フランス政府のブランド計画
フランス政府のあたらしいブランド計画が公開された(日時ははっきりしないが最近)。従来のものを大幅に整理し、あらゆるシチュエーションで使えるように再定義されている。もちろんモバイルを含めた各媒体での使用に配慮されていて、たとえばプレゼン資料やEメールのフォーマットも定義されている。書体や配色などの「グラフィック編」、自治体や省庁ごとのSNSのアカウント命名規則やハッシュタグの用法などを定義した「SNS編」、言葉づかいなどの「エディトリアル編」の3部構成となっており、総合スタイルガイドといえる。
背景として、行政の活動範囲の拡大と複雑化によって、市民が公的な広報や活動を発見しづらいというインサイトがあったようだ。基本的な方針は以下の3つ。
・マリアンヌやトリコロールなどのグラフィック資産を活用し、拡張すること
・今日的に必要とされるあらゆるコミュニケーションをカバーすること
・市民の理解を容易にすること
興味深いところをいくつか抜粋して、紹介してみたい。
ブランドブロック
上図、左上のいわゆるロゴの部分。マリアンヌと政府表記と標語のセットを「ブランドブロック(Le bloc-marque)」と呼ぶ。あらゆるコミュニケーションで使用し、ブランドの根幹となる。
(参考)従来の「ブランドブロック」
まだ従来のブランドブロックがWeb上には散見されるので、参考のためにスクリーンショットを載せておく。
(上)在日フランス大使館のブランドブロック(拡大)
(上)2020年初頭のフランス政府サイト(インターネットアーカイブから)
書体
カスタム書体「Marianne」が用意されている。原則として行政のあらゆるケースでの使用が求められる(オフィスドキュメントではArialでの代用が可)。特徴は以下。
・ローマ大文字と、Garamondの小文字のプロポーションに基づいている
・幾何学書体だが、部分的に伝統的字形を強調している(Qのテイル、2階建のaやg)
Marianneの補助としてSpectralの使用が指示される。あくまでMarianneの補助として部分的にのみ使用し、単独での使用は禁止されている。
SpectralはGoogle Fontsからの委託でフランスのProduction Typeが開発し、もちろんGoogle DocsやGoogle Fontsで使用できる上、SIL Open Font Licenseで提供されている。フランスのElzevirスタイルを元にした伝統的スタイルだが、画面での読みやすさを重視したスクリーンファースト書体で、多言語をカバーする(146言語)。SpectralについてはGoogle Designのこの記事がくわしい。
Granjonのイタリックを元に書き起こされた標語、Liberté, Égalié, Fraternité(自由、平等、友愛)。「らしい」雰囲気。必ずブランドブロックと共に使用される。モバイル等への配慮のため、従来の一行から、三行組へと変更された。複数の自治体が併記される場合、繰り返し全てのブランドブロックに付記される。
ブランドブロックの特別なケース
ブランドブロックは常に以下の順に表示される。必ず左揃え、縦並び。
マリアンヌ
行政タイトル
標語
行政関連団体の認知が低い場合、団体のロゴとフランス政府ロゴを併記する。ロゴがない場合は、Mariane書体で団体名を併記する。
喪に服する場合の特別な配色が定義されている。
アプリケーション
レターヘッド。
プレゼン資料(いろんなフォーマットがあるがここではA4)
ステージ登壇。他に「kakemono」などもある。
SNSポストは、トリコロール枠をつける。
SNSガイド
・略語を使わない。
・短く、シンプル、正確に。
・絵文字は1ポストあたり3つまで。表情のあるものは使わない。肌の色は黄(絵文字の黄色は人種を表さないための「現実的でない」色なので)。
・「Je(私は)」ではなく「Nous(我々は)」
・ハッシュタグは文中で使用しない。文末にまとめる。
・誤った情報を流さないために、情報源を確かめ、情報源を明示する。「いいね」「シェア」は行政の指定アカウントに対してのみ使用する。
エディトリアルガイド
・文頭でコンテクスト、目的を明確にする。
・1アイデア・1パラグラフとし、構造化する。
・市民が関連情報検索しやすいようキーワードに留意する
・発言者を明確にする。
・ターゲットを明確にする。全市民か、特定の集団か。
・受動態を使わない。
・「原則として」「おそらく」「しばしば」などの曖昧な表現を避ける。
・ハイフネーションを避ける。
・補助情報を脚注等で付与し、読者のもつ知識の差に対応する。
・タイトルに十分な情報を与える。
・前置詞がいっぱい出てくる文にしない。
・市民への呼びかけは「vous(あなた)」を使う。
・ジェンダーに基づく表現を避ける(例:chef de famille)。男性形女性形が併記される場合はアルファベット順にする(例:l’égalité femmes-hommes)。
・冗長な表現を避ける。(例:要望を送付する→要望する)
画像は大使館をのぞき、フランス政府サイトからの抜粋。https://www.gouvernement.fr/
こんにちは。読んでいただいてありがとうございます。