2025年のSaaS動向・事業戦略を掴める記事 | AI・コンパウンド・エクスパンション・エンタープライズ・バーティカル
SaaSマーケットの売上高マルチプルは停滞し続け、「SaaS is Dead」という話議論も展開されていますが、SaaS業界にも希望の光となる動向・戦略が出てきています。
具体的には、以下の4つが2025年のSaaSトレンドになり得ます。
AI x SaaS
コンパウンド・エクスパンション
エンタープライズへの参入
バーティカルSaaS
今回は2025年に向けて、上の4つのSaaSトレンドを把握し、事業戦略を検討する上で役立つ記事をご紹介します。
1. AI x SaaS
LayerX 福島さんのnoteで、AI活用によって営業組織の生産性をどのように向上させるかといった点について、かなり具体的な例とともにまとめられています。
営業組織における4つのAI活用テーマ
周辺業務の自動化: LLMを活用し、経費精算、顧客調査などの自動化を実現。営業担当者は本来の営業活動に集中できる。
アサインの精緻化: 行動情報や基本情報からAIが顧客の購入確度を予測。営業担当者のスキルとマッチングさせることで、最適なリード・商談の割り当てを実現。クロスセル・アップセルもデータに基づきAIが提案。
評価の精緻化: 獲得商談数ではなく、AIが予測する期待MRRをベースとした評価システムによって、営業担当者の成果を公平に評価。
商談の再現性: 商談動画をAIが分析し、改善点を提示。営業担当者は自己学習を通じて、継続的にスキルアップできる。
もう一つ、AI x SaaSをテーマとしたnote。
2025年以降、AI Agent(AIが自律的にタスクを計画・実行するシステム)が本格的に立ち上がり、この波に乗れないSaaS企業は淘汰されていくだろうとのこと。
AI Agent時代に、なぜSaaSなのか?
現代の業務構造は何かしらのシステム周辺で行われおり、この構造自体は今後も不変(人が行うか、AI Agentが行うかの違いが今後出てくる)。
生成AIで80%くらいまでの品質のものは速く作れるが、ここから業務で自然に使える品質にするためには他の要素が必要。
SaaSは業務やデータの標準化が一定なされていて、AI Agentが使うデータや仕組みが揃っているため、品質を高めやすい。
2. コンパウンド・エクスパンション
SmartHR okadaさんのデータ活用によるマルチプロダクト戦略とエクスパンションモデルの推進について書かれたnote。
エクスパンション推進における重要要素と、データに基づいた組織横断の具体的な取り組みが紹介されています。
エクスパンション戦略の重要性
マルチプロダクト化とエクスパンションにより、顧客はデータの一元管理、UIの統一による効率化、リアルタイムな経営判断が可能になる。
サービス提供者側は、新規顧客獲得よりも低コストで収益を拡大でき、顧客定着率向上にも繋がる。
エクスパンション機会創出のモデル
ロイヤルティ: 顧客のアウトカム達成率を高めることで、プロダクト・ブランドへのロイヤルティを高める。ヘルススコア、プロダクト活用度などをKPIとして活用。
追加プロダクトニーズ: 顧客の追加プロダクト認知度を高める施策が重要。コンテンツやタッチポイントごとに認知度を段階的に評価することで、効果的な施策立案に繋げられる。
SmartHRのデータ活用事例
マルチプロダクト化に対応したエクスパンションKPIの再定義と定量検証
Product Led Growthを目指したプロダクト内タッチポイント体験向上
ユーザーコミュニティのグロースによる事例・コンテンツ数の増加がエクスパンション促進になる。
プロダクト活用度に基づくカスタマーセールスの提案高度化
マーケティングとCSMの連携強化によるプロダクト活用促進
3. エンタープライズへの参入
ALL STAR SAAS FUNDによるVeeva Japan元代表の岡村さんのインタビュー記事。エンタープライズSaaSのGTM戦略における課題と解決策を解説。
特にプロフェッショナルサービスの重要性と、PoCの進め方における注意点が参考になります。
エンタープライズSaaSの3つの課題
デマンドジェネレーション: エンタープライズ企業への営業は、個別のテリトリープランとアカウントプランに基づいた戦略的なアプローチが重要。ファーストペンギンになる会社への導入を進め、成功事例や導入事例による波及効果でトップティアを獲得していく。
プロダクト開発: 顧客のセキュリティ要件への対応と機能提案のバランス。マルチテナント型のSaaSのメリットを訴求しつつ、業界のベストプラクティスを反映した製品開発が必要。
プロフェッショナルサービス: カスタマーサクセスに加え、プロフェッショナルサービスによる顧客の成功支援が重要。プロフェッショナルサービスをプロフィットセンターと位置づけ、製品と紐づけた提供が差別化に繋がる。無償PoCは、営業担当者の逃げ道になりやすく、リソースの無駄遣いに繋がる可能性があるため、避けるべき。
4. バーティカルSaaS
Finatextホールディングス itoさんによるバーティカルSaaSの進化と、その先にある「グロースバイアウト」と呼ばれる新たなビジネスモデルについて解説note。
ホリゾンタルSaaSの成熟から生まれたバーティカルSaaSの進化の歴史、そしてテック主導のロールアップ戦略がSaaS業界の未来をどう変えるのかを紹介しています。
バーティカルSaaSの進化
特定市場への特化: ホリゾンタルSaaSの普及により中小企業のIT投資額が増加。ニッチ市場でもビジネスが成立する土壌が生まれ、特定業界に特化したバーティカルSaaSが登場。
アカウント課金の壁を超える: 顧客数の限界を突破するため、Shopifyなどの組込型金融(Embedded Finance)による決済手数料収入を取り入れるモデルが登場。
成長支援サービスのバンドリング: 開業支援、需要集約、規模の経済の実現など、SaaS単体ではなく周辺サービスをバンドル提供することで顧客の成長を支援しTAM拡大を図る。
グロースバイアウト戦略:バーティカルSaaS × ロールアップ戦略
特定業界に特化したSaaSを開発し、そのSaaSを導入・活用できる企業を買収することで成長を加速させるビジネスモデル。ソフトウェア単体での高収益化が難しくなる中で、グロースバイアウトは有望なビジネスモデル。
PEファンドとの違いは、プロダクト先行、持ち切り前提、小型買収から開始、といった点。
Metropolis(駐車場)、Splash(プール清掃)などが代表例。