのを聞いた夫がネットの海から検索すると「たにやんラーメンなくなってんで!」と言われてもう食べれなくなったかと思うと涙が出るほど悲しかった。

思い出しては「私のたにやんラーメンを探している」と夫に話していた。

味とかはもう忘れてしまったし、飛び切り美味しいラーメンではなかったが、毎日食べても飽きない、それでいて毎日食べたくなるようなラーメンを探していた。

このさい、味とかではないのだ。毎日食べても食べ飽きないラーメンを探していたのだ。

静岡に移住してきて十年以上経ってやっと見つけることが出来たのだ。

夫が同窓会で行った中華屋さんが美味しかったと言っていた。
それから、夫の友達があの店には天津麺があると教えてくれた。
そして、私はその中華屋さんが大好きでたまらなくなった。

行く度に色んな料理を食べてみたのだが、どれも美味しくて、毎日行きたくなるほどの病みつになるほどだった。

決めては、チャーハンだった。
チャーハンという名の、焼き飯だった。

昔はよく焼き飯を食べたが、いつからかチャーハンになってしまったが、あれは何なんだろうか?
デザートが急にドルチェに変わったのと同じ話なのか?
上着がアウターへ進化し、ズボンがボトムスへ昇華したのと同じなのか?
最近、服の名前が変わりすぎて、ZOZOTOWNで探すときに困るのは私だけではないはず!!

いや、チャーハンも美味しいが、天津麺も美味しい。
結局どれも美味しくて、食べ飽きないのだ。

本当に毎日行こうとしていた私を夫が「太るからやめなさい!」と諫めてくれたお陰で、以前のような週7日通うような暴挙にでることはないのだ。


が、夫に内緒で結構通っていることは間違いない。
夫は「最近、嫁さんがあそこの中華屋さんにめちゃくちゃ行っていて、もう5回ぐらい行ってんじゃないかな」と友達と話をしていた時に、心の中では「あんたは知らんやろけど、もう10回以上は行ってんねん!」と胸を張って呟いていた。

本当のことを言うと禁止令を出されそうだから、言わないけどさ。




そして、今日も夫の帰りが遅いことをいいことに、その中華屋さんに行ってきた。回鍋肉を食べた。旨かった。何がそんなに美味しいの?と聞かれても答えることが出来ないというのが、私の中のたにやんラーメンの条件である。

全ての条件を満たすことが出来たのは、この中華屋さんだけだった。
私の中のたにやんラーメンの条件を教えてしんぜよう。

まずは、家が近いことだ。毎日通うためにも歩いて行ける距離というのが、必要なのだ。

次に、毎日食べても飽きない旨さ。そして、旨いを表現しずらい旨さ。
目玉が飛び出るほどの旨さだと、絶対に飽きたり、味が変わった時に落胆する恐れがあるので、程々の旨さが必要なのだ。

最後は、安いことだ。自分のお財布に優しい値段だといい。ちょっと背伸びをして、いいご飯を!とかだと、金を出せば旨い店なんてごまんとある。
そんな店ではなく、自分にとって毎日食べれるなっていうお店でないとだめなのだ。

そして私は追憶にあった、たにやんラーメンを復活することが出来た。

ありがとう!たにやんラーメン!
ご飯を食べる感動を!ありがとう!

そして、あなたにもたにやんラーメンが見つかりますように。

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