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【映画感想】エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスを観た【ネタバレあり】

 這い寄る混沌、鯖の味噌煮です。


あらすじ

 コインランドリーを経営するエヴリンは、様々な問題を抱えながらも確定申告のために税務署に向かう。その道中で夫が“別の宇宙の夫”に入れ替わる。「マルチバースに危機が迫っている。救えるのは君だけだ」と告げられたエヴリンはカンフーの達人である“別宇宙の自分”の力でカオスに立ち向かうーー

評価と感想

 星6🌟🌟🌟🌟🌟🌟です。限界突破です。

 公開するよりしばらく前から、マルチバースカンフー映画が作られているらしいという情報は得ていて、めちゃくちゃ楽しみに待っていました。そして公開されて映画館に観に行ったのですが……度肝を抜かれました。まだ映画というのはこんなにも可能性に溢れたものだったんだと感動していました。それはもう、マスクがビショビショになるくらいには泣いてました。それほどまでにカオスを一纏めにした奇跡というものがそこにはあったと思います。

カンフー!カンフー!カンフー!

 いやこれはカンフーなのか……その説明をする前に今のマルチバースの状況を理解する必要がある。少し長くなるぞ(サム八)。

 人生とは選択の連続であります。例えば二股に分かれた道のどちらを進むかだったり、パンかおにぎりどっちを買うかだったり、猫か犬かどっちを飼うかだったりーーその一つ一つの選択肢の先には一つの宇宙が広がっているのです。分かれ道を右に進んだAの宇宙と、左に進んだBの宇宙があるのです。それは似ているようで左右を選んだ分違う宇宙なのです。選択肢の先にまた選択肢、過去未来へと目を向ければ無限の数の宇宙が広がっているのです。これが今作のマルチバースです。

 今回の主人公・エヴリンは、こうした選択肢の先の宇宙にいる自分の技能を使うことができます。マルチバースにはカンフーの達人のエヴリン、コックのエヴリン、看板回しのエヴリンなどがいて、それぞれのバトルスタイルを習得することができるのです。それが今作の戦闘に彩りを与えてくれていて、飽きずに魅せてくれた要因の一つですねー。王道カンフーバトルから、ナイフを使ったバトル、盾を使った某キャプテンばりの変則型バトルなど次はどんなものを魅せてくれるのだろうかとワクワクが止まりませんでした。

 カンフーの魅力を再確認させられましたねー。

虚無主義と愛

 現代って、SNSの発達で幼いうちから世の中の色々なことを知ることができると思うんですよ。自分の末路がどんなものなのかも粗方知り得てしまいます。そしたら多分、全部虚しくなって何もかもどうでもよくなる人って、最悪の場合死にたくなる人だっていると思うんですよ。プチ全知感が引き起こす虚無主義ですね。

 マルチバースを見渡すことができる今作のヴィランのジョブ・トゥパキは全知になってしまったが故に人生というものの救いのなさに気がつき、自身の消滅を願います。ブラックホールにも似たベーグルの中へと吸い込まれることを望むのです。

 そんなジョブを救うのはーー愛でした。ものすごく単純な話、ジョブの母親であるエヴリンからの愛だったんです。ある宇宙では石のぶつかり、ある宇宙では惑星の衝突でもあった母からのハグでジョブは生きることを選ぶのでした。

 今の時代、呪いのように扱われることも多い親子の愛というものを『答え』として持ってきてくれたことに僕は拍手を送りたいと思いました。例え誰かの答えでなかったとしても、この『答え』に泣いてくれる人はいるーーそんなまっすぐなメッセージに僕は心を打たれたのです。

最後に

 長々と語ってはきたけどもこれだけは言いたいです。

 これはマルチバースカンフー映画でも親子愛溢れるドラマでもなくーー『確定申告映画』なのだと、声を大にして言いたいです。

 色々とっ散らかった自分というものを見直して整理したーー言ってしまえばそんなちっぽけな話なのですが、僕はそんな大きな遠回りを経て最短ルートを行く物語を拍手して迎えていきたいと思いました。

 そんな感じの映画でした。

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